第九部 柴垣家 第八章
「気にしない。気にしない。誰だって間違いはあるから」
などと彩が馴れ馴れしく<赤錆>さんの肩をバンバン叩く。
それで柴垣家の派閥の妖達がドン引きしている。
後で誠から聞くが、やはり武の達人としての鬼の存在感は妖の中で凄いらしくて、妖ですら怯えるのに、あの子は人間の少女なのにあんな風に付き合えるのかとか恐ろしいとか言われたと聞く。
それで<凶>と互角に戦った話も流れて、柴垣家の妖達に大いに恐れられる事になってしまった。
俺からするといつもの彩なんだが、やっぱりなぁ。
「お前、本当に恐れというものを知らんな」
<婆娑羅>様が現れて、そう苦笑した。
「でも、元気のある娘というものは良いものぞ」
などとかぐや姫様が現れて、コロコロと笑った。
「小娘に慰められるとは……」
「元気出そうよ。ついでにご馳走も食べて帰ったら? 」
などと主でも無いのに、彩が言っちゃう。
こういう見かけと違って豪胆と言うので、彩はあちこちの武道家に好かれている。
まあ、性格も竹を割ったようにさっぱりとして良いのも理由の一つだけど。
それで負けず嫌いだし。
「良いのか? 」
「いえいえ、勿論ですよ」
などと柴垣大輔さんが笑った。
こんな包容力が弱小とはいえ派閥の長に一族でなっている理由だろう。
「さあさあ、美味しいよ」
主でも無いのに、次々とご馳走を<赤錆>に差し出す。
後に、柴垣家が武骨だが付き合いが難しい鬼達にパイプを持つきっかけに、彩の馴れ馴れしさでなるのだから、どこで世の中が変わってくるのか分からない。
「じゃあ、私達もいただきましょうか」
間宮さんがそう話したので、公安の部下の天狗さん達も舌鼓を打って笑いながら食事が始まった。
「それにしても、わしは食べれないからのぉ」
「神棚に捧げものをすれば頂けるのでは? かぐや姫様も<婆娑羅>様も重箱を作って神楽耶様にお渡しするのでお召し上がりくださいませ」
などと柴垣大輔さんが市長をやっているだけあってそつがない。
「ありがとうの」
「かたじけないな」
などとかぐや姫も<婆娑羅>様も喜んでいた。
「まだまだ、作らせますんで、ドンドン食べてください」
などと誠が彩と一緒に<赤錆>さんと話す。
さすが、柴垣家だ。
こうやってパイプは作られていくんだろうな。
思わぬ侵入だったが、まさかの展開で宴もたけなわという感じであった。
「で、姉さんは? 」
「いや、追っかけて行ったから、結構、彼女はずーっと追うから、まだ捕まらないんでしょうね」
「捕まるの? あれ? 影法師って確か……」
「式神が付喪神になった奴よの。隠密に動いて、逃げ足が速い。なかなか、侮れん奴ぞ」
「あれを使うから厄介なんだ。入れない場所でも入ってきて、情報を盗むからな」
などとかぐや姫様と<婆娑羅>様が愚痴る。
どうやら、御前だと思うが、不死という噂の通り、昔々にいろいろあったようだ。
そんな神様でも先々代の妖の王でも大変な相手を孫の俺に振るとかあんまりだろ。
つくづく手段を選ばないというか、何というか……。
腹立たしい限りだ。
そう思いながら大皿の綺麗に並べられた叉焼をパクついた。
「ようやく、ここに決めたようだな。よしよし」
などと良く知っている声が隣からする。
横を見たら、いつの間にか律蔵爺さんと柚婆さんがしれっとテーブルの豪勢な料理を食べていた。
「いやいやいや、いつの間にっ! 」
俺が騒ぐ。
「わしらはかぐや姫様と直結の神様である<愛鷹>様と<犬飼>様の加護を得ている。かぐや姫様が力を振るわれたら、それは場所まで分かるからの」
「いや、招待されてないのに? 」
「参加して構わんと言われたが? 」
などと爺さんが柴垣大輔さんを見た。
そうしたら、にっこり微笑んでこちらを見た。
柴垣大輔さんというか柴垣家の懐が深すぎる。
申し訳ないので、頭を下げた。
爺さんも婆さんもそう言うの無しで食べるのに集中していた。
「へー、凄い戦いだったんだ」
「その時の傷がこれじゃ! 」
などと彩が感心しながら<赤錆>さんと盛り上がっていた。
あのあたりが彩の爺殺しなんだよな。
<赤錆>さんが大喜びで話しているし。
まあ、でも、良いか。
最初は怯えていた柴垣家の妖達もその話に参加していた。
こういう皆でわいわいって両親が異界でいないから、俺は嬉しい。
「ああああ! 私の歓迎会じゃないの? 」
などと結局影法師に逃げられてしまった陽菜さんが皆でわいわいやっているので、叫んでるが無視されていた。
「ふふふ切ないの」
などと爺さんが横で呟くからイラっとした。
どっちかってーと、アクションよりも、ほのぼのを書くつもりで書いてます




