第九部 柴垣家 第六章
「誰か呼んだんですか? 」
俺がそう聞いたら、陽菜さんも間宮さんも首を振った。
「誰が来たの? 」
「誰が来たんです? 」
誠と柴垣大輔さんが心配そうに聞いた。
「鬼だよね」
「多分。<赤錆>さんかな? 」
などと香織と彩が言い切る。
逆に、彩が<赤錆>さんと特定しているのが凄い。
普通の人間なら分かんないよね。
「どうしたんでしょうね? 」
「一応、部下がいるので、本人から話を聞いていると思いますが……。多分、<凶>の話ですかね? まだ公安で拘置してますんで? 」
「ええ? あんな状態で? 」
俺が驚く。
本当にボロボロの雑巾みたいになっていたからだ。
「え? まさか、記憶があるんですか? 」
「ぼろ雑巾みたいに横たわっているのは……。いろいろとあったのは全然記憶がないです。俺が気絶して横たわっている時に、少しだけ記憶がありまして……」
「あらら。気絶した後ですか? 」
「ええ、暴走したらしいってのは全然記憶にないです。ただ、その時に気絶して横たわっている時に、かぐや姫様と<婆娑羅>様と間宮さんとうちの爺さんがいろいろと込み入った話をするのが聞こえて」
「ああ、爺さんが脅してたんだ」
「まあ……そんな感じで……」
あまりにストレートに言っちゃう陽菜さんに困ってしまう。
ああいう状況でえげつないことをするのが爺さんだし。
「まあ、今、妖用の病院に入院してますよ。それは確か<ひとつ>さんの派閥には連絡しているはずなんですが」
「しているはずです」
などと間宮さんが言うと部下の方がそう話す。
ならば、何で来たんだろう。
「あの人は意外と良い人だよね。あ、妖か……」
などと彩が言い切ってしまう。
薙刀を貰ってから、鬼さんの評価が高いから困る。
「どうしましょうか? 」
柴垣大輔さんが説得に行こうと立ち上がる。
「いや、私が行きましょう」
そう間宮さんが立ち上がった。
ちらと陽菜さんを見ると行く気ないみたい。
「何か言いたそうね」
「行かないんですか? 」
「うちはあまり妖と仲が良くないからね」
「自衛隊は敵ってみなしている妖が多いにゃん」
などとミケが横から言ってくる。
「私が行こうか? 」
「いや、関係ないじゃん」
彩がそう言うので止める。
関係ないのに行ってどうするんだか。
どちらかというと、あまり強くないからか柴垣家の妖達がさわさわと騒いでいる。
鬼はやはり怖いらしい。
それで間宮さんが向かっていった。
説得するつもりらしい。
「多分、神楽耶に会いに来たんじゃないの? 」
「何をしに? 」
「よく<凶>を破ったなって言って」
「ああ、そういう感じだと私も思う」
「私も」
彩の話で、陽菜さんと香織が頷いた。
「仲間をやったのに? 」
「死んでるわけじゃないし、正直、良くも倒せたなって賞賛だと思うけどね」
などと乾杯もちゃんとしてないのに、早くもテーブルの上のご馳走をもぐもぐと陽菜さんが食べ始める。
自由すぎるな。
そうしたら、一斉に柴垣派の派閥の妖達が食べ始めた。
「乾杯してないのに」
「いや、食べていただいて結構ですよ」
などと市長の柴垣大輔さんが笑った。
「ちょっと! 待ってください! 」
などと間宮さんが叫んでいた。
それで妖達の箸が止まる。
ドカドカと廊下を歩く音がするから、強引に入ってきたらしい。
それで襖が開いた。
間違いない、<赤錆>さんだ。
本当にあの格好だ。
どうやって、街を歩いてんだろう。
「どうやって、その恰好で歩いて来て目立たないんだろうとか思ってない? 」
などと陽菜さんがズバリと突っ込んできた。
「鬼の隠れ蓑があんのよ。あれを付けていると妖じゃないと見えないの」
などと香織が教えてくれた。
言われて見たら、背中にちょこんと小さい蓑がある。
「あんなもので消えるんだ」
などと彩が驚いている。
それで見えている時点で彩も特別って分かる。
「私達も姿が見えているから、そういう事よね。彼女って」
などと陽菜さんが俺の気持ちを察して突っ込んできた。
やはり彩も血筋なんだろうなとしみじみ思う。
「神楽耶だったかな? 本当に<凶>を倒したのか? 」
「だから、かぐや姫様が倒したと言っているじゃないですか! 」
「かぐや姫は無力化できても、あんなボロボロにできるかっ! 」
<赤錆>が叫ぶ。
ごもっともである。
「ふふふふふ、私が倒したのよ」
などと誰が言うのかと思えば彩が立ち上がって宣言した。
おいおい。
なんでやねん。




