第五話 いい人ぶってるやつが実は一番性格悪い
ガシャン
地上からリフトに車を載せる。
ピー
「健さん、すいません!仕事で中々連絡とれず」
「構わない。1人で漁るのは慣れてる」
「で、どうでした?」
「一応持って帰ってきた」
「・・・え!ホントですか?」
「また後で」
地下へウィルスなどを持ち込まないための消毒などを済ませて車の中で待機。
降りている間に車も消毒される。
早く漁ってきたビンテージをきちんとチェックしたい。
ガンッ
地下へ戻ってきた。
リフトの扉があく。
シュウィン
扉が開くと春田が待ちきれずリフト前のゲートに立っていた。
「健さん!お疲れ様でした!」
「おう」
「ちょっとここで見るか」
車のトランクを開けて例のブツを出す。
デニムの紺が黒に近いくらいに薄汚れているが背中に名前の由来である”T”文字に見えるハギがある。
間違いなくLEVI’S 506XX E T-BACKだ。
「健さん!!!やりましたね!伝説のビンテージハンターの復活だ!!」
「まだ安心するのは早い」
健一はジャケットの内側をめくる。
「春田」
「はい!!!」
「すまん」
「え?」
健一は内側をめくって品質表示を確認したのだった。
確認する方法は他にもステッチの入り方、リベットなどのパーツ、他にもあるのだが黒に近いくらい汚れている今の状態で一番簡単に確認するにはこれが早かった。
品質表示が内側の脇に付いている。
これはオリジナルでは絶対にあり得ないこと。
「これは復刻だ。ブランドはLEVI’Sだがビンテージの復刻はオススメしない。全くの別物だ。300年前のもので古いものではあるからそこそこの価値はつけられると思うが・・・欲しいならやっぱりきちんと金を積んでオリジナルを買うべきだ」
「いえ、いいんです。これで」
「え?」
「だって、あの健さんがまた地上に行って漁ってきてくれた物。僕にとっての宝物になります」
「春田・・・そんなわけには」
「いいんです」
春田はニコッと笑った
こいつ。元々俺が何を持ってきても喜んで受け入れるつもりだったんだ。
全ては俺をビンテージハンターに復活させるため、とりあえず地上に行くように色々やってくれたんだ。
復刻だろうがなんだろうがその服に対する気持ち一つで値段なんかつけられない価値が生まれるのかもしれない。
「健さん、今回はレプリカということで1億で」
「おい待て、そんな金額もらうわけには・・・!」
「とりあえずそこのアタッシュケースにお金が入っています。それを持ってマフィアに返してきてください。そしてまた一からビンテージハンターをやりましょう!僕もサポートします!」
「・・・ああ。ありがとう。それじゃあ行ってくる」
アタッシュケースを持ち上げるとそこに意外な人物が現れた
「おう。その必要はねーぜ。」
「おぅおぅおぅ」
マフィアの親分とその手下だ
「これは親分。そっちから来てくれるとはな。ここに金が用意できてる。数えてくれ」
手下はそれを受け取ると横で確認し始めた。
親分が葉巻に火をつけながら言った。
「スカベンジャー、ビンテージハンターに復帰か?」
「ああ」
「伝説のハンター、その復帰に立ち会えて俺も光栄だぜ」
「・・・」
親分は葉巻の煙を美味しそうに吐き出した。
「昔なあんたがエピックのビンテージを持ち帰った時にその光景を見かけたことがあってな。あんた生き生きしてたぜ。あんたは今の顔の方が似合ってる」
「親びん、1億確かにあります!」
「そうか。行くぞ」
マフィアの親分と手下は帰っていった
「あ、そうそう。もう二度と借金すんなよ」
「けっ、お前らが言うことじゃねーだろ!しっかり利息まで持っていきやがって」