第九部 柴垣家 第四章
「それって美味しいの? 真面目に大食い大会とか言うんじゃないよね? 」
彩が誠に聞いた。
「ぶっちゃけ、闇鍋だよ。交互に食べて、どちらが最後まで食べれるか」
「はあ? それって大食い大会じゃない」
「まあ、食べれるものを放り込むんだけど、どうしても異様な味になるのも出るし、そうなると、やっぱり、出てきたのが食べれませんて出るので……」
「それ大食いだよね」
などと彩が俺に聞いた、
「まあ、好き嫌いが無いなら、大食いだよね」
「まあ……そうなるけど、好き嫌いが無いってあんまりいないのでは? 」
「そうかなぁ? 」
「姉さん、好き嫌いだらけだよ」
「うん」
香織がそう苦笑したら、素直に陽菜さんが頷いた。
「じゃあ、勝てるし」
などと彩がやる気になった。
「いや、ひっかけだろ? 真面目に。香織が一緒に騙しているとは思わないけど、そういう振りをしているだけだと思う。陽菜さんが 」
「いや、真面目に好き嫌いが多いはずだけど……」
「凄いね。私の事を良く分かっているじゃん」
「はあ? 」
香織が知らなかったらしくて、驚いている
「多分、綺麗だから、結構、いろいろと誘われるんじゃないの? それをその食事が嫌いとか言ってわがままな振りして断ったりしているのでは? 」
「そういうのもある。いやぁ、凄いね。本気で、神楽耶君、私と結婚しちゃう? 」
バキって音がして、彩が敷いてある畳に一撃入れた。
「いや、わざとお前に言ってんだからさぁ。はめ込まれるなよ」
「なんで、そんなの分かるのよ」
などと彩に言うと口を尖らせた。
「一番の理由はからかわれてんだよ。それと、将来的に彩が自分とやり合うくらい強くなるかもしれないから、今のうちにやり込めたいのかも。無意識にだろうけど、苦手意識を植え付けたいんだ。さっきから、そうだろ? 」
「はあああああああ? 」
彩も驚いているけど、陽菜さんが凄く驚いた顔で固まっていた。
「多分、下の妹と同じ年齢だから、ガツンとやると問題になるから、じわじわ無意識にはめ込んでんだよ」
「な、なんで、そう思うの? 」
「うちの爺さんなら、そういうやり方するからさ」
「ああ、なるほど」
などと彩が納得してしまう。
「え? 」
「はっきり言うけど、うちの爺さんに似てますよ」
そうしたら、陽菜さんが固まったまま呻いている。
「ほら、やっぱり効くんだよ。俺も爺さんそっくりとか言われるとマジで死にたくなるから」
などと俺が苦笑した。
「本気でやばいんだね。あのお爺さん」
「碌なことしないもの」
「おねぇもさ。彩がやるからと言って、そこまでしないでも……」
「いや、普通なら、これだけ年齢差あって、実戦の差もあるのに、彩は負けたら悔しがって泣くからさ。こういうのは監視対象としては、早いうちに心を折っておかないとってのは思うんじゃね? 」
「普通は思わないと思うけど」
「そういう考えもお爺さん、そっくりだよね」
誠と彩の素直な意見で俺も嗚咽を漏らす。
やっぱり、キツイ。
爺さんに似ているって言われるのキツイ。
「不毛な事しているな」
などと柴吉が口をもぐもぐしながら奥からやってきた。
巨大な狼の姿のままだ。
フェンリルと言われても、そう思うかもしれない。
「あ、なんか食べている」
「おいしそうな食事だったので、一部屋敷の方に先に食べさせて貰った。旨いなぁ。柚さんの家庭料理も美味しいが、やはり、こういうご馳走もたまには良い」
「あーあーあー、先に食べたぁぁぁ! 」
「龍二さんを運んで行ったら、お礼に大きな一皿に茹でて味付けした肉を貰った」
柴吉がふふんって感じで喜んでいた。
「で、どうするの? 闇鍋? 」
誠が聞いた。
もう柴吉のとろけそうな顔を見て、彩の気持ちが変わったのだろう。
「美味しい方を食べる」
「じゃあ、中止で」
誠が屈託なく笑った。
「律蔵さんに似ている……律蔵さんに似ている……律蔵さんに似ている……」
何だか知らんけど、よほどショックだったのか陽菜さんが真っ暗になって呟いていた。
まあ、俺もショックだけどさぁ、そういうの意識してなかったんだな。
「なに、やってんですか? 」
などといきなり、間宮さんが来た。
うわ、呼びやがった。
マジでか。
「せっかくですから、皆でやりましょう。今日は派閥の推しになっていただくようになったわけですし」
などと柴垣大輔さんが嬉しそうに話す。
「いや、1日仮派閥です」
そう俺が言うが聞いちゃいない。
「ああ、私もこの派閥が良いと思いますよ。で、なんで、渡辺姉妹の長女がいるんです? 」
「いや、爺さんみたいに俺が絡めとられまして……」
「ああ、そう言えば似てますよね。陽菜さん。律蔵さんに」
と間宮さんが言ったら陽菜さんが倒れた。




