第八部 渡辺陽菜 第一章
家に帰ると、またしても爺さんはいなかった。
勿論婆さんもだ。
孫の身体を妖の複合体にするとか、御前の事を批判できないだろうに。
大体、なんなんだよ。
というか覚醒時に暴走したのって、複合体の副作用じゃないよな。
などと暗い居間でテーブルの椅子に座りこんで頭を抱える。
「今日からまた如月家でご飯とか食べてくださいって置手紙が……」
「またかよ」
今日は慌ててたので食事の用意が出来なかったらしい。
「隠れたって結局は一緒なのにな」
「多分、隠している事があるから、それを追及されないためにやっているんだと思うけどね」
などと彩が言うが実は俺も同意だ。
「そうだろうな。どんだけ黙って騙してんだか」
「誰か相談できそうな人とかいるかな? 」
「間宮さんは爺さんに翻弄されているくらいだから相談できないし」
「ならば柴垣家に相談してみたらどうだ」
真っ暗な中に柴吉が居て、そう話しかけてきた。
「いや、お前が喋ればいいんじゃないの? 」
「そうだよ、あんたが喋れっ! 」
俺が突っ込むと同時に彩が柴吉の頬をいつものようにぴょーんと引っ張った。
「いや、わしは申し訳ないんだけど……」
などと柴吉の目が泳ぐ。
「ああ、爺さんが何らかの喋れない呪術とか使ってるって事か? 」
それで俺が察して聞いた。
そうしたら、柴吉が頬を彩に引っ張られながらコクリと頷いた。
やっぱり、身内に近い柴吉にも対処しているのか。
つくづく爺さんがタチが悪い。
「それにしても誠に聞いた方が良いのかな? 」
「比較的に性格は良いし、いろいろ把握しているから確かに良いかもね」
「ただ、爺さんがお勧めの派閥なんだよな」
「そこだよね」
などと俺と彩が二人で考え込んだ。
今日は学校は午前中で掃除と授業スケジュールの話だけだったから時間はある。
「柴垣家の派閥が良いと思うにゃん」
などとしれっと奥にミケがいる。
「いや、お前も爺さんの部下みたいなもんじゃん」
「それは社を建てる為にゃん」
「自分の欲求に素直すぎるよね。御馳走が食べたいだけじゃないの? 」
彩が突っ込むと少し毛が逆立つ。
そうか、御馳走が出ると見ているのか。
糞だな、こいつも。
「でも、にゃん。こう見えて、私は自分の安全を第一に考えるにゃん。だから、柴垣家はお勧めにゃん」
「どういった意味でだよ」
「弱者の派閥で無理矢理が無いにゃん。それで、温厚な柴垣家が仕切っているので無茶苦茶な話も無いにゃん。妖の弱者だけに、団結を大事にするにゃん。そして、政治家にゃん」
「顔が広いと言いたいの? 」
「それだけじゃ無いにゃん」
「ああ、やばい事やったら政治一家が駄目になるから、しないと言う事か? 」
「妖の政治家だから、人間の政治家と比べてある意味弱者にゃん。だから、下手に目立つような悪い事も出来ないし、見つかれば逃げる場所も無いにゃん。柴垣家はそういう厳しい状況を乗り越えてきた一族だけに、そういう見極めは凄く優れているにゃん」
「なるほどな」
「伊達に私も逃げる事は得意にしてないにゃん。だからこそ、逃げ込むならあそことか、そういう意味で普段から考えてはいいるにゃん」
「てことは、ミケの派閥は柴垣家のグループなんだ」
「にゃにゃにゃにゃっ! 」
図星を突かれてミケが毛を逆立てた。
何のことは無い、派閥が同じなのだ。
ただ、ミケの逃げると言う意味合いの動きは爺さんに似ている。
逃げ場の確保は大事だから、そういう意味では参考になるとは思う。
「柴垣家に行ってみる? まだ時間あるから。昼ご飯はパンでも買って食べれば良いし」
「そういう事なら、わしが案内するぞ? 」
などと柴吉まで言い出した。
「……? あの家、変に小道の奥に会ったけど、あれ呪術で……例えば奇門遁甲みたいに普通なら迷っていけないようになってんの? 」
「よくわかったな。爺さんがそうやって呪術をかけて、なかなか入れないようになっている」
「昔から関係が深かったんだ」
「爺さんは他所の派閥とも関係はある。だから、こないだ柴垣家をお前が断ったと見て、こちらに介入しようとして来てたろ? あれも爺さんの関係からだ。まあ、公安の天狗が出てきたんで、今は政府筋に絡めとられたって言われてるみたいだがな」
「なるほど、そう考えると、真面目に柴垣家以外は難しいのかもしれないのか」
「それはしょうがないにゃん。実際、主は政府に絡めとられてってあちこちでいろいろと言われているというのはあるにゃん」
「政府と妖と言うのは、ある意味緊張感のある関係だからな。そりゃ、どこの妖も警戒するのは仕方ない。政府もそんな特殊な力を持っている者に対しての恐れもあるし」
柴吉が言う通りなのだろう。
まあ、俺としたら変な派閥の誘いが無くなってよかったと思うけど。
今日からベースの投稿は午後6時にします
やっぱり午後5時に戻します
誰も来ないよぅ




