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第十五部 戦場 第七章

「グロテスクよね。デカけりゃいいってもんじゃないってしみじみ思うわ」

 

 などと陽菜さんが身震いするように窓の外の趣味が悪いグールを見る。


 ものすごい刃物のような20センチくらいはある全員の斬れ斬れの爪とか、おっさんなのに異様に盛り上がった筋肉とか、もっと突っ込むところはあるのに、おっさんのむき出しの一物の方を見るとか、見ているところが違い過ぎるような気がする。


「そもそも、おなかと背中で繋がって何か意味があるのかな? 」


「多分、これ、陽菜さんが守るから、不快感を見せるためにやってないのかな? 」


 香織の疑問に俺が答える。


 その可能性が高い。


「屋敷から出てくるなよ! 人間だけを溶かす毒と爆弾を体内に入れた自爆グールだ! 」


 野太い、どこかで聞いたような声がした。


「良かった。やってくれるって……」


 陽菜さんが喜んでいる。


「いや、この声って……」


「<ひとつ>さんだよね」


 そう彩と顔を見合わせた。


「出てくるなって、人間を溶かす毒がやばいのかな? それとも爆弾? 」


「そもそも、ここには彩がいるから、俺を排除するためとは言え、そんなに近隣を破壊しまくるようなのはよこさないと思うんだけど。自爆は体内の毒をばらまく目的かな? 」


「え? 私がいるから? なんで? 」


「彩がいなくなると、地下闘技場の戦いが無くなるから」


「ああ、なるほど……」


 その瞬間、無人ドローンがその繋がったおっさんに向かって飛んでいくのが、ちらりと見えた。


 こんなとこでドローンを使うんだ。


「うわ……」


 陽菜さんも俺と同じで嫌な予感がしているらしい。


 グールとは言え本体のベースは人間の姿だし。

 

 そして、無人ドローンがおっさんのグールに当たった後の爆発の後、連鎖で爆発が起きた。


「ひぃぃいいぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 」


「びぎぃぃぃぃぃ! 」


 1970年代の楳図かずおのホラーみたいな顔を陽菜さんと香織をした。


 窓にべったり腐食した血とともにデカい一物が千切れていくつもべったり張り付いていた。


「ちょっとぉぉぉぉぉ! 家の壁がぁぁぁぁ! 」


「なるほど、毒をまき散らす為の自爆なんだ」

 

 彩がブチ切れるとともに理由が分かった。


 自爆して体内の人間を溶かす毒をばらまく。


 人間と人間に近い妖のたんぱく質だけを溶かすとかで、彩に当たったら、どうする気なのか。


 窓に数本の一物がべったりと張り付いたままだ。


 グールなだけに身体が腐ってたのだろうが、毒のせいもあって窓が汚くなって気色悪い。


 ひょっとして、単に嫌がらせだったようにも見える。

 

「ここここここ、殺すぅぅぅぅ! 御前を殺すぅぅぅぅぅ! 乙女になんてもの見せてんのよっ! 」


 陽菜さんの叫びが凄い。


 干からびたようなおぞましい姿の一物がよほど生理的に合わなかったらしい。


「……というか……まさか、陽菜さん……」


「言うなよ? 言ったら殺すからぁぁぁ! 」


 陽菜さんの獰猛な殺気にビビる。


「くそう、せっかく彼氏ができても、その時に思い出したらどうすんだっ! 」


 香織も歯ぎしりしながら叫ぶ。

 

 意外と、性的なショックってトラウマになる率が大きいとは聞くけど。


 まあ、今言うことじゃないよね。


「くだらぬ手を使う。一緒に仕掛けてくるはずの奴はさっさと逃げやがった」


 などと<ひとつ>さんも外でお怒りのようだ。


 そら、<ひとつ>さんがいたら、自爆グールが無くなったら逃げるしかないと思うが……。


 庭の奥の大ムカデの通ってきた地下道の出口の方を睨んでいる。


 敵が逃げたのが敵前逃亡とみて許せなかったようだ。


「どうすんの? これ? 爆発音とか? 」


 彩もパニックになっていた。


「爆発音も律蔵さんの結界である程度は隠蔽されているとは思うけど、さすがにこのべったりはまずいよね。ちょっと大輔さんに洗浄を頼むから」


 怒鳴りまくって、少し落ち着いたのか陽菜さんがスマホで大輔さんに連絡すると微妙に話が込み合ってきた。


 どうやら、護衛についていた隆史おじさんが横で騒いでいるらしい。


 まあ、娘が襲撃されたらなぁ。


「だから、大丈夫だって。家が汚れただけだから。それの洗浄を大輔さんに頼みたいんだけど……」


「彩さんは生きてるも何も、何も起きてないから。外でグールが<ひとつ>さんの攻撃で爆発しただけだから」


「ああああああ、めんどくさい。はい」


 それで隆史さんの大声が外に漏れるくらいなので、面倒くさくなったのか彩にスマホを渡した。


「一人娘だからなぁ」


「いや、そんなら、こんな戦闘モードの子に育てるなよと言いたい」


 などと自分を棚に上げて小声で陽菜さんが呟いた。


「……あれ? 」


 香織が先に気が付いた。


 そして、俺も気が付いている。


 俺に<ひとつ>さんが出てくるように言っているような気配を感じた。


「どうしょうか? 」


「おかしいな。護衛しか言ってないのにね。どうやら、戦闘というものを神楽耶君に教えてやるって言いたいんじゃないかな? 困ったな、別にいらないのにねぇ」


 などと陽菜さんも横で苦笑している。

 

 <ひとつ>さんが俺と戦う気らしい。


 いやいや、本番前に何を考えてんだか……。


 そして、いつもなら俺の横から飛び出していく彩は隆史おじさんと延々とスマホで言い合いをしていた。



 


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