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第十二部 大ムカデ 第三章

 そうしたら、如月家から如月隆史さんが彩と出て来た。


 如月隆史おじさんも実は武術をやっていたのではと言うような身体と気配をしている。


「なんで駄目なの? 尋常の勝負って言われているのに……」


「だからだ! 自分の娘が死地に赴くのに、そんな事を許せるわけは無いだろう? 」


 隆史おじさんがそう叫ぶ。


 自分ちの庭の木が燃えて、うちが火事なんで公務員だから半休にして帰ってきたらしい。


 あーあ、それにしても、とうとう、また高校を休んじゃったよ。


 正直、それどころじゃないけどさ。


「だって俵藤太の血筋なんだってよ? 」


「いや、それは関係ないだろ? 16歳なんだ」


 言いながら、隆史おじさんがびくっとする。


 どうやら俵藤太の血筋は知っていたようだ。


「まあ、そうでしょうね。娘が死地に行くのに許す親はいません。子供ですし」


 などと間宮さんが納得したように頷いた。

 

 爺さんは完全に焼けた木造の玄関を通って、奥の燃えてない方にずかずかと入っていく。


 彩の説得は爺さんも参加してもらわないと……、そして大ムカデは何とか話し合いで……それにしても、彩を戦わせる気満々なのが困ったけど……。


 それで何か奥の方から綺麗な樫の木製の長ぼそい木箱を出してくる。


 凄い貴重な代物のようだ。


 それを揉めている彩と隆史おじさんの前に行くと木箱を開けた。


 そこには高そうな刀が入っていた。


「ほら、毛抜き形太刀だ。本物の俵藤太の刀は伊勢神宮に蜈蚣切丸として奉納されているが、これは似た逸品だ。妖を倒すのに特化している。大百足には太刀と決まっているからな」


 などと彩に渡す。


「ああーあーあーーあーあーあー! まだ持ってたんですか? 」


 なぜか隆史さんが動揺しまくっていた。


「ああ、それは……」


 心配そうについてきた同じように半休で休んだ公務員の彩の母親の真由おばさんが絶句する。


「こんな骨董品みたいな刀を……良いの? 」


 などと彩が答えた。


「ふふふふふふ、二代目俵藤太の使っていた逸品だ。数多の妖を斬り伏せてきたのだ」


 などと爺さんが隆史おじさんを見ながら話す。


「はわわわわわわわわ! 」


 隆史おじさんが見たことも無いような顔をしていた。


 凄い動揺している。


 二代目俵藤太なんて聞いたこと無いし。


 そうしたら、間宮さんの出来る部下さんの顔が変わる。


「ななななな、何ですって! 二代目俵藤太ですって! 地下闘技場のあの二代目俵藤太の太刀が何でこんなところにっ! 」


「ああ、有名ですね。そう言えば、妖の世界で二代目俵藤太って言えば……」


 間宮さんも少し驚いていた。


「ええええ? そんな地下闘技場があるの? 」


「ああ、妖と人間の異種格闘の場だ」


 などと爺さんが頷く。


「でも、あれは実はプロレスですよね」


 などと間宮さんが苦笑した。


「何を言うんですかっ! プロレスは確かにブックがありますが、あれは芸術ですよ!  私は人間のプロレスも見ますが、アンドレ対ハンセンには震えましたからっ! あれこそ芸術! 格闘技なんて目じゃないですから! 」


 真面目に熱く語る間宮さんの出来る部下さんに引く。


 いやいや、プロレスファンだったのか。


「いや、でも……」


「妖対人の戦いでは、お客さんは血まみれの殺し合いなんか望んで無いんですよ。それを鮮やかに斬っても抑えても大丈夫な場所を使い、あそこまでぎりぎりで見せるんです。まさに猪木以来の天才だと思いますよ。二代目俵藤太は! 」


 などと間宮さんの部下が叫ぶたびに隆史おじさんがびくびくする。


 これはやばい。


 爺さん、何かやって隆史さんを脅してんなと……。


 それで俺が爺さんを呆れてみてたら、彩も爺さんと隆史おじさんの顔と真由おばさんの顔を見て、何かを察した顔になった。


「良いですか? プロレスと言うのはそういうものです。あのパキスタンの英雄と言われた英雄ペールワンと猪木は戦ったんです。そして、試合の寸前まで新日本プロレスの担当が必死に話し合いに行って、「プロレスはショウだから」と説明してもペールワン側はそれが分からずに本気の試合を挑んできます。そうしたら、試合が始まる前までは「なんでシュート(真剣勝負)になるんだ」と怯えて騒いでいた猪木があっさり右目をえぐって腕がらみで左腕を脱臼させて勝つんですよ。しかも、ペールワンは英雄だから、警備にいた軍隊が一斉に猪木に銃を向けるんです。でもアントニオ猪木を演じきっているから、全く動じないんです。これこそ、プロレスですよ! 」


 などと間宮さんの出来る部下がそれじゃない事を騒ぎ続ける。


 話が完全にプロレスの話を熱く語るだけで、全然関係ないことを言い続けていた。


 こんなに残念な人だったんだ。


「その地下闘技場の二代目俵藤太ってお父さんなの? 」


 彩も直球系だから素直に聞いちゃった。


 隆史おじさんが見たことも無いように動揺していた。


「ふふふふふ、こんなところに居たのか……」


 などといきなり高いブランドものの背広を着た、人間と同じ大きさのハツカネズミさんにそう言われる。


 頭だけがハツカネズミだ。


「あんたは……」


 隆史おじさんが震えながら足がカクカクしていた。


 どうも彩に知られたくない話が次々と出てきてパニックになっているようだ。

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