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第十一部 土蜘蛛 第五章

「良いなぁ、そんなスーパースターが先祖で……」


 彩が愚痴る。


 どうも、香織が渡辺綱の血筋ってのがうらやましいらしい。


「いや、存命中は今ほど凄くなかったみたいだけどな。実際に亡くなられてだいぶたって、大師の称号を朝廷から送られている。実際、真言宗の祖として祀られているけど、中国での話は嘘かと思ったら、未だに中国の密教の寺ではちゃんと祀られているらしくて、本気であちらで有名だったらしい。筆を口にくわえて、左右の手に一本ずつ持ち、左右の足に一本ずつ挟んで、自在に字を書けたと言う事で五筆和尚と中国で呼ばれていると言うのも本当だったみたいだし。後に中国にお経を取りに行った僧侶が、まだ五筆和尚は元気ですか? と聞かれたとか言う話も残っているから」


「ああ、まあ……」


「どちらかと言うと、民の救済に熱心で、教育の終わった弟子達を、全国津々浦々にいわゆるお大師さんの格好で行かせて、井戸を掘らせたりして苦しい庶民の救済を第一にやらせたらしい。それで後世になって有名になりだしたら、弟子の活躍がそのまま弘法大師伝説になったみたい」


「そこまでご存じか」


「これは本当に婿で入ってもらったら良かったかも」


 などと五郎さんと六郎さんが感心していた。


 いや、空気が悪くなるから止めて欲しい。

 

 彩が殺気立つし。


「あの……そろそろ高校に行かないとまずいのですが……」


 俺がそう話して打ち切ろうとした。


 意外と弘法大師は面白い話が多くて、好きなので余計な話をしてしまった。


 それで五郎さんと六郎さんと茉菜さんが顔を見合わせた。


「正直、貴方達に謝ろう」


 などと茉菜さんが頭を率直に下げてきた。


「は? 」


 俺が異様に不安を感じて黙る。


「申し訳ない。我々としても仕方なかったのだ」


「これしか無いだろうと土蜘蛛の幹部の間で話し合いがあってな……」


 五郎さんと六郎さんの話が微妙に嫌な方向に向かっている。


 そう言えば癖があるとか言っていたな。


 爺さんがそう言う時って……自分に似ている時じゃなかったっけ? 


「ごめんね」


 などと茉菜さんが本気で謝っているのが分かるので不安が増した。


「何か……来るよ? 」


 などと彩が薙刀を構える。


「おいおいおいおいおい! 」

 

 柴吉が外で声を出すのは珍しい。


「ちっ! 」


 そして、まさかのかぐや姫さまの舌打ちである。


 神様の舌打ちに、茉菜さんや五郎さんと六郎さんが申し訳なさそうな顔をした。


「あれ? 高校を休むレベルかな? 」


 俺が呻く。


 これはいけない。


 癖があるって爺さんが言った時に気が付けばよかった。


 そっくりだ。


「我々では手に余るのだ」


「あの校舎を破壊した貴方なら倒せる」


「我々は期待しているのだ」


「ふざけんなよ! 」


 俺がキレる。


 こいつら、揉めている妖を連れて、こっちに来たらしい。


 何かがこちらに向かってきているのが分かる。


 しかも、地下を進んで来ているようだ。


 冗談だろ?


 俺が光りだして、かぐや姫様の加護が動き出す。


 それでやっと分かる。


 40メートルくらいある巨大な細長い何かが地下を向かってきている。


 蛇かと思ったが違う。


 ざわざわとした気配がする。


「済まない。こんな良い人達なら、こんな事しなかったのに」


 などと茉菜さんが謝るが、それはそうじゃないなら平気でそうするって事だから、決して良い話ではない。


「我々としても幹部会で決まったので仕方ないのだ」


「こうするしか無いと一族のものに言われては……。なにしろ、神楽耶殿は、あの校舎を破壊した大妖なのだし」


 何というか、校舎を破壊したのが俺ってばれているし。


 だが、このかぐや姫様を通して感じる気配が半端ない。

 

 この地下を進んでくるのも、また大妖なのではと思う。


 真面目にやばい。


 どうやら、その大妖は地下20メートルくらいを進んで、こちらに向かって徐々に上昇してきている。


 地上に出現して戦うつもりらしい。


 それで一緒に戦ってくれるのかと思えば、天下の土蜘蛛さん達は逃げ出した。


「ちょっと、協力して倒すんじゃないの? 卑怯でしょうがぁぁ! 」


 などと彩がブチ切れた。


 土蜘蛛って巨大化したら10メートルくらいになれると聞いていたのに、戦わないで逃げるってあるのか?


「いや、貴方達も強いんじゃないの? 」


「残念ながら頭脳の方が凄いのだ」


 などと意味不明なことを走り去りながら言う始末。


 しかも、たちが悪い事に地下を進んでくる何かは向こうの土蜘蛛の方ではなく、こちらに向かってきている。


「何でしょうか? これ? 」


「もう出てくる」


 俺がかぐや姫に聞いたら、そう囁かれた。


 自分で見ろって事らしい。

 


 


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