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第四部 淡雪 第四章

 それで教室に戻った。


 誰もどうだった? とか聞かない。


 断っているのは丸わかりだし、柴垣誠も残念そうな顔をしていたから。


 まあ、告白じゃないんだけど。


 高祖父に俺を会わせたいと言うのは困るから、断るしかない。


 急に周りが妖の話だらけになってきて途方に暮れる。


 俺はまだ人間のつもりなのだが……。


 だが<ひとつ>はかぐや姫の依り代をした事で、俺がこの世の者として存在する者ではなくなっていると言う話もしていた。


 困った話である。


 結構厄介な話である事をさらに自覚する。


 事情通とか言う人までいると言う事は、このT市にもかなりの妖がいるようだ。


 それが人間社会に溶け込んでいると言う事だ。


 だから、単純に妖の王になると言う話だけではなく、いろんな妖同士の利害があるのかもしれない。


 年貢が米で、領地で米も作って無い、ガタの来ているらしい妖の城の主。


 何が良い話なんだろう。


 ただ、恐らく、誠の話が本当ならT市に妖の城のある場所である以上、相当数の妖と妖の混血……妖がここにいるはずだ。


 鬼が集まっている以上派閥みたいなのがあっておかしくない。


 普通に人間だって3人寄れば派閥が出来るとか言うし。


 これは思った以上に厄介だぞ? 

 

 とにかく、下手に妖絡みに関わらないようにしないとな。

 

 そうしみじみと考え込んだ。


 そうしたら、いつの間にか放課後になってた。


「今日はずっと真剣な顔して悩んでたね」


 などと彩が突っ込んできた。


「いや、安易に関わったら、いろんな妖の派閥があるはずだから厄介な事になるはずだから、気を付けないと思って……」


 学校から帰りながら、その話をしていた。


 部活も決めたいと思っていたのだが、それどころじゃないし。


「ああ、そうか。言われてみれば、かなり妖みたいな人がいるもんね」


 などと今更ながらのように彩に言われる。


「どこに? 」


「学校の生徒に……」


「はあああああ? 初耳だが……」


「いや、さっき柴垣誠君が話しかけてきた時に前から気配が変だなって思ってた人だったから」


「ええ? 結構いるの? 」


「クラスにも数人いるよ? 」


「噓でしょ? 」


 そう言いながらも妖の城がここにある事を考えたら、当然だろうなと思い直す。


「次から、そういう感覚があれば教えてくれ」


 俺が真剣に頼む。


 それ以外にも、いろいろと話しているうちに家についた。


 前々日の騒ぎなんか、無かったように家も庭も奇麗に片付いていた。


 障子と襖が跳ね飛んだだけでなく、部屋の小物は庭とかに飛んでいたし、それの片付けで昨日は休んだのだ。 


 結構、庭の木にも変な傷があり、祖父の竹内律蔵が言うには、他にも鬼がついて来ていて、それがマーキングしたんじゃないかと呑気に話す。


 そういうのを残して、この家は鬼達と戦う関係にあるとか示すとか。


 いやいや、勘弁してほしい。


 それで、祖父がそれらをごまかす為に、俺達が学校に行っている間にいろいろとやっていたが、庭の大きな傷は奇麗にツタか何かを這わせて見えないようにしていた。


 残しておくと、いろいろと他の妖に知れると言う事だそうな。 


 それで、いろんな話が妖達に伝わっていたんだと、今は誠とその話をしたから納得する。


「柴吉の散歩を頼むわね」


 などと祖母の竹内柚が呑気な話をする。


「柴吉自身でいけるのでは? 」


「いやいや、放し飼いになっちゃうじゃない。揉めたら困るでしょ? 」


 などと話す。


 田舎によっては、違法なのだが、散歩に行かずに夜だけリードを外して放し飼いみたいにしている奴もいるそうだが、うちはそういうのはしない主義なのだ。


 当時は生真面目なんだと思っていたが、いろいろと柴吉が目立っても困る訳かと今はわかる。


「しょうがない」


 俺がため息をついた。


「私もついていくよ」


 そう彩が自分の家の軒先から縁側に鞄を放り込んで、一緒についてきた。


 実に相変わらず豪快である。


 うちの柴吉の散歩はルートが決まっておらずに、全部柴吉任せだ。


 我儘な柴犬の良くある、拒否柴とかやって、自分の行きたいとこばかり選ぶ。


 我儘だが、こういう犬種なんだなと思っていたら、実は狼とか無茶苦茶な話である。


 それで、今日はいつもと違う散歩ルートを歩いた。


 初めて行く道であった。


 たまにあるのだ。


 今にしてみると、何か確認していたのかもしれない。


 想像以上に柴吉が頭が良いのは話で分かった。


 あの豊臣秀吉を育てた狼である。


 並大抵ではない。


 そうして散歩で柴吉と歩いていくと、変な小道を出て古い豪邸があった。


 庭も広く、門も寺にあっても、おかしくないような大きな門構えだ。


「えええと……」


 俺が途方に暮れる。


 家の大きな樫の木の表札が柴垣と書いてある。


「あ、神楽耶さん。来てくれたんだ」


 などと門から出てきた中垣誠に喜ばれた。


 謀ったな、柴吉ぃぃぃぃ!  


 

  

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