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第三部 かぐや姫 第一章

 そんなわけで、夜は如月彩が心配だから一緒に泊まってくれる事になった。


 普通なら、両親が幼馴染とは言え男の子の家に泊まるのはって言うけど、どうやら、こちらの妖の王の件はある程度知ってたらしくて、如月彩の母親の如月真由(きさらぎまゆ)が仕事から帰ってきた時に話をしたら許可が出た。


 それで、彩が少し心配していた。


 ひょっとして自分も妖に関係しているのかと。


 祖母の竹内柚が言うには、如月彩の父の如月隆史(きさらぎたかし)と俺の父とは親友らしくて、いろいろと知っているのだと言う話だが……そう言えば俺は父の名前を知らない。


 祖母に聞いたら、内緒とか意味不明な事を言われた。


 そういうのって勘弁してほしい。


 なんか、あるのだろうかと俺も彩とともに悩んでしまった。


「これから、毎日泊まって神楽耶を守るのか? 」


 などと柴吉が呆れたように聞いた。


「いや、多分、早くも会いに来た当日からの間宮柊さん達の着信拒否だから。電源切っているのかもしれないけど、恐らくは向こうの妖がすぐに動くと見ているから、電話に出ないようにしているんだと思う」


 俺がそう淡々と推測を話す。


 何しろ、真面目に電話に出ない。


 間宮柊さんも鷹司紗和さんもいつスマホで連絡しても、即時で「ただいま電話に出る事が出来ません。しばらく経ってからおかけください」である。


 昼から夕方になっても、そのままだった。


 と言う事は恣意的に電話に出ないようにしているのだ。


「やっぱり、今日がやばいのかな? 」


「おそらく、公安とかから会いに来たと言う事は間違いなく向こうの妖も知っていると言う事だと思う」


 彩の言葉に俺が答える。


「本気で……妖の王を断るのか? 」


「うん、即断るよ」


「仕方ないよね」


 柴吉の悲しい言葉に俺と彩が即返答した。


 いやいや、そもそもその候補の傘下の武闘派の妖が早く来れば早く来るほどやばいって事だと思う。


 何でもそうだが、自分の主に対して懸念があるなら少しでも早く候補を断念させようとするだろう。


 それほど恐れられている妖の集団なら、即動くのでは無いかと思う。


「強いんだろうね」


「多分ね」


「早くもミケが逃げたし」


 そう彩がため息をついた。


 ミケはしれっと姿を消していた。


 あれほど彩が叔父さんに頼んで社を建ててあげるから、相手に神楽耶が断るまで、ここにいなさいと言ったにも関わらずである。


 特に最後のあたりは可愛さをアピールしていたにゃん言葉も止めていた。


 社を建ててもらうより、まずは自分の命って事らしい。


「来たら、教えてね」


 俺が柴吉に頼む。


 恐らく、それなりの力を持った妖であるからこそ、柴吉は俺のじい役として選ばれたのだろうから、彼らが来たら気が付くのは早いはず。


「即座にお断りしますからって言わないとね」


 如月彩も真面目に同じ考えらしい。


「いや、妖の王じゃぞ? 」


「あのさ、妖の王に選ばれるまでにこうやって危険があるし、選ばれたとして年貢が米の世界でしょ? しかも、お米なんて今は山側で誰も作って無いよ? ミケが言う通り配下になる万の妖が来ても仕事も無いし、彼らに払うお金もないんでしょ? 昔は暗殺とかでお金にしていただろうけど、今はそんなの無いし。どうやって妖を食べさせていくの? ましてや、城の改築もあるんでしょ? 何の価値も無いよね」


「妖の王なんだが……」


「何か良い話があるの? 」


「名誉な事なんじゃぞ? 」


「ええええ? 妖の世界ではって事だよね。そんなの私達人間には関係ないじゃない」


「いや、神楽耶は妖だけどな」


「普通に人間として生きてんだけど」


「女装しているけどな」


「だったら、お前が何で止めなかったぁぁぁぁ! 」


 柴吉の突っ込みに彩がブチ切れて柴吉の頬を引っ張った。


 いや、それは俺も思うけど……。


 最初から説明されてれば受けなかっただろうから、なし崩しで一気に妖の王って事にするつもりだったのか?


 たとえ、俺のまだ会っていない母親と母方の祖母の意志があったとしても、自分の人生は自分で決めたい。


 間違って彩が巻き込まれて妖の脅しに巻き込まれて大怪我してもいけない。


 などと考えて、ある事に気が付く。


「まてよ? まさか、俺は殺せないけど……周りにいる奴は殺しても良いのか? 後継者争いでは……」


 俺がそう呟くと彩もはっとした顔で柴吉を見た。


 柴吉が目を泳がせた。


「じゃあ、一緒に居たら駄目じゃん! 」


 俺が叫ぶ。


 すでに外は暗かった。


 早く彩を家に帰さないと。


 そう思った時に家の電気が消えた。


 そして、ぞっとするような気配が漂った。


 誰か来たのだ。


 人間でない何かが。


 ぞっとする中でそれだけは分かった。  


 

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