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第十一部 土蜘蛛 第一章

 疲れ果てて、家で寝て、次の朝に居間で祖父の入れたコーヒーを飲んでいた。


 今回は俺の了承の元だと言う事で、爺さんも婆さんも逃げていない。

 

 逃げていないから良いと言う事でもないので、俺は笑えないのだが……。


 まあ、それでも、爺さんの入れるコーヒーは美味しいので、そこだけはありがたい。


 そうしたら、また庭から人の身長くらいの大きな窓を開けて、彩が居間に乗り込んできた。


 今日は巴御前の薙刀ではなく、師匠の薙刀を教えてくれている奥さんから貰った木でできた薙刀を持っていた。


 本気で巴御前の薙刀を使う気なのだろうか?


 屋内とか天井が低いうちの家とかだと使いづらいのではないかと思うのだが……。


 それでいきなり彩が持っていたスマホを見せてきた。


「凄いよ、会員数が5000超えたって」


「ぶほっ、ええええ? 一日経ってないよね」


「なるほどな。柴垣派の妖が5000くらいいるからな」


「はあああ? そんなにいるの? 」


「そりゃ、家族がいるもの」

 

 などと爺さんが呑気にコーヒーをすすりながら話す。


「あんまり、自分のファンクラブとかぞっとするんだけど……」


「まあ、仕方あるまい。派閥が柴垣家だと周知させるためにはこれが良いと思ったからの」


「いや、崩れた山の修繕のお金が要るって言ってたじゃん」


 などと彩が怒ってくれた。

 

 まあ、彩には守ってもらっているから、ファンクラブが出来たので、俺を守るのが大変になるって愚痴ってたし。


「すまんなぁ。神社の設営でお金がいるし」


 などと爺さんがそう苦笑した。


「俺に対する認知とか崇拝とか広げて、妖としての力を強めるのかと思った」


「おおぅ、うちの孫は凄いの。それが分かるのだから」


 そう爺さんが婆さんに微笑みながら話す。


 やっぱり、それもあるのか。


「どのくらい強いの? 」


「はあ? 」


「一条覚って……」


「……多分、今のままだと秘められている力の全力が使えるようになっても、神楽耶は厳しいかもしれんな」


「そんなに強いの? 」


「長い間生きてきた経験と言うものは、なかなかに厄介だからな」


 などと驚いて聞いてきた彩に爺さんが話す。


 経験値が才能を凌駕するってのはあり得る話かもしれない。


 実際、爺さんが凄く見えるのも、その経験値から来るものも多いし。


 勘というか、長い事自分がやってきた事による感覚と言うものは馬鹿にならないだろうし。


 で、気が付いた。


「あれ? さっき、さらっと俺の派閥が柴垣家だと周知されるためとか言ったよね? 」


「おや、言ったかな? 」


「言ったよ」


「ほほほほ、お爺さんったら」


 などとお婆ちゃんが笑う。


「このお婆さんの声の高さのパータンだと、つい、うっかり本音を言っちゃったパターンだよね」


 彩が鋭い。


 ある意味、家族として過ごしていたようなものだから、爺さんと婆さんのそういう部分をちゃんと理解しているのが良い。


 俺も同感だ。


 爺さんはぽっと自分の策をうっかり喋るときがある。


 大体は自分で説明するきっかけを作る時なのだが。


 性格が厄介だから、やらかしたと言うよりは、わざとやらかしているのだ……。


 庭のでかい窓から、今度は柴吉がのそのそと入ってくる。


 まれだが、夜中とか勝手に出ていく時があって、そうやって帰ってくるのだ。


 別に俺がこれだと柴吉を散歩させるよ必要がないのでは? とか思って言ったら、夜は逃げているだけだからと婆さんに言われた。


 で、そうやって夜間に逃げだして家に帰ってくるときは、常に自分で居間の大きな窓を開けて入ってくる。


 当時の自分は普通に柴犬だと思っていたから、それを見過ごしていたが、普通に窓に手をかけて自分で開けて閉める……そして鍵までする。

 

 いや、今に考えるとそういう犬はいないのではと。


 窓を開けたら開けっ放しとかまではあるだろうが、きちんと閉めて、鍵までするのだ。


 なんで、それが異常である事に気が付かなかったと言われそうだが、柴吉が妖とか知らなかったし。


「やはり駄目か? 」


「怒り心頭で姫が話し合いに来るらしい」


「うううむ。すまんな。わしがやらかした」


 などと頭を俺に爺さんが下げる。


「それはやらかしたって言うより、最初からそうなるように話を仕向けて保険にしてたって事だよね」


 などと彩がさらに鋭い。


「ほほほほ、お爺さんったら」


「この笑い方は、そうなるのを知ってたパータンだよね」


 そう婆さんの笑い声の高さで判断するとか、彩も馴染みすぎだろ。


「何なの? 姫って……」


「土蜘蛛の派閥がなぁ」


 などと爺さんが笑う。


「なるほど、俺を諦めないんで、仕方なしで柴垣家の派閥に俺が入ったと分かるように、ファンクラブを柴垣家のNPOの中に作らせたと。だけど、相手がそれでも諦めないと言う事か? 」


「婆さん。孫が察しが良すぎて、ありがたいの。説明が要らんわ」


「まあ、お爺さんたら、ほほほほほほほ」


「これ、お婆さんの肯定の笑いだよね」


 彩がいちいち解説してくれる。


 まあ、その通りなんだけど。


「困ったねぇ」


「困りましたねぇ」


「これ、本当に困ってるよね」


 などと彩の解説が辛い。


「ふざけんなよ! 」


 ムカついてコーヒーを飲んでたコップを受け皿にガチャンと置いた。


 面倒事をまた振ってきやがった。


 


 

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