第四部 淡雪 第一章
電柱に当たって怪我したので……まあ、如月彩がだが……その日は間宮さん達に会ったのもあって休んで、次の日は襲撃明けで家の片づけで休んでと二日も休んでしまったが、何時までも休んでいられないので学校に来た。
田舎の高校の為に、1学年に3クラスくらいしかない。
前は二つの高校があったが、市の子供の人口減の為に併合された。
T市自体は昔は5万くらい人口が居たが、大手の電機メーカーの工場が撤退して、それから寂れた。
まだ大手企業の製薬会社の工場があるせいで、それでも人口3万台なので市としては維持できている方かもしれないが……。
正直、いまや全く旨味が無い土地である。
100年前に妖の城があった土地とは全く思えない。
実際、俺も知らないし、皆も知らない。
柴吉の言うには妖の城は妖の王がいなくなると姿も消えるだけでなく、存在も忘れ去られるとか。
ある意味、悲しい話なのかもしれない。
だからこそ、もう一度妖の城をと妖の皆が思っていると聞くが、滅んでいくべきものは滅んでいく運命なのだから、そのままで良いのではないかと思う。
祖父なんかは良寛さんの「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候、死ぬ時節には死ぬがよく候これはこれ災難をのがるる妙法にて候」とか言う言葉を言って、逆にそう覚悟したときこそ助かる道が出てくるとか話すが、俺は滅んだ方が良いと思っているのだけどと話すとただ笑っていた。
良く分からないが、どうやら、父もその呪術師の家系で祖父の後を継ぐものだったようだ。
名前を教えてくれないのは本当の真名は呪術師にとって知られることは良くないらしい。
祖父の名前は律蔵で皆が知っているでは無いかと聞くと、どうやら、僧侶が出家して僧の名を得るように、呪術師としての真名があるらしい。
それなら、父の表向きの名前くらい教えてくれてもいいと思うのだが……。
「ねぇ、神楽耶さぁ。また、一段と神秘的な雰囲気になってない? 」
クラスメイトの渡辺香織がそう俺を見て話しかけてきた。
この子は彩とも仲が良くて、ぶっちゃけ、ポジション的には幼馴染のうちに入るかもしれない女の子だ。
小学生の時から同級生だった。
だから、結構親しい。
家族付き合いしているほどの如月彩と比べると、親しさは違うけど、感覚的には如月彩は家族に近いので、本当の学校の友達はと言うと彼女とかになる。
「まあ、そうかもしれないね」
俺もそれは気が付いていた。
こないだ覚醒だとかしてから加速度的に妖気が漂うくらいの美少女になっているように鏡を見て思っていたが、妖の襲撃を受けて祖父がかぐや姫の力を使ったせいで、まるで開花したように美しくなった。
「艶やかさが出てきたでしょ」
あっさり、薙刀で懐柔された如月彩が嬉しそうに話す。
いや、全然嬉しくないのだけど……。
今回は奇麗に避けたけど、今日の朝にまた俺のせいで交通事故を引き起こしていた。
なんだろうな、男なのに男じゃないような感じだ。
全然嬉しくないや。
ちょっと本気で女装を止めようかと祖父母に相談したが止められた。
前は祖父のわしの趣味の一点張りだったが、かぐや姫様との契約があるとか今頃言われた。
おっさんになっても女装する事になるのはどうなのだと聞くと、恐らく、もう年は取らないと思うとか凄い事言われた。
覚醒したことで成長が止まり、本当に妖の王となる事で、そのままの姿が維持されると言う事だ。
勘弁して下さい。
同じクラスメイトで、中学校から同級生の溝口有希も香織と一緒に俺の姿を見てキャッキャッと騒いでいる。
有希なんかは霞でも漂いそうな美しさとか言うから、何かおかしいんじゃね? とか真面目に思う。
妖の王は男子でないと駄目なんじゃないのかよとか思ったり。
さっき、教頭先生とすれ違ったが、これまた俺を見て心を囚われたような感じになって、壁にぶつかっていた。
祖父の竹内律蔵はかぐや姫の神気が加速しているとかふざけた事を言って喜んでいるし、ふざけんなよとしか思えない。
特に、必死に薙刀の教本を買って来て、さっそく勉強している如月彩には参った。
どうも、古流武術の師匠の奥さんがたまたま薙刀をやっていたらしく、早速習う事にしたらしい。
これ以上強くなってどうするよ。
そして、それよりも、妖の王の候補のままなのも頭が痛い。
辞めますと言っても<ひとつ>も<赤錆>も認めてくれなかった。
このままでは命を懸けて候補の間で戦わないといけない。
それで祖父からルールを聞いたら、傘下の者は妖の王の候補は殺せないが、傷つける事は出来ると言う事と問題は妖の王の候補同士は殺し合いも許されるとか。
ああ、殺伐としていて本当に嫌だ。
勘弁してほしい。
そして、同じクラスメイトの柴垣誠である。
別の中学校から来た生徒だが、たまに俺を見ているので気にはしていたが、今日はじっと見ていた。
また、告白イベントかよとか思うと気が重くなる。




