第十一部 土蜘蛛 第三章
「本当に女子のブレザーを着ているんだ」
「本当だ」
時間的に高校に行く時間だからもあるが、それを理由に話を早く終わらせれると思って、高校のブレザーを着て出た。
そうなんだよな。
俺、女装してんだよな。
無意識でずっとこれだから、気にしてなかったけど。
土蜘蛛と言う歴史に残る妖の方々に、それが最初に言われる言葉とか切ない。
「いや、でも、これは有りじゃないですか? 」
「姫も綺麗だけど、これは次元が違う」
横に2人の黒服を着てグラサンをした男が二人ついている。
ガードマンというか、御付きの人……妖と言うかそんな感じなのだろう。
気配的に彩のような武闘派らしい。
人間型でただものではない雰囲気があるから、実際に戦闘に移行したらどれほど強いか分からないレベルだ。
これは強いわ。
その時に風が吹いたので、俺の顔に自分の髪がかかってしまって、それを取る為にさらりと首を揺らした。
かぐや姫様が長い黒髪に拘りがあるので、爺さんが交渉した結果、肩までで我慢してもらっているとかで、俺は仕方なく長髪なのだ。
それがキラキラと揺れて見えたらしい。
「キューティクル? キューティクルだよ! 」
「髪がキラキラしている」
などと横の二人が騒いでいる。
顔は強面なのに、こんな話で盛り上がれるとか……。
多分、姫様にずっと御付きでそういう性格になっちゃったのかもしれないが……。
「ちょっと……美少女過ぎない? 写真でも凄かったけどさぁ……これはちょっと……」
などと姫と呼ばれてた同じ黒服の女性がギギギって顔をしていた。
相当綺麗な顔立ちをした女性で、同い年らしいのに化粧のせいか年上に見える。
そんな美少女が俺の容姿を見てギギギってするのだ。
かぐや姫様の力が強くなるたびに、美しさが全面に広がって神とか騒ぐ人がいるくらいだとか香織とか有希が最近は騒いでた。
実際、彩がエゴサしたところだと、俺の容姿があの前の写真ですら、「これは卑怯だ」とか「これでモッコリなのか? 」とか騒がれているそうだから。
「ああ、かぐや姫が依り代として俺の身体で力を発揮する度に綺麗さが上がってんだよ」
などとしょうがないので解説した。
「それは卑怯だぁぁぁぁ! 私だって頑張ってんのに! どれだけコスメとかお金がかかっていると思っているのよ! 」
「いや、同い年じゃないの? それなら化粧品は使わない方が良いよ。本来の肌を維持する方向だけにした方が良い。化粧品ってどう使っても肌に悪いから、年を経ると段々と肌が悪くなって、それを隠す為のものに変わるから」
などと俺が話す。
意外と、専門家の間では、実は使わないのが正解と言われることもあるのが全ての化粧品である。
「あ、やっぱり、いろいろと拘っているのね? 」
「いや、普通の石鹸しか使ってない」
「噓でしょ! 」
話がもう、そっちじゃない。
「まあまあ、姫。土蜘蛛族にはまだ自慢できる部分がありますよ」
「そうそう天才を生み出す土壌があるんですから」
などと御付きの黒服がそう励ましている。
別に容姿の話をしに来たので無かろうに。
「ふ、ふんっ! まあ、そうね……。うちは天才を生み出した血筋だから」
などと姫さんがふんと言う感じで、話す。
「天才って? 」
ちょっと興味を持って聞いた。
「ふふふふふふふ、あの弘法大師空海を産んだ佐伯家は土蜘蛛なのよ」
などと姫が話す。
「ああ、そういう説あるよね。本来の中央佐伯家でなくて、突然地方に現れた佐伯氏なんで、土蜘蛛系ではって言われている。あくまで説だけど……。土蜘蛛さんがそう言うなら本当なんだ。へぇぇぇ、まあ、あの当時は地方にそういう同じ姓で優秀なのがいたらやるように、普通に中央の佐伯氏が動いて系図に入れちゃったからね」
「だが、土蜘蛛は土蜘蛛だ。例え中央の佐伯氏が神別氏族だとしても……」
「そうですよ」
などと姫と御付きの黒服が断言する。
一応、中央の佐伯氏は天押日命の直系氏族である。
だが、現実には結構、血筋とか意外といい加減なのである。
系図に書き込みとかも普通にあるし。
あの豊臣秀吉は源氏に系図書き込みを断られて、仕方なく貴族の系図に入れてもらった。
それで関白になる。
本当は織田家が平氏なんで源平交代論から源氏になりたかったらしいが、上手くいかなかったらしい。
そのあたり、徳川家康は上手で長い事工作して源氏の名門の吉良氏の系図に入れて貰って見事源氏になった。
ちなみに、吉良氏がそれを内々で持ち出してたのかもしれないし、それともコンプレックスからか赤穂浪士をつかって、吉良家を潰している。
赤穂浪士が吉良氏を討つ前に隠れ潜んだ場所がどう見ても幕府が庇ってないと無理な場所ばかりなのだ。
同じ高家の今川氏は幕末まで全うしたのに。
それで、向こうから巴御前の薙刀を持って走って来る彩が見えたので慌てて声をかける。
「ああ、幼馴染が薙刀を持って来るので、それは申し訳ない。戦う気は一切無いから」
などと俺が話す。
それを言うのを忘れていたのだ。




