第四部 淡雪 第二章
「まーた、告白かな? 」
小声で如月彩が呟いた。
柴垣誠をやはりチェックしていたらしい。
そりゃまあ、ちらちらと見ていたのから、急激に今日にじっと見るに変わったからな。
「しょうがないよ。私が見ていても鬼気迫るくらい奇麗になったし。怪我しただけでしょ? 」
「ますます凄く奇麗になったように感じるもの」
などと香織も有希もしきりと相槌を打つ。
ため息しか出ない。
男なんだけどな。
すでに何人も断っているから、男子生徒はもう知っていると思うんだけど。
それで意を決したみたいに、昼休みに誠が声をかけてきた。
「ちょっと話があるんだけど」
「私もついていくけど良い? 」
有無を言わさぬ感じで、彩が言い切る。
「良いよ。ただ、彩さんと神楽耶さんだけにして欲しい」
そう誠がきっぱりと話す。
それで彩が俺をちらと見たが、それで構わないと頷いた。
そもそも、中学校から普通に俺への告白イベントはあったわけで、誰もがある程度はその切なさを知っている事から、男のクラスメイトはついてくることが無いし、彩が止めるから香織ですらついてこない。
どうせ、結果は見えているのだし。
まあ、誠は生真面目そうだし、襲ってくることは無いと思う。
襲ってくるタイプは悉く彩がついてくるのを拒否するから。
まあ、申し訳ない話だが。
こんな女装に意味があるとは思わなかったんで、今は本当に申し訳なく感じる。
一度神様とか仏様の依り代になったら、簡単には縁切りできないと言うのは、祖父の竹内律蔵に聞いた。
特にこちらからお願いしている以上、余計にだと言う話は良く分かる。
頼んでおいて、拒否は難しいだろうし。
それで気が重いけど、いつもの旧校舎の裏に向かう。
そこが一番目立たないからだ。
こうやって行くのもすでにもうすぐ20回を超える。
まだ、入学して一か月しか経っていないにも関わらずだ。
そもそも、こんな格好をしているのがおかしいのだから、ますます申し訳ない。
流石にあーあって誠を見ている人が多い。
あーあって思うなら、止めてあげてくれればいいのに。
ますます、俺が男子生徒から孤立する事になりそうだ。
全然、男の友達とか出来ないんだけど。
などとグチグチ言いながら、校舎裏に誠と彩と向かった。
その場所に着いた途端に彩が仁王立ちする。
これのせいで覇王如月とか言われてんだが、女の子なんだからと思いながらも、俺のせいで申し訳ない。
また、ケーキでも買って来てお礼をしようなどと思っている時に行きなり、とんでもない事を言われた。
「妖の王の候補だよね。神楽耶さん」
「は? 」
「え? 」
俺は唖然として誠を見た。
そして、即座に別の意味で彩が戦闘態勢に移行した。
なにしろ、そんな話を知っているのは妖しかいないと思っていたからだ。
特に妖の王の候補者に関係している可能性が高い。
「他の妖の王の候補の関係者? 」
俺がそれで聞いた。
「違う違う俺も妖の血を引いているんだ。まあ、人間との混血でも妖って言うらしいけど」
そう誠が苦笑した。
「えええ? 」
「学校にも妖かな? って人は結構いるよ。特に神楽耶さんは神気までたまに見せていたから、それは目立つし」
などと誠が苦笑した。
「ああ、そうか。妖の城の話が本当なら、普通に結構いるんだ……このT市に妖が……」
「伝承では万とか言ってたけど、あれは明治の頃の話で、まあ、本当は8千くらいだったんだけど、それから日本人と混血したからね。日本人の人口が大体で当時は3000万人で、そこから今は4倍だからね。普通に混血もあるし妖の血が入ると長生きだから、恐らくは十万以上はいるらしいけど」
「十万……」
そう呟きながら、とても養える話ではない。
このT市の人口の三倍を超えている。
どうやって、それの仕事とか面倒を見たら良いんだ。
しかも、田んぼも無いし。
「とても、無理じゃん。どうやって生活させるんだ? 」
「んん、人間に溶け込んでいるのは大体仕事しているから、大丈夫だとは思うけどね。それでも純粋な妖も二千は恐らくはいるからね。そっちは難しいよね」
俺の悩みがすぐにわかったのか、即座に誠が答えてくれた。
「だから、俺、そういうのやる気は無いんだけど。無理だろ? 」
「でも、<ひとつ>を撃退したんでしょ? 」
「は? 」
「妖界隈で大騒ぎになっているよ。凄いって……」
「マジですか? 」
「だって、<ひとつ>は天武天皇から本当に特別に領土を貰った時に一番の戦果を上げたから<ひとつ>って名前を貰った鬼だし、<赤錆>は平安時代とかからこの世に跋扈してた、古い古い鬼だしね」
「本当にビッグネームだったんだ」
そう俺が呟くと誠が笑って頷いた。
話が古すぎる上に大きすぎて、やばすぎる。




