第二部 ミケ 第三章
「いやいや、300年くらい前の話ですにゃん? 」
「知らないよ、そんな話。古すぎる」
「そもそも妖の城の伝承だってあまり知られて無いし」
「うううむ。科学が進むと厳しいにゃん」
などとミケが悲しい顔をした。
あまりにしょげるので、仕方ないから聞いてあげた。
「どんなふうに仇を討ったの? 」
「おおおおお、良くぞ聞いてくれたにゃん。商家だった主の親を毒殺して殺した親戚の者がいて、主が継ぐはずだった商家を乗っ取られたにゃん……。主はおかしいといろいろ訴えたんだけど、逆に捕まる始末で……」
「ん? 役人と組んでたって事? 」
「そうですにゃん」
「それなら、妖の城って駄目駄目なんだね? 」
「妖の領土の外の話ですにゃん。それで牢屋で亡くなる時に、心配で覗きに来たわしに復讐を頼んだにゃん」
「へぇぇぇ。それで妖だったミケが呪い殺したんだ」
「化け猫だけど、妖として有名じゃないから、そんなに力は持っていなかったにゃん」
「じゃあ、どうやって? 」
「主を嵌めた親戚が寝ている間に、ネズミを嚙み潰して、そいつの口の中に突っ込んだにゃん」
「は? 」
「それは……力技では? 」
「そうですにゃん。呪いで殺すのも、ネズミの毒で死ぬのも同じですにゃん。猫は生でネズミを食べれるけど、人間は無理ですにゃん」
「えええええ? 」
「それで病気で死んだ時に、葬儀の場をわしがじっと見ていたので、まさか、あの猫はっ! ってて騒ぎになったにゃん」
「……ミケが妖である意味ある? 」
「普通の猫にはそういう風に嚙み殺したネズミを相手の口に突っ込むと言う技は無いにゃん」
「そういうのって、何か不思議な力があるのかと思った」
「猫が寝ている相手の口を開けて、強引にそこに猫が噛み殺したネズミを突っ込むだけで十分不思議な事だと思うがの」
などと柴吉が横から口を挟む。
「いや、そうだけど、あまりに物理的で直接的で……いや、ネズミの細菌とかで死ぬんだから、化学になるのかな……」
「それになんか話が弱いよね。葬儀で皆が見ただけでしょ? 」
「いや、それで噂が広がって、私の家もって主が住んでいた誰もいない家に復讐のお願いに来る人が増えたにゃん。それで、仕方ないから、そうやって頼まれた復讐したい相手が悪いのが本当だと分かったら、片っ端からネズミを嚙みちぎって寝ている相手の口に突っ込んだにゃん」
「あっさり、殺しまくるんだ」
「妖ですからにゃん」
「それって、どうなの? 」
如月彩がドン引きしていた。
「それで、復讐してもらったものが、感謝のつもりで主の屋敷のそばに社を作ってくれたにゃん。それで社に復讐を頼む人が増えて片っ端からやってたにゃん」
「外道……」
彩がさらにドン引き。
「でも……世の中は上手くいかないにゃん」
「なるほど、妖の城が近くにあるから、それが妖のせいでわ? って事で、動き出したのか? 」
「いや、普通に妖は直接相手の口にネズミの死体を突っ込んだりしないから、誰も気がついてないぞ。普通はしないだろ? 」
「は? 妖が誰もしない? 」
「普通は妖力だろ? ここまで鮮やかに死んだネズミを口に突っ込むとかはな」
「妖達からはやることがおかしいって言われたにゃん」
「いや、まあ、そうだよね」
「出来る事をしたまでにゃん」
「そう言う問題かなぁ? それで世の中は上手くいかないって、何があったの? 」
俺が話の続きが気になってミケに聞いた。
「いつもネズミを使ってたので、ひょっとして猫じゃなくてネズミ様じゃないのか? って話が変わってきたにゃん」
「ああ、なるほど……」
「それで、いつの間にか、猫じゃなくてネズミ様って言いだしたにゃん。社にもネズミの像が置かれたりして……」
「ああ、当時はネズミを口に突っ込まれると菌とかウィルスで死ぬって感覚があったのかどうか微妙だしね」
「そうしたら、あそこの寺の当時の住職が、ネズミの使いと言うなら、我が寺の大黒天様が聞き届けてくださったのではとか言いだして、いつの間にか完全にわしの話で無くなったにゃん。なまじ、当時は坊主がいろいろと旅行の許可とか戸籍を管理してたから、そのまま、言い切られて、そうなってしまったにゃん」
「いや、それは……気の毒だけど……」
「だから、次は妖の城の主に社を建てていただいて、大大的に化け猫様が怨敵を呪いますって話を広げてほしいにゃん」
「いや別にそこまで社に祭られなくても……」
「神仏が信仰する人がたくさんいるだけで、その感謝とか信仰を受けて位が上がるように、妖も同じように妖としての位が上がるにゃん。おかけで中途半端な妖で止まってしまったにゃん。あのまま社があればもっともっと強い大妖になれたかもしれないのに……」
「えええ? 信仰とか感謝とかで位が上がるの? 」
「普通の話ですにゃん。信仰と感謝は位が上がり、使える力を上げますですにゃん」
「ひょっとして……ミケってあまり妖として強く無いの? 」
そこまで聞いて彩が柴吉に聞いたら、柴吉が目を逸らした。
「駄目じゃん……」
そう彩が呆れた。
「ああ……なるほど……」
それで俺と彩が無言になる。
ますます妖の王を継ぐのは危険だと言う事だ。




