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第十三部 二人目の 第一章

「ふざけるなっ! なんで、そんな武器の強さ対決のようなものをしないといけない! 」


「いやいや、考えてくださいよ。あの子は女の子でまだ16歳ですし」


「いや、江戸時代なら子供がいる年だぞ? 」


「それじゃあ、あの子が戦いが出来ないのです。まだ子供だと親が言うので」


「あれは戦士だ! 」


 土蜘蛛の住む集落の近くの山の大きな洞穴に潜んでいた大ムカデを見つけて、雪ネズミが必死に説得していた。


 背後には無言の老人がいる。


 黙ったままだが、異様な迫力だ。


 対話には参加していないが、それが大ムカデを抑えていた。


「<(わざわい)>と互角に戦ったそうですからね」


「おおおっ。あの<(わざわい)>とかっ! さもありなん! 」


 それで大ムカデが感心していた。


 それほど暗殺者として<凶(わざわい>の力量は特別だった。


「ですが、まだ未成年と言う事で親の許可とかいる年なのですよ」


「16歳でか? 」


「時代が違いますよ。今は18歳までは大人では無いです」


「後2年では無いか」


「その2年が大きいのです。少し前は20歳が大人ですから。そう考えれば、まだ4年よりは減っているわけですから」


「うううむ。納得がいかぬな」


「尋常の勝負を受けようとしている、娘の心意気に応じていただけませんか? 」


 雪ネズミが殺し文句を話す。


 尋常の勝負に拘る戦士タイプには心意気とか効く言葉である。


「少し考えたい」


「いえ、ズバリ言いますが、公安の天狗さんも言う通り、今は妖が大っぴらに戦える時代ではありません。ですから、T市のK島の地下闘技場しか勝負する場所はありません。なので、ここは、まずは最初の戦いとして互いの武器のみを攻撃し破壊されたら負けとする前哨戦と行きましょう。そうすれば2年後の成年時に尋常の戦いも出来ます。いかがでしょうか? 互いに命を懸けて戦うのです。あっさり一度の戦いで終わらすのは……興行主の私としても残念です。率直に言いますが……」


「興行主だと? 」


 大ムカデが不機嫌な声を上げた。


「まあ、その辺で手を打ってあげてくれ。そうでないと成立せん。わしもあんたの戦いを見るのは楽しみなんでな」


 そう老人が笑う。


「むう、元、情報局の妖特科のお主に、そう言われるとな」


 などと大ムカデが唸る。


 第二次世界大戦時に情報局の妖特科にいた老人であった。


 まれに妖と戦える人間の存在は長生きする。


 それで110歳を超えた老人なのだ。


 だが、老人は矍鑠として、とてもそんな年に見えなかった。


「私はこの仕事に命を懸けています。良いですか? 貴方は戦士、そして私は興行主です。世界は違えど、これは尋常の勝負なのです。ですから、2年後に本当の尋常の勝負をするとして、今、ここでは互いの武器を破壊し合う正面からの戦い……それで良いではありませんか」


 雪ネズミがぐいと押した。


 ここを勝負どころと見たのだろう。


「そうか……おぬしも尋常の勝負を言うか……」


「命がけでここに来てますれば……」


「なるほどのぅ。確かに三代目が亡くなり果し合いをしても逃げるものばかり……。それを言えば16歳で女子であるのに、わしと尋常の勝負をしようと親に説得をするか……ふうむ……良かろう。では18歳になれば尋常の勝負をすると言う事で良いのだな」


「勿論でございます」


 そう雪ネズミが喜んで答えた。


「良かろう。で何時に最初の尋常の勝負は出来る? 」


「そうですな。12日後の土曜日はいかがですか? 」


「遅い! 」


「いえいえ、準備もございますれば……長い年月生きられた貴方なら、この程度の日数など……」


「ならば今週の土曜日にせよ。それなら納得してやろう」


 そう大ムカデがその巨大な顎を閃かした。


 雪ネズミはそれ以上説得は無理だと判断して、それで受けた。


 後、5日しか無いが、急いでやれば闘技場の全席は埋まるとさっと計算したのだ。


「では、いろいろと準備がありますれば! 」


 そう言うと雪ネズミは急いで、護衛で頼んだ老人とともにその場を去った。


 ただ、老人の方は帰る途中で洞窟の外の森を訝し気に何度も見ていた。


 何かを警戒するかのように……。


 そうして、その洞窟は静かになった。


 だが、大ムカデは殺気を迸らせた。


「で、誰だ? 」


 洞窟から半身を出して、外の森を威圧した。


 いつもの如く、彼の必殺の戦いの為の構えである、半身を洞窟に残して、いつでも洞窟に引きずり込めるようにしているのだ。


「ふふふ、久しぶりじゃの。日清戦争以来か? 」


 などと闇に紛れて声がする。


「……死んだと聞いたのだがな」


「何を今更、わしは不死よ」


「身体を変えたか……」


 そうしたら、森の中から笑いのような波動を感じた。


「なんじゃ、何の用だ? 」


「どうも戦う相手を間違えているようだな」


「ふん! あの女の格好をした奴か? 」


「そうじゃ」


「自分で試せばよかろう……」


「わしはあまり戦闘は得意でないからの……」


「よく言うわ。あれだけ大量にあちこちで殺しておいて」


「ふほほほ、まあ、それが戦いと言うものじゃろう。どうじゃ、本当の戦いをしてみぬか? 」


「あの娘のような恰好をしたものか……」


「そうじゃ、あれはお前の戦闘欲を満足させるぞ? 」


「今は俵藤太の血筋がおる」


「それのすぐ後でも良いのじゃがな……」


 大ムカデがぐらりと揺れる。


「ううむ……貴様……わしを……」


 そう言いながら、大ムカデはその場に崩れ落ちた。

 

 静かに深く眠るように……。

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