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第七部 覚 第四章

 恐ろしいと言う形容詞しか頭に浮かばない。


 この人は危険だ。


 表情は柔らかいままだし、優しく微笑んでいるけど、凄く恐怖を感じる。


「神楽耶? 」


 如月彩が俺を心配そうに見た。


 彩はそこまで感じていないらしい。


 力を隠蔽しているのかな? 


 でも恐怖が止まらない。


 こんな恐ろしい人は初めて見た。


「ちょっと保健室で休むか? ガス爆発に巻き込まれて意識を無くして2日間寝たままで、もう1日休みなさいと言うのに、無理して学校に来たんですよ」


 などと爺さんがそうほほ笑んだ。


 それを見て理解した。


 俺がこの人……いや妖の恐ろしさに気がついているのを察したらしい。


 近くに居させたら駄目だと思ったようだ。


 それで、彩が即座に俺をお姫様抱っこで抱きかかえて保健室に走っていく。


 いやいや、これじゃ無いだろと突っ込みたいところだが、俺にはその余裕が無かった。


 とにかく、この一条覚から離れないとと言う気持ちで一杯だった。


 なんと言うか、心を覗こうとしているように見えた。


 強引に心を開けようとしている感じがしたのだ。


 だから、その握手が怖かった。


 さらに、かぐや姫が、俺の心を守っているようにも見えた。


「彼……凄いですね」


「いえいえ、まだまだ子供ですんで……」


 爺さんが柔らかく笑った。


 というか、そうするしかなかったんだろう。

 

 彩にお姫抱っこされて離れながら思う。


 心で舌打ちした。


 思わず恐怖で握手が出来なかったのだが……。


「これで警戒されたかも……失敗したかな? 」


 俺が囁く。


「やっぱり……やばいんだよね」


 などと校舎の中をお姫様抱っこされながら彩が走りながら囁いた。


「あんな怖い人を初めて見た。あれは怪物だと思う」


 もう離れているから、素直に答える。


 それにずっと一緒にいるから、俺の心を彩が察せるのは知っているから隠す方がおかしいし。


 とりあえず、保健室に彩に抱かれたまま入った。


「尊い」


 などと保健の先生がそれを見て呟くので、ちょっと悲しい。


 それで、保健の先生に頼んで、ベットに寝させて貰う。


 いや、別にベットはいらんのだけど、彩がそうじゃないと俺を降ろさないって感じなので、仕方ない。


 それから、保健の先生に頼んで、ここで休むので担任の先生に伝えて貰って今後の高校のスケジュールの方は後で教えてもらう事にした。


 一条覚がいる間はここから出ない方が良いかなと思う。


「え? 私は神楽耶を見守ってますから」


 如月彩だけでも授業に行かそうとして保険の先生が話すが、彩は首を左右に振るばかりだ。


「尊い」


 などとたまらないって顔で保険の先生が俺達を見ている。

 

 いやいや、こんな先生だったんだ。


 それで愛する二人を離す訳にはとか呟いて、保健の先生が強引に俺が保健室で休む話とともに担任の教師を説得して彩も残れるようになった。


 いや、愛する二人って言われて、ちょっと彩が嬉しそうだ。


 困ったもんである。


「大丈夫ですか? 」


 などと保健室に間宮さんが慌てて入って来た。


 お姫様抱っこされて保健室に走ったので、結構心配しているようだ。


「よく握手をしないで済ませたな」


 などと律蔵爺さんがいつの間にか間宮さんと一緒に保健室に入ってきて話しかけてきた。


「嫌な気配がしたんだ」


「彼はサトリだ。接触する事でさらに相手の心を覗けるようになる」


「やっぱり。俺の心を覗こうとしていたよね」


「それが初見で分かるんだから大したものだ」


「あれ、化け物だよね。<ひとつ>さんなんて目じゃ無いじゃん。あんな怪物は初めて見た」


「え? 何の話です? 」


 間宮さんが動揺して聞いてきた。


「あの人ですよ? 」


「覚さんがですか? いや、あの人は温厚で爽やかで……」


「サトリなだけでなく、精神コントロールが出来る。握手はその為のものだ」


「は? 」


 爺さんの言葉に間宮さんが動揺した。


「だから、お前が握手しなかったのは正解だ。彩ちゃんも気を付けてくれ。まわりをコントロールして抑えてくる可能性もある。やられるとまずい」


「分かった」


 爺さんがずっと真顔だ。


 爺さんが真剣な時は本当にやばい話だけだから、ずっと一緒の彩もそういう時は素直に聞く。


 だから、あの時に彩は即座に逃げたのだ。


「いやいや、何を言ってんですか? すでに妖の王の候補は降りていらっしゃいますし……」


「候補が全部死んだらどうなるんですか? そうしたら、降りた候補しか残らなくなるでしょ? 」


「え? 」


 間宮さんが絶句する。


「他に妖の王の候補が産まれないなら、そうするしかないですよね」


「どうかな? 妖の王に拘っていないかもしれんぞ? 」


「なるほど、操れるなら、そちらの方がやりやすいのか……」


 などと俺と爺さんが深刻な話をするので、間宮さんが動揺し続けていた。


 


 


 



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