第九部 柴垣家 第五章
と言う事で闇鍋は無くなった。
うまいご馳走を食べたくて、皆で奥の準備された部屋に行く。
すでに料理は並べられていて、凄く豪勢だ。
いくつも大皿が並び、船盛まである。
ミケが感激のあまり飛び跳ねていた。
「こんなご馳走をいただいていいのかな」
「これでも、こないだの歓迎会の方が倍以上のご馳走だったよ? 」
「え? 私が来るのって、そんな扱い? 」
「いや、十分じゃないですか。こんなご馳走見たこと無いですよ」
陽菜さんが少しムッとしていたから俺が突っ込んだ。
「逆に闇鍋を食べてる可能性もあったんだから、こっちのが100倍良いでしょ? 」
などと彩が突っ込む。
それにしても柴垣家の伝統の闇鍋ってなんなんだ。
すごく不思議に思ったので聞いてみた。
「というか、闇鍋って? なんで柴垣家の伝統? 」
「ぶっちゃけ、高祖父がね。熊本で半端な妖として妖達に虐められてたらしいんだ。それで闇鍋で食べれないものを食べさせられたりして凄く辛かったらしい。それを忘れないようにって曾祖父とか子供の時に無理矢理食べさせられてたらしい」
「え? 」
「そんな話なの? 」
などと陽菜さんまで驚いている。
いや、そんな話なら強要したりするのは良くないのではと。
「だけど、それを忘れないって闇鍋でくやしさを思い出して、それを伝統とやり続ける事で上京してから頑張って、この妖の城のある土地に来て、妖の派閥を立ち上げてって感じで、いつの間にか屈辱の歴史だった闇鍋が、柴垣家の誇りみたいになっちゃって、今ではその話も忘れられて、単なる宴会芸になっているけどね」
「うわ、臥薪嘗胆か」
「そうそう。それで、一応、派閥の皆は宴会芸としてやっているけど、うちの家族だけは、こういう苦しみの中から皆で柴垣家は頑張ってきたんだから、それは忘れるなよって教えられる」
「良い話ですね」
俺が市長の柴垣大輔に話を振った。
「まあ、くやしさってのはエネルギーになりますから」
そう市長の柴垣大輔が笑った。
皆が苦労しているんだよな。
こういう話は良い。
少なくとも、祖父の話を聞くたびに嵌められたとか聞くよりは良い。
「妖は皆いろいろありますからね。特に妖の城が無くなってからは大変で……。是非とも我が君はそういう妖達の心を汲んで貰いたい」
などと間宮さんがぐいぐい来る。
「……ひょっとして、仲間にお金の使う用途が違うって責められてますか? 」
「いや、そういう話でなくてですね」
「もしも、俺が妖の王にならなかったら、どうするんだ? とか言われてます? 」
「いや、間宮殿は一応、政府筋の公安の妖のトップだから」
などと、そんなことはないって柴吉に突っ込まれる。
「じゃあ、陰口をたたかれているんですか? 」
などと言うと間宮さんの顔が歪む。
言われてんだ。
非常に申し訳ない。
「いや、お爺さんに似ているって言われるの、そういうとこじゃない? 」
などと爺さんに似ている陽菜さんに言われる。
「そうか……この突っ込みがいけないか……さすが陽菜さんだ。爺さんと似ているだけはある」
などと言いながら俺も苦しい。
陽菜さんもまたしても似ていると言われて悶絶していた。
「これは……互いに傷つけあって意味があるの? 」
「多分、だから性格だという事では? 」
などと誠の言葉に彩が答えたので、俺と陽菜さんが呻く。
彩の言葉は結構効くからな。
ストレートだし。
「なんか、おかしなことになってますね」
などと間宮さんが苦笑した。
「いや、悪いと思ってんです。真面目に」
「そう、我が君に言っていただけるだけでうれしいんですけど」
「その我が君ってやめませんか? 」
「いや、妖の王になったら、全員がそう呼ぶよ? 」
「はあああああ? ええ? 本当に王みたいになるの? 」
「当り前じゃないですか」
「ええええ? 自治区なのに? 」
「形だけですから、自治区は……。時代に合わせて、そうなっただけですよ」
真面目に引くわ。
そうしたら、ぞろぞろと妖が奥の部屋に集まってきた。
えええええええ?
派閥の妖を呼んでいるやんかぁぁぁ!
あまりの行為に吐き気する。
やっぱり、嵌められたのか?
公安の間宮さんの部下も10人くらい参加してきた。
「では、そろそろ神楽耶様の派閥に選ばれた事を祝って、皆で乾杯といきましょうか? 」
などと柴垣大輔さんが音頭を取った。
「あれ? 私の歓迎会だったのでは? 」
「いや、お姉は空気を読もうよ」
などと陽菜さんが不満を漏らすと、香織が必死に止めている。
「それよりも……」
俺が外に目を向けた。
どえらい妖が来ている。
最近、かぐや姫様のおかげで本当に敏感だ。
「あらら? 」
などと陽菜さんも間宮さんもそちらを向く始末。
厄介な妖まで来ちゃった。




