第十一部 土蜘蛛 第七章
「ええええと」
「壊れてしまったな。玄関……」
ドロドロに溶けた玄関を見て俺と柴吉が途方に暮れた。
「ああ、本気を出してくるな」
「ですね」
「確かに」
などと茉菜さんと五郎さんと六郎さんがひそひそと話している。
いや、巻き込んでおいて暢気すぎるだろうに。
そして、彩がさらにそれでもと大ムカデに攻撃をしようと近づいた。
「いかん! 近づくでないっ! 」
かぐや姫様がその瞬間に一喝した。
それで彩がさらに後ろに飛びのく。
それで良かった。
カチンと牙を鳴らした途端に、毒液が燃え出した。
そして、毒液は炎の噴射に変わり、あたりを炎上させる。
「小童がぁぁぁ! 」
彩を少年と勘違いした大ムカデが叫ぶ。
あたり一面が一気に燃えた。
すさまじい勢いだ。
「毒でもあるが可燃性なんだ」
それで俺が驚くより、玄関を見て困る。
燃えてる。
マジで家が燃えている。
玄関のあたりが業火だ。
「何をしているんですか! 」
間宮さんが来てくれた。
あのできる部下の人達も連れている。
「ふん、貴様ら公安の天狗どもは邪魔をするなっ! 」
大ムカデが叫ぶ。
「ああ、土蜘蛛さんと揉めているとかいう眷属離れの大ムカデさんですか? 戦うのを止めてもらえます?
我々も敵に回りますよ! 」
そう間宮さんが警告した。
間宮さんの部下も拳銃を手にかけた。
いや、拳銃で倒せるのかな?
もともと節足動物って無茶苦茶強いし死なないし。
人間と同じ大きさの身体を持つだけで勝つのは無理なのに、これは40メートル近くある。
それにしても、地下に半分以上の身体を入れている所が結構凄い。
「用心深いだろ。自分はすぐ撤退できるように地下に大半の身体を入れている。あれで噛むと地下に引きずり込まれるから、土蜘蛛で半身不随になった奴が結構いる。さすが時効だが明治のころに沢山人と妖を殺していただけはある」
茉菜さんが俺の視線に気が付いたのか教えてくれた。
妖だけでなく人も殺しているのか。
彩がまずいな。
「まあ、我々も蜘蛛化すれば同じ節足動物ですからな。そう簡単には死なないし。それで生きているだけですが? 」
「お嬢ちゃんは人間だし厳しいのでは? 」
「いや、それなら、うちの彩に戦わせるなよ? 」
などとのんきに五郎さんと六郎さんが話すのでイラっとして思わず声を荒げる。
「一応、女の子なんですよ? 」
柴吉もそれでブチ切れたように話す。
なんだかんだ、彩は身内なのだ。
「はあ? 」
いきなり、衝撃を受けているのがまさかの大ムカデさんだった。
「女の子」
俺がそう彩を指さした。
「そ、そう言えば薙刀かっ! 」
今更ながらに大ムカデさんが驚いていた。
いや、気が付かなかったのか。
まあ、あんな高速で攻撃されたら、普通は勘違いするよな。
「人間の子を巻き込むな! 妖同士で殺し合うならともかく、女の子は違うだろうがっ! 」
などと間宮さんが叫んだ。
いや、でも、薙刀で一方的に攻撃してたのうちの綾だし。
そう思ったら、柴吉も同じ事を考えたらしい。
<凶>と戦った時もそうだが、あまりに戦闘的すぎる。
先に攻撃しちゃうもんな。
「え? またですか? 」
それで俺と柴吉の表情を見て間宮さんも察したらしく絶句していた。
「いやいや、<凶>とやり合った時も、容赦なかったと聞くが、なるほどな」
などと茉菜さんが感心していた。
「いや、どれだけ話が漏れてんです? 」
「うちの土蜘蛛もそういう情報に優れているんだ」
「そうそう、常に敵を調べて戦うのがうちのやり方だ」
五郎さんと六郎さんが自慢げに話す。
「いや、それで半身不随に仲間がされたんですよね」
「いや、死なない事が大切なのだ。われらは節足動物だから、少々では死なぬし」
などとあまり自慢にならない話をした。
「だから、貴方に倒してもらおうと思ったわけです」
「古の大妖怪の血をいくつも引く貴方に」
「おい! 一応、通達は行っているんだろうな! お前ら節足動物だとしても死ぬぞ! 真面目に皆殺しにされるぞ! 」
などと五郎さんと六郎さんが俺の素性をある程度知っているらしく、口を滑らしたので柴吉がマジの迫力で脅す。
そして、それに本気で五郎さんと六郎さんと茉菜さんが怯えていた。
柴吉も恐怖が張り付いたような顔で脅している。
いやいや、何の妖怪なんだ。
俺の母さんとか……。
引くわ……。
そして、彩の方にさらに大ムカデが火炎放射をした。
だが、流石綾だ。
俺の家が燃えているのを見て、自分の家が燃えないように位置をずらしている。
庭の木は燃えちゃっているけど……。




