第十二部 大ムカデ 第七章
「自衛隊の情報保全部の妖特科ならどうですかね? あそこは武闘派とか全部の妖とそれなりの関係を持っているでしょ。大きく見ると妖の敵でもあるけど、日清か日露で一緒に戦った経験があるんじゃないかな? 大日本帝国軍と……」
「あの大ムカデが? 」
「元々、大日本帝国軍の情報局に妖特科があって、それの流れで自衛隊の情報保全隊の前の調査隊に引き継がれて、今があるって話ですからね? 妖関連は国家としても極秘だったし、専門職で無いと分からないから、それでずーっと戦前から引き継いでいるはずですよ。元は江戸時代は御庭番が関わっていたってくらいですし」
などと佐伯五郎さんが話す。
「じゃあ、素直に何で頼まなかったの? そう言うって事はそれなりにつながりがあったのでは? 」
などとそれで俺が土蜘蛛さん達に突っ込んだ。
「いや、我々と繋がっているのは渡辺陽菜とか言う性悪女で……」
「ねちねち言ってくるから辛いのよ。あのおばちゃん」
「結構、愚痴が凄いですよね」
やべぇ、知人と関係あるとか。
参ったな。
全員が心当たりがあるから苦々しい顔になった。
それなら仕方ないって言わないけど口で言いそうになってしまう。
あの人は難しいからな。
「ちょっとおぉぉ! 学校から提出用紙とかを持ってきたら、何でうちの姉さんの悪口になっているわけ? 」
などと香織がいつの間にか近くにいた。
何という間合いの悪さか……。
「いや、だってねぇ……」
などと茉菜さんがため息をつくような顔で話す。
うーん、否定できないや。
香織も否定できないらしくて手足をバタバタさせた。
「ごめん。手間かけて。家が焼けちゃってね」
そう俺が機先を制して香織に頭を下げた。
彼女も俺の監視だけでなく、幼馴染でもあるので、土蜘蛛に同意しているのを知られると面倒くさそうだ。
特に姉の陽菜さんにそれが伝わるのはまずい。
「こんな奴らと付き合うから」
などと香織が茉菜さんにキツイ言い方をした。
「あんたも、あれの妹なら同類だろ? 付き合うとろくなことが無いって言われてるし」
「よく言うわ、トラブルの詰め合わせとか言われてるあんたらに言われたくない」
などと双方が双方にトラブルがある事を否定していない。
かって、こんな虚しい言い合いがあっただろうか。
「あ? 毛抜き形太刀? えええ? あんた……俵藤太の末裔? 」
彩がそれでも、太刀で素振りを繰り返しているので、流石に目立ったのか、そこを香織がまさかので突っ込んできたので驚いた。
しかも、俵藤太まで当ててしまう。
それで隆史おじさんがびくりとした。
「何で、そこまで分かる? 」
「いや、毛抜き形太刀って言うと、そうでしょ。そもそも、あの平将門とも戦った豪傑だし。そう言えば如月って……名前を変えている? 」
などと香織が凄い事まで聞いてくる。
「いや、うちの母方が藤原家だ」
隆史おじさんが香織にそう話す。
「なるほど、お父さんの母方かぁ。母方だと今は分かりにくいよね。でも、実は日本は古くは母系だからありえなく無いのか」
などと香織が納得した。
日本は父系のように言われるが、中世までは実は母系である。
だから、平安時代とか通い婚だったりする。
それにしても、直系とは違うんだ。
「ああいうのは稀に現れる先祖返りみたいなものですからね。突然に現れて家系図みたらって奴です」
間宮さんがそう説明してくれた。
「で、爺さん、どうした? 」
「いや、自衛隊の情報保全隊を通すのは構わないのだが、まさか、日清、日露で戦争参加組とかだとはな。あの大ムカデ。それで御前といろいろとあったのか? となると、何か仕掛けてくるかもしれんなぁ。ややこしくなってきた……」
などとややこしくしまくっている元凶が呻いた。
いや、あんたに言われてもって思うが……。
「御前って日清、日露にも関係してんの? 」
「してる。ちなみに、ペリーも本当は高圧的にするなと大統領に命じられていたのに高圧的に出たのは御前が操ったって、ちらと話したことがある。後に為替で幕府が大失敗して、その結果庶民が食べていけなくなり、それで明治維新への流れがあるのだが、それをやったとも言ってた」
「為替? 」
「例えば、幕末の治外法権と関税の自主権が無い話だが、あれは結んだ後に五か国の外交官がこんな条約を結ぶとはと結んだくせに馬鹿にして、それの話を向けたら幕府側がどういう不平等な条約か知っていた話があって、五か国の外交官がそれなら何で結んだのだと問い返す話があるのだが、あのあたりも精神コントロールでやったって話してた。それで時代を加速させたとか言ってた」
「つまり、お爺さんは御前が嗅ぎつけて関わってくると見ているのですね? 」
突然にお婆さんが爺さんに話しかけてくる。
「まあ、一条覚がそうなのかは確定ではないのだが、どこかで生きているのは間違いないと思う」
「ならば、彩ちゃんは私にとっても孫のようなもの。私が守りましょう」
そうお婆さんが微笑んだ。
なぜか、その時に俺はお婆さんに途方もない凄い力を感じた。
えええ?




