第八部 渡辺陽菜 第七章
そういう訳で、一緒に柴垣家に行くことになった。
なんでも自衛隊の情報保全隊の方から情報交換とともに今後について話し合いをする予定らしい。
「こういうのって、もっと上の上層部の人がするんじゃないんですか? 」
「一応、私三等陸佐だよ? 」
「はあああ? そんな若くて? 」
「いや、もはや妖の城が無くなって、妖と戦える異能の人間が少ないのよ。実際、うちの妖トップは私の爺ちゃんだしね。それで行くのが面倒くさいからお前がしろって言われて来たんだけど。普通の人間の自衛隊の幹部は妖なんて分かんないから、妖特科に全部振るのよ。わかるでしょ? 」
「ああ、市役所なんかである、担当に振っちゃうって奴ですね。よくある市役所とかでNPOとかと密接な市の現場担当者に良く分からないからという理由で上が任せきっちゃう構造と同じって事ですか? 」
つまり、そういう人がいろいろと背景を持った人だと生活保護とか補助金とか国が出したのを、その人の裁量で全部仲間に配布して、それ以外になかなか行かないみたいな構造なのだ。
もちろん、ちゃんとしている所も一杯あるけど、やばいところはやばいところで仲間内で予算を使いきっちゃって、それで窓口で相談に来た普通の人を追い返したりってある。
中間管理職の人や上層部が詳しい人なら良いけど、詳しくないと面倒くさがって全振りしてしまう構造が悪いのだが。
お役人さんというのはそういうものである。
だから、実は窓口を仕切っている人がそれらを受ける為のラスボスだったりしたりして、本当に困っている背景の無い人は見捨てられたりする。
ある意味怖い話なのだ。
「本当に、16歳? 香織も頭が良いとか言ってたけど、そういう部分は大人にならないと知らないでしょ? 」
「爺さんがあまりにいろいろしないので、俺に振ったりして、そういうのをやらされてたから」
「未成年でしょ? 」
「でも、窓口は話をしてくれましたよ? 」
「ああ、そうか。小さい時から妖の王の候補として見られていたからな。それでT市は妖が多いから、特別扱いという事かな? 」
「そういう意味だったら、多分、小さい時に経験させようとしたかったんじゃないかな? 言われてみれば、別にそういう話をしに来たのではって話を懇切丁寧に一緒に教えてくれたりしたから」
「はぁぁぁあぁ。凄いね。うちの香織も少しは影響を受けてればいいのに」
「いや、この子が特別じゃから」
「豊臣秀吉と比べてもそう思うの? 」
「え? 」
びくっとして柴吉が固まる。
あまり言わないようにしてたから、自衛隊の保全部隊に知られているのが衝撃だったらしい。
「あの、本人は豊臣秀吉は失敗したって思っているから……」
「ええええ? やったことは仕方ないけど、あれほどの人物になるように誘導するなんて凄いでしょ」
「まあ、俺もそうは思いますが……」
「まあ、いろいろな見方はあるけどね」
そう陽菜さんが笑った。
香織に似ているなぁ。
「うちの神楽耶は非道な事はしません」
「でも、律蔵さんの孫だから、今までを見た限りでは、似てるからなぁ」
「祖父が非道な事をしたんですか? 」
「いや、目的の為には手段を選ばないでしょ。ああいうタイプは本来超えてはいけない一線を平気で越えてくるからね。そういう形質は心配ではあるのよ」
「じゃが、頂点に立つものは一線を超える覚悟はいるべきだ。戦うときに躊躇して仲間を殺させるようなものには上に立つ資格はない」
珍しく柴吉が強く言い切った。
それで陽菜さんが微笑んで頷いた。
「まあ、私は君は頭が回るし、本人はやりたくないって言っているし、そういう風に一線を超える覚悟も持っているなら、歓迎するよ。これからは戦乱の時代だしね」
「世界がですか? 」
「だって、経済ショックから、そこからマネーサプライを増やして景気回復して、その結果デフレ。そして、その後は保護貿易のブロック経済っていつもの流れでしょ」
「世界大戦の流れですか? 」
「その通り」
「確かに日清、日露までは妖が結構戦争に参加した噂がオカルトではありますが……」
「噂じゃなくて、実話よ。そこまでは良かったけど、三代目の妖の王が倒れた事で世論とかのコントロールがうまく出来なくなった。メディアもマスコミも当時は戦争を煽ったからね。現場の軍部ではどうやっても負けるってシュミレーションが出てたのにね」
「妖が世論コントロールしてたんですか? 」
それで俺が驚いた。
知られざる話だからだ。
「そうよ。それが異様な方向に流れるようになった。何かが邪魔していたんだと思う。それと戦うのは寿命が近く病気になった三代目の妖の王には無理だった。だから、日本は勝つはずの無い戦いに突入したのよ」
「うえええ」
知らんかった。
*この話はフィクションです




