第十三部 二人目の 第十章
『出来たら、柴垣派だったかな? 弱い奴は地下闘技場に行かない方が良い』
御前の話は続いた。
「な、何でです? 」
なんと大輔さんが叫ぶ。
よほど三代目俵藤太との戦いにご執心らしい。
『自衛隊の妖特科も戦力不足だろうが、妖以外の方が戦力として良いのだがなぁ』
御前が呻いた。
「いや、渡辺家とか、ほんの少しの妖対策の専門職しかいないよ。引退した連中を呼んで来ても50人もいないよ」
『むう、そんなに弱体化しておるのか。第二次大戦中には千人以上いたはずだが……』
「皆、亡くなられた」
『そうか……』
「いや、ちょっと! 第二次世界大戦自体が貴方が戦争に誘導したんですよね? 」
俺がそれでイラっとして言い放つ。
『……そんな話まで律蔵はしたか。……いかにも、その通りだ。あの当時は神仏も日本の現状に呆れていたからな。わしは三代目の妖の王と戦っていたから、その命を削る為にも引きずりこむしかなかった』
「お前、自分が勝手だと思わないのか? 」
『今は思っている。この子がいるからな……この子が教えてくれた。すまなかった』
「いや、それで済むのか? 」
『数千年を超える年月を永遠に生き続けているのだ。すでに心と言うものは擦り切れてどうにもならなんだ……』
「長く生きるとそう言うのもあるとは思うけど、ちょっとね」
陽菜さんも否定的に突っ込んだ。
俺も同意だ。
ただ、気になる。
このまま放置すると俺達が破滅すると言うのが分からない。
「何があるんです? 祖父は御前は人と妖の革新を目指す気だとか言っていたんだけど」
『律蔵がか。そうか、そんな言い方してたか。今は分かるが……そんな良いものでは無い』
オッドアイの少年が御前に引きずられて顔が暗くなった。
なぜか、ぞっとした。
何か綺麗ごとのように話していたのと違うのでは無いか?
「何、なんか凄いやばい事を考えているような気がするんだけど。誓書も書いたし、言ってくれないと対策が取れないんだけど」
陽菜さんも必死だ。
『混ぜるのだ。世界を……』
「混ぜる? 」
「混ぜるって? 」
『妖はある意味、妖魔ゆえ、人間に認識されないし、仲間意識を持ってもらうのは難しい……』
「待て、貴様っ! 」
<婆娑羅>様が突然、叫ぶ。
『懐かしい御仁が出て来たの……。その通りだ。人間と妖すべてを全部混ぜるのだ。妖の城が現れた時に全ての世界は妖を認識できる。それと同じ事を認識だけではなく全体に強化してやろうとするわけだ』
「門を開くと言うのか? 」
かぐや姫様まで出て来た。
『そうだ……この国は大量に人も妖も悪いものは封印した形で各地に置いている。妖達の大量死によって、妖の城の近くで陰の気の場を作る事で、それを行う』
「それは……地獄の門じゃぞ? 」
かぐや姫様がそう言うので皆がぞっとした。
『それによって、あらゆるものは混ざり合うのだ』
「はあ? 何を考えているの? 」
陽菜さんがオッドアイの少年の胸倉を掴んだ。
『区別され差別れる妖の気持ちなど分からんだろう。人間の認知にしてしか存在出来ないのに、差別され区別される。これは妖にしか分からんよ』
「いや、乱暴では? そもそも、神になった妖もいるのに……」
『なれぬものも居る』
「それはその妖の心の問題では? 特に貴方はそうかもしれないが……」
『まあ、そうなのだがな……。そう言う事に長い年月を生き続けて、子供すら道具にしか思えないようになっていた。狂ってたんじゃろうな。わしはそれをこの子に教えられた』
などと御前がしみじみ話す。
でも、それはどうなんだ?
「あんた、正気なの? 」
『正気に戻ったのだ。だから、阻止する。根本の自分を始末する』
オッドアイの少年の中の老人がきっぱりと言い切った。
「本気じゃな」
「本気だ」
かぐや姫様と<婆娑羅>様がその気持ちを探って言い切った。
「あ、つまり……地下闘技場は妖を大量虐殺するのに丁度いい場所なんだ」
大輔さんが気が付く。
『妖の城がある場所も近いから、連動させやすいのだ。未来視で見ると間違いなくやる。だからこそ、油断が出る。そこで奴を始末したい! 』
「なるほど、筋は通っている」
妖の王の中で一番戦争が得意だと言う<婆娑羅>様が認めた。
「参ったな。となると、相当数の手練れを集めないと……」
陽菜さんが爪を噛んだ。
真面目にやばいみたいだ。
『律蔵ファミリーがおる。それなら対抗できる。これは千載一遇のチャンスだ』
まさか、俺の母さんとか母方まで出てくるのか?
大妖と聞いたから、それならあり得るのか……。
「大丈夫なの? 」
『未来視で見る限りは……そこの孫は……律蔵の最大最強の奥の手だ。最強の血筋に最大最強の呪術がかかっておる。これに勝てる妖など存在せん』
御前が言い切った。
「戦うのは俺かいっ! 」
俺が叫ぶ。
力いっぱい突っ込んだ。




