第六部 凶(わざわい) 第六章
「また、後で来るね」
などと柴垣誠が自分の教室に戻っていった。
真面目に派閥的にはいろんな情報が入るし、良いのだろうなと思った。
穏健らしいし。
「無難ではあると思いますよ。政治家一家ですしね」
などと間宮さんがこちらの気持ちを察したのか話してくる。
「逆に公安から、俺が妖の王の候補は降りるって事で話はできないんですかね? 」
「いや、私は政府関連に貴方を強く推してしまっていますし」
「さっきの冗談じゃないんだ」
「部長が推しているのはガチですんで、真面目にここで降りるとかされると我々も困るので」
「政府にとっても、大きな問題ですから」
などと間宮さんの部下たちが同じように話す。
参ったなぁ。
「いや、私が守るし」
などと言う如月彩に顔が引きつる。
なんなんだろうな、薙刀貰ってから、この豹変だし。
「それにしても、律蔵さんはどうやったら連絡取れるんだろう。スマホにも出ないし」
「いや、出ないでしょ。爺さんは都合が良くならないと出てこないと思う」
「本当にあの人は厄介なんですかね? 」
「そんな雰囲気見せたことないですけど」
「多分、立派な猫を被っているのだと思います」
などと他の公安の方に言いながら、ため息をついた。
結局、その日は休み時間のたびに柴垣誠や渡辺香織や溝口有希が遊びにくる。
仕方ないのだけど、間宮さんも困った顔で認めていた。
柴垣誠は事情を知っているはずだけど、他の人は妖ではないらしい。
彩がそう断言していた。
あの子達は人間だよと……。
そんな訳で公安の人達がピリピリする休み時間は昼食の時間に変わった。
それで、彩のお母さんの作ってくれた弁当を出した。
もう、家族扱いなので、祖父母がいないときは普通に弁当を作ってもらっている。
こんな事情なので食堂には行けないけど、購買でパンを買えばいいのだが、本当にお世話になっている。
渡辺香織と溝口有希もわざわざ一緒に食べるために食堂は止めて、購買でパンを買ってきたそうだ。
そして、流石に女子の集まりには入りにくいのか昼食の休憩時間には柴垣誠は来なかった。
それで良かったのだ。
渡辺香織と溝口有希がパンを入れた袋を持って保健室に入って来た途端に如月彩の雰囲気が変わった。
それと同時に俺もピリッとした感覚がある。
まるでかぐや姫様が教えてくれたみたいに。
「あんた、誰? 」
如月彩が一瞬にして戦闘的に変わる。
それと同時に弁当箱を溝口有希に投げた。
「ちょっとぉぉおおぉ! 」
溝口有希がそれで叫ぶ。
その瞬間に公安の天狗さん達が動いた。
まさかの棒型のスタンガンである。
一人のは避けられたが、もう一人のスタンガンが溝口有希に接触した。
バリバリと激しい音と派手に光るのでかなり電圧を強化しているのが分かる。
「は? お前ら妖だろ? 」
などと溝口有希が豹変してあきれ果てた顔で話す。
中に誰かいる。
これが噂の<凶>なのか?
溝口有希の喋り方が完全に変わっている。
溝口有希の身体から、一瞬にして爪の生えた鬼の手が出て公安の頭を掴む。
その瞬間、掴まれた公安の人の目がグルンと回って、その場に倒れる。
そして、また別の手が考えられない方向に出て、もう一人の公安の人も同じように掴まれて倒れる。
スタンガンのような事をしていると言うよりは直接触って身体をコントロールして気絶させているようだ。
異様に強い。
間宮さんが銃を構えて、俺達の前に庇う様に立った。
「やれやれ、世も末だな。天狗ともあろうものが武器などに頼るとは。妖なのだから妖術を使うべきだろうに」
などと溝口有希が嘲る様に笑った。
「いやいや、意外と妖に近代兵器って効くんですがね」
間宮さんがそう言って狙っている拳銃の撃鉄をあげた。
「撃てないだろ? 」
だが、溝口有希がにやっと笑う。
間宮さんがあからさまに動揺していた。
「調べてあんだよ。お前も公安なら知っているはず。県警本部長の孫だからな、この子は。公安だからこそ、警察関係者には何もできまい。しかも、妖として今後の関りを考えたら妖の城がある、この県の警察トップとは揉めれねぇ。大変だよなぁ、今の世の中も……。世知辛いよな。まあ、我の時代もそうだった。攻撃できない奴の身体に入ると敵はなにも出来ねぇんだよ」
溝口有希が笑った。
ぞっとするような笑いだ。
その瞬間、溝口有希の頭が奇麗な回し蹴りで吹き飛ぶ。
如月彩が何の躊躇いもなく振り切った。
異様な勢いで溝口有希の頭が吹っ飛んだ。
「ああぁぁあぁああぁあぁぁぁあぁぁああ! 」
その行為に一番絶叫していたのは間宮さんだった。
容赦ねぇなぁ。




