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第十五部 戦場 第八章

 いつまでも言い合いが終わらない隆史おじさんともめている彩に渡したスマホを横から陽菜さんがとった。


「とにかく、大輔さんに妖用の清掃業者を夜間のうちにこちらに手配して貰って。出来たらすぐに来てほしい。匂いが凄いから。人間のたんぱく質を溶かす毒を使ったみたいだから、それの除去もあるから。そちらの妖の専門業者ならできるでしょ。こっちは妖特科の幹部として言っているから。そういう意味では隆史さんもわかるよね。日本中が今戦争状態だし。その真ん中にいるのが貴方たち親子なんだから。この程度でビビるとか二代目俵藤太じゃないじゃない。そろそろ昔の斬れ味を娘に見せたらどう? 」


 などと仁王立ちして、一喝した。


 それでここまで聞こえてた隆史おじさんの騒ぎは無くなった。


 まあ、真ん中にいる俺としたら、あまり立場は変わらないけど、ここまで大きくしたのは陽菜さんだしと思いつつ。


「どうするの?  」


 陽菜さんが彩にスマホを渡しながら聞いてきた。


「出ますよ。<ひとつ>さんが待っているし。いつまでも姿を消しそうにないし」


 それで俺が玄関の方へ行く。


「神楽耶君、男の子じゃない」


 などと陽菜さんが感心して笑った。

 

 まあ、ちょっと恐怖感はある。


 戦闘とか意識している時に経験無いしな。


 特に<ひとつ>さんは、それを経験しておけと言いたいらしい。


「ほう、出てきたな。そうでなくては……。妖四代目候補だからな」


 そう<ひとつ>さんが玄関を開けたら感心して言った。


 相変わらず、毛むくじゃらででかい。


 見ているだけで威圧感がある。


「ちょっとぉぉぉ! 取り込み中だからっ! 」


 などと彩が叫んでスマホを切ると陽菜さんに渡して俺の横に来る。


 そして俺の横で毛抜き形太刀を抜いた。


「明日はそれでいいが、せっかくお前を見込んで巴御前の薙刀を託したのだから、普段はそっちを使えよ」


 などと<ひとつ>さんが苦言を呈した。


「あ、そうか。ちょっと持ってくる」


「それは構わんが、お前が戦うのではないぞ。そちらの妖の四代目候補が戦うのだ。こちらもいろいろと情報を仕入れたが、<(わざわい)>の時は暴走しただけらしいじゃないか。それでは尋常の勝負は出来ぬ。あの御前とかいうやつは怪物だ。日本という国に巣食うヌシと言っていいくらいの奴だ。多少は尋常の勝負というのを体験しておかねば、御前と相対すらできんぞ? 」


 良い人……いや、良い鬼さんだ。


 心配して言ってくれているのが分かる。


「いらないんじゃないの? 」


 横で身も蓋もない陽菜さんは別にして……。


「いるだろ? 」


「いらないよ」


「誰もがお前みたいな生まれついての無神経な奴だと思うなよ? 」


 <ひとつ>さんの言葉がきつい。


「はあああああああ? あんた依頼主に向かってっ! 」


「政府の金だろ? 」


「違うわい、うちの爺さんがいろいろとプールしてた金だよ! 」


「不正か? 」


「資産増やしが上手な奴がいるんだって! 」


「いんさいだぁとか言うやつじゃないのか? 」


「良く知っているわね……」


 陽菜さんがちょっとびっくりしていた。


 否定しないんだ。


 どうしょうもねぇな。


 そりゃ、自衛隊の情報保全隊とか生の情報に近かったら、インサイダーとか出来るだろうしなぁ。


 途端に話がよくない方に行く。


「あのな。道を踏み外したら駄目だぞ? 」


 鬼に説教される自衛隊の情報保全隊の妖特科の幹部とか。


「ちょっと、お姉ぇ」


 香織まで突っ込んできた。


「いや、間宮さんだって妖の城が出た時の修繕費用っていろいろプールしてたじゃん。使っちゃったけど……」


「うっ」


 申し訳なさに胃が痛くなる。


「その金を使ったのは、あんたの配下の<(わざわい)>の暴走でしょ? そりゃ、神楽耶が破壊したのはあるけどさ」


「……それは済まなかった」


 <ひとつ>さんが頭を下げた。


 鬼が謝るんだ。


「本当に良い人……良い鬼だ」

 

 彩が横で感心している。


 確かに、それは言えている。


 でも、自分の良くない事を間宮さんに擦り付けた挙句、その金の用途で謝らせるとか、人としてどうなんだと思う。


「あんたがやったんでしょうがぁぁぁ! 」


 そして、俺に逆切れ。


 勘が良いのは良いけど、逆切れはないと思うのだが……。


「お姉ぇ」


 香織が横で呆れている。


「とにかく、まずはあたりが臭すぎるから、何とかしなさい。戦でも臭いのは良くあるんだから、対策くらい知っているでしょ? 」


 逆切れしたまま陽菜さんが<ひとつ>に言い切る。


「仕方ないな。石灰を持ってこい」


 そう<ひとつ>さんが近くにいた鬼さんに命令した。


 それで鬼さんたちが藁の俵に入った何かをいくつも持ってきた。


「ほら、ちゃんと持っているじゃない」


 などと陽菜さんが凄い偉そうだ。

 

 私が雇い主なんだ感が凄い。


 困ったもんだなぁ。




  

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