第十部 ファンクラブ 第七章
「だとしたら、彼だろうな……」
「だれなの? 」
「だれなんです? 」
俺と間宮さんが誠に聞いた。
「ええとね。現〇猫さん」
「はああああああ! あれはインターネットキャラクターじゃないの? 」
「いや、周知されて熟成されて産まれてきたらしいんだけど……」
「そんな馬鹿なぁ! 」
あまりの展開で頭を抱える。
「そいつだ。性格はいわゆる現〇猫のまんまなんですよね」
間宮さんの顔がドン引きしていた。
「そうですね。ヨシ! って感じです」
「そんなの駄目だろ! どうして、そんな奴がっ! 」
「ネットに詳しいからって曾祖父がちょっとNPOのマークが変わった件を周知してくれって頼んだはずです」
「ふざけんなよ! あの爺さん、うちの律蔵爺さんを危険視するのは良いとして、自分もやばいやんかぁぁぁ! 」
「酔っぱらってましたからね。それを頼んでた時に」
「止ろぉぉぉお! なんで、現〇猫に任せるんだよっ! 」
俺が車内で絶叫した。
「いや、彼の初仕事だから、邪魔したら悪いかなって」
「ふざけんなよ! 早く止めてくれっ! 」
俺が誠の胸倉を掴んでゆさゆさした。
「あ、ユーチューブに映像が……。ちょっと、すごい勢いでイイネがついている」
彩が香織にメッセージを貰ったらしくて、それで教えてくれた。
「なんで、そんなにイイネが……」
「凄い勢いで動画再生数が……」
と言いながら、彩が再度来たメッセージを読んだ。
「香織から、あそこにいた人間が全員で一斉に動画再生とイイネを……」
「止めさせてくれぇぇぇ! 」
俺が叫ぶ。
「ちょっと監視している仲間がいるんで、止めるように連絡します」
さすが、間宮さんの出来る部下だけあって即座に対応してくれた。
あくまで一人の公安ですから、お気になさらずにと名前を教えてくれないが、今度聞き出そう。
爺さんの脅しでそれどころじゃない間宮さんは今は残念な人になってしまったし……。
「なんでしょうか? 」
俺がじっと見たから気が付いたのか、間宮さんが聞いてきた。
「いえ、早く急ぎましょう」
とりあえず、誤魔化しで俺が頼んだ。
公安の車は急発進で柴垣家の屋敷に移動した。
とにかく柴垣家にいかないと。
「電話で良いから、連絡して止めてくれないか? 」
俺がそれと同時に誠に頼む。
誠はすぐにスマホで家にかけてくれた。
だが、誰もでない。
「お手伝いさんがいるはずなんだけど……」
「いや、お父さんに頼んだ方がよくないですか? もしくは龍二さんに……」
「父は市議会ですし、曾祖父は酒に酔って寝てます」
「あーあーあ、困ったなあ」
俺も真っ暗になる。
横で彩が香織が知った情報のメッセージが次から次へと来る。
どんどんインターネットサイトで俺の画像と映像が広がっているらしい。
やっているのが現〇猫だと?
「何考えてんだ? 龍二さんは……」
「いや、酔っぱらってたんだし勘弁してあげて、高祖父か一番厳しく育てたのが曾祖父だし。その薫陶があって、祖父は国会議員に父は市長までになったし。まあ、神楽耶には本当に申し訳ないんだけど」
「あまり、妖の王になる前に世界に認知されるってどうなのか、こちらも影響が分かりかねますからね。律蔵爺さんは手を広げるけど、ある程度見切りはしますから、そう言う意味では安心しなんですが、インターネットまでは影響を考えているかどうか……」
間宮さんが苦り切った顔をした。
とにかく、急ぐ。
それで駐車場についたら、そこから走って屋敷に皆で向かった。
「誰かいる? 」
誠が叫ぶが誰もいない。
「何かあったんですかね? 」
などと間宮さんが首を傾げた。
それで俺達も心配になって、柴垣家の大きな屋敷に靴を脱いで上がりこんだ。
彩はいつもの10センチくらいの鉄の棒のようなものに指輪がついた暗器を指にはめて握っていた。
間宮さんと部下のは妖用の特別な伸び縮み式の警報型スタンガンを持っている。
緊急事態かと思ったら、奥の部屋で拍手がした。
それで乗り込むと、お手伝いさんとかが集まって、巨大なモニターの前で拍手している。
「ヨシっ! 」
真ん中にいるネコがあのポーズをした。
だが、ヘルメットもかぶって無いし、真面目にただの猫だ。
まあ、あのポーズが出来るだけで、ただの猫ではないのだが。
色合いは同じだけど、それ以外は同じところが無かった。
「何をやっているんです? 」
誠が叫ぶ。
そこには屋敷の人が全員集まっていた。
そのモニターに俺が映っている。
ユーチューブに投稿したみたいだ。
全員がそれで歓声をあげていたらしい。
「ああああああっ! 神楽耶様だっ! 」
女中さんの一人が入ってきた俺を見て叫んだ。
一斉に俺を見て歓声が上がる。
なんだ、これ?
「……全員、神楽耶さん推しのファンなんです」
誠がおずおずと話す。
聞いてないわぁぁぁ!




