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第四部 淡雪 第五章

「ああ、やっと来てくださったか。お待ちしておりました」


 などと50歳前くらいの年齢のぴしっと背広を着た男性が立っている。


「うむ。律蔵に言われたからな」


 などと柴吉が喋る。


「ちょっと、柴吉っ! 皆の前で喋ったらっ! 」


「爺さんの仕掛けか? 」


 彩と俺が別々に叫んだ。


 どうすんの? って顔で俺を彩が見た。


「いや、小道をまっすぐ来たし、多分、屋敷にも柴吉が妖である事を知っている人しかいないと思う。それよりも祖父がこんな事をしたのか……」


 俺がため息をついた。


 そうか、柴垣と言う姓で気が付けばよかった。


「妖の王の候補の神楽耶さんとは初めてですかね。私がこのT市の市長をしている柴垣大輔です」


「ああ、市長だ! 」


 などと彩が驚いている。


「……祖父とはどのような、御知り合いで? 」


「はははは、この市の妖の互助団体のトップもやらせてもらってます」


 などと大輔さんは名刺を見せると、市長とともによく分からんNPO団体もしておられる。


 確か、老人ホームやら、観光開発までいろいろとやっているNPOだったか?


 まさか、こんなとこにまで妖が進出しているなんて……。


「ははははは、驚かれたでしょう。県知事も実は妖ですし、私の祖父も衆議院議員の柴垣龍三ですよ」


 なんという驚きの展開。


「な、なんで? 」


「律蔵さんが常に褒めておられる神楽耶さんだ。お分かりになられるでしょう? 」


「少数派で弱者だからこそ、政治家とかそういうポジションを抑えておくと言う事ですか? 」


「その通りです。我が柴垣家はシバカキと言う熊本の妖で、それから江戸に出て、こちらに移り住んだ弱小の妖ですが、だからこそ情報とか言うものに敏感なんですよ。政府の上の方に存在していれば、いろんな情報は早く入りますしね」


 そう大輔さんが笑った。


 これは多分、妖の数は10万どころじゃないな。


 もっと多い。


 そうでないと、そこまで食い込めない。


 俺がそう考えて、ぞっとした。


「ですから、最強クラスの鬼の妖が別の候補者に付いたとしても、神楽耶様は諦める事はありません。弱者だからこその強みがあるのです」


「集団的自衛権みたいな感じですか? 」


「おお、流石、お分かりになられたか? 強いものは常に傲慢です。自分の力に誇りを持っていますから。だからこそ、例えば鬼の一族だけでグループを作ってたりします。逆に弱者の妖は逆に多数の種族が集う事で戦う事が出来ます」


 などと滔々と弱者の戦術の話をされる。


 爺っ! 


 さては、鬼の軍団と対抗できるだけのグループに目をつけていたな。


 嵌められたっ!


「いや、神楽耶は候補になる気は無くて断ってますが……」


「律蔵さんもそうおっしゃってましたが、<婆娑羅(ばさら)>様は武張った御方です。漢の道に拘りがある御方です。それなのに女装している貴方を推すと言う事は、相当に神楽耶様を買っていると言う事です。律蔵さんはもともと<婆娑羅(ばさら)>様に推されるのが一番難しいと見ていましたが、まさかの展開になりました」


「その妖の王の御霊は何人いらっしゃるの? 」


「お聞きになられていると思いますが、三人です」


「名前は? 」


「候補を推すまでは他の妖がその名前を語ったら駄目になってます」


「えええ? 」


 俺が良く分からないルールに戸惑う。


 こんなんばかりだ。


「あなたのお父様の名前も出したら駄目になっているでしょう? 」


 などと市長が笑う。


 情報に敏感と言うだけあって、良く知っていらっしゃるようだ。


「それよりも、早く高祖父に会って欲しい。実は高祖父の様子が急変してしまって」


 横で誠が騒ぐ。


「いやいや、騙されて連れてこられたんですけど……」


 俺がそれでもはっきりと話す。


 だって、本当だし。


 そうしたら、市長が笑った。


「妖の大きなグループは4つくらいありますが、そのうちの鬼と我々が目をつけております。神楽耶様はどのみち候補から逃げれないと思いますよ」


 などと自信たっぷりに言われて嫌になる。


 かぐや姫の依り代になった時点で逃げれないのだろうけど、正直、こんな事になるとは。


 ずぶずぶと妖の世界に巻き込まれて沈んでいくような気がする。


「うちのものと会った事は内緒にします。高祖父の終わりの時が近そうだ。何とか会ってやってくれませんか? 」


 市長の背後からお爺さんに声をかけられた。


 そう言われると流石に断れない。


 顔が似ているので、これが祖父かな?


 顔を見たことがある。


 衆議院議員の柴垣龍三だっけ?


 スーパー政治家一家やんか……。


「ああ、御存じですよね。衆議院議員の柴垣龍三です」


 そう丁寧に頭を下げられた。


 こんな政治家一家が全部妖とか。


「龍が付いていると言う事は龍に関係があるんですか? 」


「昔高祖父が龍神様に助けられた事があり、特別に御許可をいただいて、龍にこだわって自分が人間と交わって戸籍を作る時に一字をいただいてつけさせて頂きました。それ以来跡取りとなるものは三代続けて龍の字を使っております。ちなみに私の父が龍二で高祖父が龍一です」


「あれ、市長の大輔って? 」


「妖の互助団体のトップになる話が来て、父の龍三から言われて龍史から改名しました。流石に龍神様がいらっしゃらない互助団体なのに代表の名に龍の一文字はつけれませんから」


 そう市長が笑う。


「律蔵がいろいろこちらの方々にはお世話になっているからな。他の妖には内緒で分からないようにしてくれるそうだし、高祖父殿が急変なさったらしいから、是非会ってやってくれ」


 などと柴吉にさらに言われてため息をついた。

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