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第五部 願い 第二章

「しまったな。となると……。結構、やばいのか? <ひとつ>を撃退した時点で……」


 俺がそう唸る。


「なんで? 」


「すでに皆が目をつけている。あの場で断れなかった時点で、普通の候補じゃないって事だ」


「そうだ……有力候補だ……」


「自派が繁栄するためには囲いたいと言う奴がうろうろしていておかしくない。田舎だしなぁ。その為に襲撃されてもおかしくない」


「ちょっと、薙刀を取ってこようか? 」


「まだ、練習もしておらんじゃろうに」


 彩の言葉に柴吉が呆れる。


「でも武器がないよりは……あれ……多分、特別な薙刀だよね? 」


「良く分かったな。巴御前から預けられた鬼達の気を浴びている。妖を殺せる力を持つ薙刀だと見て良い。自分達を殺しかねない武器を渡してしまう所が鬼らしいがな。お前ではまだ自分の敵で足りえぬから、それを持って練習して向かってこいと言いたいのだと思う」


「やっぱり、その手の武道でいるタイプの感じだよね。なんとなく良い妖だと思ったんだ」


「気持ちよく、殺し合いをしようと言う話なんじゃながな……」


 彩の覇王如月らしい考え方に柴吉がドン引きしていた。


「いや、断る時点は間違っては無いのだけど、話を通しておくべきだったか? ある程度」


「いや、受けろよ」


「受けるのは……困ったな……爺さんが選ぶだけあって穏健派なんだろうが……」


 俺が呻く。

 

 逃げれないのは分かっているが、本気で逃げれなくなるのはちょっと困ると言うか……。


 いや、真面目に決めないといけないのか……。


 しかも、急いだ方が良いのか……。


「なら、巻き込まれた騙されたと言う感じの方が後で断りやすかったか……」


「断れるかどうかは知らんけど、それは確かだな。下手したらお前が一番の筆頭候補だ」


 そう言いながら柴吉がちょっと焦ったような顔で外を見た。


「来たんだ……」


 彩まで、そんな事を口にした。


「マジか。早すぎる……って事は無いか。しまった。あの逃げ方だと、他の派閥があるなら柴垣の家の誘いは断ったとみるか……。しくじったかな? 」


「こっちを伺っているな……」


 柴吉がじっと外を見ていた。


「どうするの? 戦う? 」


「待って、そうかっ! 俺達が<ひとつ>を撃退したと見ているんだったな。確か、妖達は……。しかも、柴吉の様子からすると<ひとつ>は最強格の妖なんだろ? 」


「ああ、強さでは有名だ」


「ならば、こちらに入ってくるのも、悩むよな」


「ああ、なるほど」


「それなら、多分、間宮さんのスマホが通じるはずだ」


「なんで? 」


「他の妖からの情報で<ひとつ>を撃退したと見ているだろうし、それで柴垣家のグループも断ったが、今後どう動くかは情報として欲しいはず。それと、多分、近くにいると思う」


「頭がそれだけ回るのに、何で、そんなに後ろ向きなの? 」


 柴吉が凄く悲しそうに呟いた。


「どうするの? 連絡して? 」


「少し、俺に柴垣家のグループに関わるかどうか考える時間をくれと頼む」


「時間をくれ? 」


「間宮さんの公安に保護を頼むんだよ。国も関わっているから、恐らく、それなりの戦力もあるはず。少なくとも、保護はしてくれるはず」


「うわぁ、相変わらず知恵が回るよね」


 それで慌てて、間宮さんにスマホをかける。


 思った通りだ、コール音が出た。


 着信拒否とかしてない。


「これはこれは、なんでしょう? 神楽耶さん」


 などとしれっと、今まで着信拒否していた癖に平然と間宮さんが言いやがった。


「実はどこのグループに入るか悩んでます。それで柴垣家のグループに入るのは、まだ思案中でして……」


「パーティーには参加しないで帰られたと聞きましたが……」


 などと間宮さんが情報を得ているらしくて、しれっと答えた。


「近くにいますよね。他のグループといざこざが起きても困るので、それで一旦の保護をお願いしたい」


「……なるほど。律蔵さんの話す通りですね。頭が良い」


「……さては、爺さんも頼んでたな? もしもの保護って……」


「ご名答」


 そう間宮さんが笑っている。


 全部、爺さんの手の内の中かよ。


 横で聞いてた彩が爺さんの事を感心している。


「近くにいるんでしょ? 家の外に誰かいます。柴吉の話だと結構強いらしい」


「分かりました。すぐ向かいましょう。こちらからは手は出さないでください」


「その方がこちらが待ち伏せしていると思って警戒して踏み込んでこないからですか? 」


「いやいや、これは素晴らしい。これなら私も貴方を推しますよ。馬鹿では困る地位ですからね。貴方くらい知恵が回るなら、最高だ。ようこそ、妖の世界へ。我が君」


「いや、それは止めて」


 俺が本当に嫌な顔をした。


「凄いな、間宮殿もお前推しとか」


 柴吉が呆れた言葉を吐いた。


 ふざけんなよ。



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