第八部 渡辺陽菜 第九章
「いや、どういうこと? はああ? <凶>とやり合った? ええええええええ? 」
後ろで聞いていた柴垣誠と市長の柴垣大輔が唖然としている。
「ど、どうやって? どういう風に? 」
如月彩の目が輝きだして、喜んでいた。
まあ、こういう子だよなぁ。
「へええええええ? それは参考になるわね。教えてほしい」
「……言いにくいんですが……」
「良いじゃん。私は貴方達推しだから、味方だと思ってくれていいよ。安心して。だから、うちの爺さんも校舎の破壊の件は誰にも言ってないし、政府にも内緒にしているよ」
「はああああああああああ? ガス爆発じゃないの? 」
「いや、聞いている話と違う」
などと渡辺陽菜さんが言っちゃうから、柴垣誠と市長の柴垣大輔さんが動揺していた。
まあ、動揺するよな。
「ええと、溝口有希という友達の身体に<凶>が入りまして……」
「溝口有希? ああ、確か県警本部長の孫よね。あいつらしいわね。嫌らしい手を使う。目標の親友で女の子で公安の間宮さんとかが手を出せない奴に入って、攻撃するとか」
「ええ、それで、そうやって笑っているとこをさっき陽菜さんにやったみたいに、彩が全力で回し蹴りで振りぬきまして」
「えええ? あれ、私だから止めれだけど、普通の人間なら下手したら死ぬクラスだよ? 」
「ええ、それで、さらに連打連打でパンチを浴びせて、顔が変形してきて……」
「はあああああああああああああああああ? 」
柴垣誠が凄い顔している。
「し、死ぬじゃん」
「うん、そう言って、君が必死に止め始めたけど、そうしたら、滑り込むように避けてハイキックを……それで倒れ方が悪くて腕が折れて身体が動かせなくなって、まともに動けなくなって、仕方なしで<凶>は溝口有希の身体から出てきました」
「ええええ? 」
その時の彩と陽菜さん以外の凄い顔は一生忘れないと思う。
ミケは毛を逆立てたままだった。
「あー、私なら、やっちゃうかも。師匠に徹底的に喧嘩は避けろ。だがやると決めたら徹底的にやれっていつも言われているからさぁ」
「それ言ってた。その時に」
「それに身体が動かなくなれば出てくるはずって……」
「それも言ってた」
「有希が死んじゃうでしょうがっ! 」
「うん、それも香織は現場で言ってた」
香織が同じように突っ込んでくるんで言った。
結局、変わらんのだな。
「鎌倉武士みたいだね」
「それも<凶>が言ってた」
「ええええ、照れちゃうなぁ」
などと如月彩が照れるから、陽菜さんと俺以外ドン引き。
それは彩とか陽菜さんにとって誉め言葉になるんだ。
困ったもんで、陽菜さんは誉めているような顔だった。
ここだけ時代が違わねぇかな?
「それで記憶が無くなったのは? 大体想像がつくけど」
「爺さんが間宮さんを脅して神宝で」
「天狗の? はぁぁぁぁ、間宮さんも危ない橋を渡るわね。まあ、うちもうちの爺さんも君の事を政府には報告してないから、結構、危ない橋を渡っているのよね。だから、柴垣家は喋らないよね。この話。情報通は良いけど、他所でしゃべったら、うちと公安を敵に回すよ? 」
などと陽菜さんが柴垣誠と柴垣大輔を微笑みながら脅した。
こえええええええ。
「わ、分かっております。ご安心ください」
市長の柴垣大輔がそう縮こまるように頷いた。
妖と戦う部隊だと言うから、怖いんだな。
「で、どうしたの? 神楽耶はいきなり……」
柴垣誠が恐る恐る俺に聞いてきた。
「私が連れてきたのよ。ここの派閥に世話になりなさいって」
「えええええええ? 」
「律蔵さんも勧めているんでしょ。ぶっちゃけ、公安の間宮さんもこことつなげる方向だし。変なのが派閥でつくと大変だよ? いろんな面倒事の処理で忙殺されちゃうから。その点、ここは柴垣家が処理するから一番楽だし」
などと流れるように陽菜さんが説明する。
「ああ、つまり、ここで、秘密の話をしたのは柴垣家の派閥と共通の秘密を持つことで逃げれなくするためですか? 」
やられた。
うちの爺さん並みのやり方だ。
情報通って事は他所に漏れる可能性もあるし、それを自分が関与する事で秘密の共有をさせて、この派閥にくっつける気か。
「うふふふふふふふふ、やっぱり、頭が良いし、美少女だし、それで男の子ってイイネ。もしなんだったら、渡辺家初だろうけど、私も妖の子を作っても良いよ」
などと陽菜さんが俺に抱き着いてきた。
そうしたら、ブチ切れた彩が渾身の力で陽菜さんを殴る。
「あたたたたたた。凄いね。ここまでパンチ力が上がるんだ」
などと彩がからかわれた様だ。
あっさり、彩の渾身のパンチを手で受け止めて陽菜さんが掴んだ。
「あなたがいるなら安心ね。神楽耶の事は頼むわよ」
そう丸め込むように彩に話す。
まあ、彩は睨んだままだけど、柴垣誠も柴垣大輔も渡辺香織も啞然としたままだ。




