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第十一部 土蜘蛛 第六章

「これは、いかん」


 柴吉がそう呻く。


 庭のど真ん中をぶち抜いて、何かが出て来た。


「えええええええええ? ムカデ? 大きいな! 」


 などと彩が叫んだ。


 そういや、大ムカデって妖退治ものの定番だったな。


 などと、その巨大なのを見て思う。

 

 40メートルくらいあるそれは、もはや2メートルくらいの巨大な顎をしており、人間でも噛み砕けそうだ。


 ムカデだから毒を持っているのだろうけど。


「貴様らが土蜘蛛の頼んだ妖とやらか? 」


 などと声高に大ムカデが叫ぶ。


「ムカデが喋ったぁぁぁぁぁぁぁ! 」


 彩が結構喜んでいる。


 少女だが少年のようなもので、少女の中でも少ない、ゴキブリを平気で足で潰せる彩にしたら、別に虫は怖くないらしい。


 ちょっと、引く話だが……。


「これはいかん。眷属離れだ」


 などと柴吉が評した。


「何、それ? 」


「元々は神の眷属として異様な力を持っていたものだ。それが、その自分の力に増長したり、何かあって神の眷属から離れた厄介な奴だ」


「いや、でも柴吉は神だよね」


「いや、相手は多分、戦の神の毘沙門天の眷属だったものだ。相当強いぞ? 」


「でも、真口大神ってヤマトタケルを倒したほどの神じゃないの? 」


「いや、それはわしじゃないし、わしも年だから」


 柴吉が前足を手のように無理無理って感じで左右に動かした。


 こういうのは人間臭くて、犬……いや狼に見えない。


「……ん? 」


 などと大ムカデが何故か俺でなく彩を見ている。


 美少年フェチとかボーイッシュフェチとかそういう奴だろうか?


 まあ、そんなこと無いんだろうけど。


「あれ? 彩の方を敵対視してないか? 」


 柴吉も同じように思ったようだ。


「だよねぇ」


 俺が同意する。


「さあ、かかってきなさい」


 そう彩が薙刀を構えた。


 八相の構えだ。


 即座に攻撃できる構えで、これと上段の構えしか彩はしない。


 他にも構えはあるのに、攻撃型ばかり使っていた。


「貴様っ! 匂いがっ! 」


 大ムカデが騒ぐ。


 それと同時に彩が先手で巴御前の薙刀を振りかぶって叩き込んだ。

 

 まだ相手が様子見している段階で、即座に攻撃と言うのが真面目に彩らしい。


 しかも、側面から首を斬り落とすとかすればいいのに、正面から顎に薙刀を打ち込んだ。


 キンッ! 


 って感じで、あの巴御前の薙刀が弾かれる。


 信じられない顎の硬さだ。


 だが、それを気にしないで、続けて連打で同じように顎を狙って攻撃を続けている彩。


 キンキンキンッ! 


「まだ、話しているだろうがっ! 」


 大ムカデがブチ切れて彩に毒液のようなものを噴出した。


 それを彩が飛びずさって避けた。


 それでかかった地面の草がドロドロに溶ける。


「あれ? ムカデの毒って噛みついてでなかったっけ? それで溶けるとか? どういう事? 」


「いや、ムカデじゃなくて妖じゃぞ? 」


 柴吉が俺の疑問に答えた。


 だが、解せぬ。


 そして、もっと解せないのは、彩ばかり見ている。


「嫌な匂いだ。妖で無いのに、この異様な強さ……」


 キンキンと顎が攻撃を引き続き彩の薙刀で受ける。


 さっきの毒液を別にしたら、一方的に彩が攻撃をしていた。


 超高速度の薙刀の振り降ろしが大ムカデの顎に連続で叩き込まれている。


 もはや、人間の動きではない。


 毎日薙刀を1000回素振りとか異様な事をやってだけはあって、いつの間にか凄い腕が上がっている。


 元々の彩のセンスが凄いのだが、多分、大ムカデは彩と話がしたいようで、それを問答無用で彩が攻撃している部分も大きいと思う。


 まあ、いつもの綾だ。


「あー、何か大ムカデは話しをしたいんじゃないですかね? 」


「私もそう思いますが……」


 などと逃げたはずの五郎と六郎がいつの間にか横で見物していた。


「覇王如月。<(わざわい)>と互角に戦ったと言う噂だけはあると言う事か? 」


 などと茉菜さんがいつの間にか戻ってきて、腕を組んで解説者みたいな顔で横にいた。


「いや、あんたら逃げたんじゃなかったのか? 」


「あんな重そうな薙刀を高速度で連続で叩きこんでいるのを見て、感心してな」


「本気で人間じゃないですな」


「あの渡辺綱の血筋の三姉妹に匹敵する強さですよ」


 などと土蜘蛛さんの面々が話す。


 それで、彩の攻撃速度が上がった。


 多分、褒められて嬉しいんだな。


「褒めると強くなる、いつもの彩じゃな」


 などと柴吉が苦笑した。


「凄いや! まさに神のごとし! 」


「恐るべし、覇王と呼ばれるだけはある! 」


 柴吉が余計なことを言うから、土蜘蛛の面々が彩を褒め始める。


 それで彩の攻撃速度がさらに上がる。


 キンキンからキキキキキキキキンに音が上がる。


 もう、動きが凄すぎて、見るのも難しくなってきた。


「いや、その速度なら、別の場所を攻撃してわ? 」


 などと顕現したかぐや姫様まで俺に言う始末だと言う。


「やかましいわっ! 」


 大ムカデがブチ切れて毒をあたりに噴射した。


 それで彩が凄い速度で回避してさがる。


 キレまくっているのか、あたり一面に大ムカデが毒をまき散らしている。


「あ……」


 おかげで俺達も避けたが、残念ながら、うちの家の玄関がドロドロと溶けた。

 

 どうするんだろう、これ。

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