第九部 柴垣家 第一章
「と言う訳で今日は柴垣家の派閥に関わるのかどうか、1日仮派閥という事でお願いします」
「いやいや、お姉さんがここに入れって言ってんのに分かんないの? 」
などとベタベタと俺に陽菜さんがするので、さりげなくローキックを彩が陽菜さんにいれるが綺麗に足の裏で受けられた。
いやいや、本気で戦闘慣れと言うか、喧嘩慣れしているなぁ。
空手とかだと、足の脛を固くして受けたりとかするけど、喧嘩屋は靴の裏をうまい事使うらしいから、こういうのがそうなんだ。
「離れろっ! 」
彩が怒鳴る。
「姉さんさぁ。彩を刺激しないで欲しいんだけど」
香織さんが必死に止める。
だが、からかって喜ぶタイプらしい。
止まらない。
そして、俺への頬ずりもだ。
「あの、一応、男なんですけど」
「だってお肌すべすべだもの」
「いやいや、おかしいでしょ。距離感が」
「こういうのって、意外と武道系の女子にいんのよっ! 」
彩が再度切れた。
「あー、そう言えばそうだね」
香織も納得する。
納得するなよ。
「まあ、奥で食事を準備してありますので」
などと柴垣大輔さんが上機嫌だ。
「あの、陽菜殿? あまり、神楽耶にベタベタしないでいただきたい。かぐや姫様も依り代にしていますれば」
柴吉がそう必死に頼む。
「いやぁ、それのせいもあるんだろうね。お肌がすべすべだもの。そうなっちゃったって事はそろそろ成長が止まって、この姿のままだよね、良いなぁ」
全然、陽菜さんが止まらない。
酒も飲んで無いのに、本気で俺にベタベタする。
「こんなに美少女なら独り占めしなくても良いじゃん」
陽菜さんがそうやって口を彩に尖らせる。
覇王如月として常に武力で俺にベタベタするものを撃破してきたのだろうけど、自分より強い人は初めてなのだろう。
「ごめん。姉さんは耽美系が好きだから」
「耽美系? 」
俺の方が声を荒げてしまう。
「気に入られているみたいですね。渡辺陽菜様はうちに何度か来ていらっしゃいますが、こんなのは初めてです」
市長の柴垣大輔さんが苦笑していた。
「すいません、騒がしくさせて」
「良いんですよ。それよりも本当にうちの派閥の推しの妖の王になってくださるなら、本気で我々は嬉しいです。曾祖父の恩人でもありますし」
「いや、まあ、多分、ここしかないんでしょうね」
「そのとおおおりっ! 」
などと陽菜さんが叫ぶ。
「だから、神楽耶にすりすりすんなっ! 」
彩がブチ切れた。
こっちは修羅場で柴垣家は喜んでいて、何というか、こんなのばかりだな。
「真面目に、柴垣家の派閥は御勧めにゃん」
「いや、自衛隊と関係しているのが、どうのって言ってたじゃん」
「ネズミをかみ砕いて口に突っ込んでた事で、どこもドン引きして私を仲間に入れてくれないにゃん。ここだけが暖かく迎え入れてくれたにゃん」
などとミケが世知辛いことを話す。
まあ、妖術使わずに力業と言うのはどうしてもそういう風にみられるんだろうなと。
ミケの頭が良いのはたしかなんだろうけど。
「まさか、神楽耶も来ると思わなかったからさ。電話で話したら衆議院議員の祖父がそれなら地元にいれば良かったって残念がってたよ」
「ああ、議員さんは大体、東京だもんね。地元は奥さんがするんだろうし」
「そーそー。こないだ歓迎会出来なかったから、凄くがっかりしてたよ」
柴垣誠が苦笑した。
「まだお試しだけど」
「無理無理、だって私が推薦してんだもん」
などと陽菜さんがすりすりしながら脅す。
彩もキレてるし。
「ちょっと、おねぇ? やめてよ。彩がキレて止まらないし」
「だって、すべすべなんだよ? 」
「いや、絶対、からかっているでしょ。彩の事っ! 」
その度に彩がパンチとかローキックをする。
結構、威力が上がってんのが見てて分かる。
「いや、彩の攻撃力が上がるので楽しんでんでしょうが、そろそろ笑えなくなりますよ? 」
「確かにねぇ」
手のひらでパンチを受けてたが、その手をひらひらさせる。
手のひらが腫れてきたらしい。
つくづく何気にこうやって能力が上がるんだから、真面目に彩は普通の人間ではなく特別なんだろうなと。
「よし、じゃあ、ここはアレで決着をつけるか? 」
などと陽菜さんが不穏な話を始める。
「決着? 」
「柴垣家、伝統のあれだ」
「ああ、なるほど。でも、如月さんに不利じゃないですかね? 」
などと誠が答える。
なんなんだ、伝統のあれって?
話を聞いていて、不安になる。
「いや、招待された側が強要してどうすんの? 」
などと今度は香織が本気で怒りだした。
「何をするのか知りませんが、その通りですよ」
などと俺も同調しておく。




