第七部 覚 第三章
「あの……俺の気持ちは変わってません。妖の王には……流石にこれでは……」
ぶっちゃけて、俺が破壊された校舎を見ながら言う。
「ちっ! 」
「やれやれ」
などと露骨に<婆娑羅>様が舌打ちとかぐや姫様がため息をついた。
それで、間宮さんがたじろぐが、それでも笑ってくれた。
「いやいや、良いんだよ。もう話は進んでしまっているし」
「でも、簡単な暴走でこれですよ? 」
などと俺が正論で言いきっちゃうと、うって感じで詰まる。
多分、本音では同じ事を思っているんだろう。
「は? ええ? 何が? ええ? 」
彩が動揺している。
洗脳されているとは言え、それ以上に付き合いが長いので、俺が話している事を察したらしい。
破壊された校舎を見て凄い顔をしていた。
「余計な事を……」
などとかぐや姫様呟く。
「ああ、いや、もうとっくに絡めとられちゃってね」
間宮さんが力無く呟いた。
祖父の事だ。
もういろんな方面から多極的に嵌め込んだのだろう。
あれが祖父の本当の恐ろしさだ。
呪術も凄いのだろうけど、それは違う。
根回しと先に手を打っておく。
それで相手が動けないようにしてしまうのが祖父のやり方だ。
「今から、ぶっちゃけた話をしますね。祖父はカタに嵌めるタイプですが、名誉とかそういう世俗の欲は無いです。ぶっちゃけ、為すべきことを為すタイプで……ただ、その為には手段を選ばないだけです。だからこの話が不思議なんです」
俺が続けて話をした。
彩は横でいろいろ察してはいるものの……何があったか思い出せないらしくて、神宝の凄さが怖いが……首を傾げながらフリーズしていた。
ずっと一緒にいるから、俺の事で知らない事など無いはずだと言う事実があるからだろう。
「……それで? 」
「祖父は過去の事を話しません。ぶっちゃけ、誰か凄い人の下で働いていたのだと思います。心当たりはありますか? 」
「……どうしてそれを? 」
「呪術師なんて大体政治家とか財界の大物の下で働くもんですし。それに、あの顔の広さは、そこでいろいろとその時に培った人脈だと思います。そして、祖父が俺を妖の王にしようとしている事は……恐らくは、そこに何か理由があるのだと思う。何かを止めないといけないんです。祖父は……恐らく……」
俺がきっぱりと言い切る。
「ほぅ、それに気がつくか」
「武だけでは無い所が良いの」
などとかぐや姫様と<婆娑羅>様が納得したように嬉しそうだ。
などと俺の話で間宮さんが真顔で考え始める。
「言っても良いんだけど……律蔵さんに許可を貰わないで……と言うわけにはなぁ……」
「面白そうな話をしてますよね」
などと20歳後半くらいのお兄さんが話しかけてきた。
そちらを見ると教育委員会の中で若いのに中心的に動いていたお兄さんだ。
「これは一条様……」
「いやいや、いろいろと興味深くてね。始めまして、竹内神楽耶さん。私は一条覚と言います」
そう笑って俺に手を差し出した。
ええと、間宮さんが敬語なんだ……と思いながら、尋常ではない気配をその場で感じる。
何かと思えば一条さんが差し出した手からそれを感じた。
さっきまで、何も無かったのに。
「気をつけろ」
などと<婆娑羅>様が囁いた。
そして、かぐや姫様が守りに入ったような気がした。
それでせっかく差し出してくれた一条さんの手を握手する事が出来ない。
自分の中でいろんな警報が鳴っている。
「いやいや、困ったな。私は嫌われているようだね。私はすでに妖の王の候補は降りたんだけどね」
などと一条覚が笑った。
「いや、神楽耶さんはまだ16歳ですし、あまり一条様は刺激しないでください。この方は最初に覚醒されて妖の王の候補になったんだけど、降りられた方なんだ」
そう間宮さんが間に入って教えてくれる。
「降りた? 」
俺が不思議そうに聞いた。
「いやいや、私も<ひとつ>に襲撃されてね。あれは怖かったよ」
などと一条覚が笑った。
だが、胡散臭い。
この人は普通の人物……いや妖では無いと思った。
気配も異常だが、これならひょっとして<ひとつ>にも対抗出来たんじゃないか?
などと真面目に思う。
顔は非常に美男子で、教室で掃除を手伝っていた時も女子がキャアキャア騒いでるのがいたくらい。
そして、柔和で穏やかそうに見えるのに、なぜだろう。
全身が逆立つほどの警戒感を感じる。
「お久しぶりです。御前が亡くなられてから以来ですね」
いきなり、祖父の律蔵爺さんが俺の背後から声をかけて来た。
それで直感的に思った。
こいつかと……。
そうでないと祖父がわざわざ間に入らない。
ひょっとして、こいつを止めたいのではと爺さんの考えが読めた。




