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第六部 凶(わざわい) 第七章

「てめぇ、<赤錆(あかさび)>とかが騒いでいる娘かっ! 」


 などと溝口有希が叫ぶが、そこから連打のパンチが次々と溝口有希の顔面を襲う。


 県警本部長の孫であり、警察も手も出せないし、俺達と仲良くしている友達だ、親友と言っていいと思う。


 しかも、女の子である。


 だから、間違いなく<(わざわい)>は思っていたはずだ。

 

 攻撃できるはずが無いと。


 だが、如月彩は容赦しない。


 溝口有希の顔が腫れていく。


 真面目に変形していると言っていいかもしれない。


「ちょっとぉおぉぉお! 有希が死んじゃうでしょぉおおおおおおお! 」


 渡辺香織が叫ぶ。


「さっさと有希の身体から出ないとボコボコになるよっ! 」


 それって脅しになるのか? 


 攻撃している身体は有希だし。

 

 その後も容赦なく、彩は今度はボディも挟んで殴り続ける。


 無茶苦茶だぁぁぁ! 


「いやいやいや! 止めてぇぇぇ! 止めてぇぇぇ! 中身の<(わざわい)>には全くダメージが行かないから! 県警本部長のお孫さんが死んじゃうっ! 」


 まるで少女のように間宮さんが叫ぶ。


 なるほど、妖の城はここT市にある。


 と言う事は、この県の警察のトップの県警本部長の孫を彩がボコボコにしてしまったら、今後のお付き合いが大変だ。


 まして、警察は一階級違えば全然身分が違うと言うから、そりゃ、公安で妖関係とはいえ、そんな上の人の孫をボコボコにされたら、いろんな意味で終わる。


 妖の世界も終わってしまうと言う事か。


「私の攻撃が中に伝わらないのかっ! 卑怯者めっ! 」


 などと彩がさらに身構える。


 攻撃なら空手の前屈立ちをするべきだろうが、最近、総合格闘技もしているらしくて、構えが微妙にタックルを警戒している構えに変わっていた。


 古流以外にもいろいろしていると言うけど、何でもやり過ぎだろ。


 そして、相手は妖なんで、格闘技とか関係ないと思うのだが。


「そもそも、有希は親友じゃね? 」


 俺が思わず呟いてしまった。


「徹底的に喧嘩は避けろと。そしてやると決めたら、徹底的にやれと師匠から……」


「いや、有希は身体を操られているだけだから! 」


 香織が必死に如月彩を止めた。


「勘弁してくださいよぉぉぉ! 」


 間宮さんが泣きそうだ。


「でも……でも……有希の身体が動けなくなれば攻撃はできなくなるだろうし、身体から出てくるはず」


 などと呟いて、またハイキックをふらふらと立ち上がってきた溝口有希の側頭部に当てて、吹き飛ばした。


「有希が死んじゃうでしょうがっ! 」


「いやいや、止めてぇ! 止めてぇ! 」


 香織の叫びと間宮さんの動揺が凄すぎる。


 そう言われても追撃の構えを彩は止めない。

 

 有希の顔が腫れまくって、真面目に死ぬのではと思う。


 実際、どれほどの修羅場かと言うと、公安の間宮さんの他の部下数名が慌てて保健室に入ってきて、その場で立ち尽くして、この惨状を見ていた。

 

 あまりの展開でやばすぎる。

 

 そして、実際に、それは正しいのだと思われた。

 

 と言うのは確かに溝口有希の動きは悪くなっていた。


 身体が破壊されると、中の<(わざわい)>をもってしても動けないのだなぁと。


 いや、有希が死んじゃうけどさ。


 とうとう、有希がのろのろと這いつくばった。


 何しろ、俺達が大事にしている親友で、公安も気を遣う県警本部長の孫である。

 

 妖としても妖の城が出現した後に、お世話になるのが、その県の警察であるだろう。


 そのトップの県警本部長の孫の身体を使えば攻撃はできまいと言う考えを真っ向から破壊して見せたのだ。


 何とか立ち上がった有希だが、腕が折れている。


 変なこけ方をしたらしい。


「……<ひとつ>が気に入るはずだ……。なんだ、この鎌倉武士みたいな奴……」


 などと<(わざわい)>が呻く。

 

 しかも、それを追撃しようと言う動きすら彩は見せていた。

 

 かって、元寇の時に対馬で捕まえた島民を、船のへりに腕に穴を開けてひもで吊って元が盾にした。


 それをほほ笑みながら容赦なく弓で殺していったのが鎌倉武士である。

 

 今まで元が残虐な事をして見せたら、敵がびびって戦意を喪失したのに、その上手を行ったわけである。


「この身体は、もう良いわ……」


 などと、脱ぎ捨てる様に<(わざわい)>が中から出てきた。


 有希はその場でボロボロになったおもちゃの人形が捨てられたかように崩れ落ちた。


「その瞬間を待っていた」


 などと彩が言っている。

 

 流石覇王如月である。


 それに迎え撃つかのように動いたが、それより早く渡辺香織の身体に飛び込んでいく。


 ところが、その瞬間、驚くべきことが起きた。


 なんと、それを渡辺香織が入り込もうとする<(わざわい)>を片手で掴んで捻って腕を極めると顔面を……いや、右目を殴った。


 しかも、古流の竜頭拳……中指を立てて親指を添えて握りこむ急所打ちである。


 その痛撃が<(わざわい)>の目を奪った。


 しかも、その後も腕を極めたまま痛撃が続く。


 全部急所だ。


「お前……この技は……」


 <(わざわい)>が呻く。

 

 その連撃が何か思い出のある技らしい。


「渡辺綱の血筋! 渡辺香織っ! 」


 その時に香織が叫んだ。


 ええええええ?


 


 

 


 

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