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第一話 伝説のビンテージハンター・スカベンジャー

300年後の未来、戦争やウィルスなど様々な要因で人間は地下で暮らすことを強いられた・・・!


しかし!地上のモノが高価で取引されることになり

一攫千金を夢見た無謀な奴らが、地上でハンターとして様々な物品を持ち帰り富豪と取引をする。


その中で意外なものの価値が高騰!!


それは・・・古着!



マフィア・富豪・ギャル・そしてハンターなんでもござれ

ビンテージの洋服を巡るバトル&ギャグコメディ!!!


世はまさにビンテージバブル!!

地上の東京よりもずっとずっと地下にあるアンダートーキョー。そこは貧富の差が激しくマフィアに金を借りる貧民が後を絶たない。


このリトルハラジュクで、今日も誰かがマフィアから返済を迫られていた!




「おいごらあ!借金が払えねーんなら地上でワンチャン狙ってごいやあ!」


マフィアの親玉は貧民の髪の毛を片手で鷲掴みにして壁に頭をぶつけた。


「ひぃぃぃお助けを!」


「臓器うるかぁ?」


「ひっ!」


「親びん、こいつしょんべん漏らしましたぜ?こいつを地上奴隷にして、死ぬまで地上でハンターやらしたらいいんじゃないでしょうか?」


「馬鹿野郎。こんなことでしょんべんちびる奴が地上に出たところですぐ死んで終わりだ。なら、利息でチューチュー吸った方が金になんだろ!」


「親びん、頭いい!そこに痺れる、憧れるー!」


親分は貧民の髪から手を離すと、葉巻に火をつけた。

そして煙を吐き出しながら顔をニヤリとさせた。


「今日のところはロナウドヘアーで勘弁してやるか!おいバリカン持ってごいや!」


「へい!こちらです親びん!」


「ガッハッハ!何百年も前にサッカー選手のベッカムのベッカムヘアーが流行ったことに嫉妬したロナウドが、何か自分も流行らせようとしてやったが大失敗した髪型だ!」


「ロ、ロナウドヘアーだけは勘弁を!」



ガガガガガガ



「ぎゃああああああああ」


刈り上げた髪の毛がパラパラと落ちていく。そして貧民は気絶した。



「次はリストにあるコイツのところに行くか。滞納しまくりだな。スペシャルな髪型にしてやるとするか」


「へい!親びんかっこいー!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




この物語の主人公である砂場健一は、路面で古着を販売している37歳の独身男性だ。


「古着ー、古着はいらんかねー。レギュラーからビンテージまで幅広く揃えてんよー」


「あら!古着じゃない!・・・え、この2000年代のUNIQLOのスウェットが…15万円?嘘でしょ?」


「どうだい?買ってくかい?」

男はサングラスから少し目を覗かせた。



「ば、ばか?あなた正気なの?」


「正気さ。俺の目を見てみろよ」


「あなたサングラスしてて目なんて見えないじゃない。人のことバカにしてるの?」


「バカになんてしてないさ。よく見てみなよ」

そういうとサングラスをおもむろに外した。


「まさか、それ・・・Ray-banのサングラス?!」



「おっといけねー。これはあまり人に知られちゃいけない代物だったぜ」


「ま、待って。そのサングラス、おいくら?」


「30万円だ」


「あなた、さっきからおちょくってるの?UNIQLOのスウェット15万といい、Ray-banのサングラス30万といい。こう見えて私は、名が通っているビンテージコレクターなの。騙されないわよ」


「目をみろ。俺は至って真面目だ」


「安すぎる。2つとも貰っていくわ」


「毎度あり」


「いい買い物をさせてもらったわ!またお願いね!」




客がいなくなると、札束を数えながら健一は水筒に入れた酒を飲み干した。


「金持ちざまあ!あのUNIQLOのスウェットは当時あった形を参考におれの知り合いの主婦が縫ったものを毎晩俺が寝巻きで着てビンテージ加工をいれたパチモンだ!」


ケッケッケと笑いが聞こえそうな表情で健一は言葉を続ける。


「そしてRay-banのサングラスは、その昔にFacebookってやつでアカウントの乗っ取りにあった馬鹿な奴が、Twitterってので"乗っ取られました絶対にURLをクリックしないでください"って、載せてる魚拓の小さい写真を頼りに作った正真正銘のパチモンさ!」


鼻歌を歌いながら札束を数えた後、札束を革のバッグに投げ入れた。


「よし。今日も上々の稼ぎだな」

すると視界が暗くなる。人が健一の前に立って影ができたようだ。




「おい。お前が砂場健一か?今日は借金を返済して貰うためにここにきた」



「あ、これはどーも親分さんでしょうか?ご機嫌いかがですか?」



「俺はよ、金さえ返してもらえりゃなんもしねーんだ。さあ、利息含めて1億円。ちゃっちゃと返せやごらあ」



健一がヘコヘコと媚びるポーズをやめて、マフィアの胸ぐらを掴んだ。


「おい、俺が借りたのは2000万だったはずだろ。いくらなんでも利息が高すぎる」



「もっと増やされたくなかったらこの手離せ」



「チッ」

健一はマフィアから手を離すと、マフィアは服装を正した。


「返せねーって言うならバリカンしかねーな。」



バリカンはリトルハラジュクでは屈辱に近い拷問の一つだ。



「ちょ、バリカンは待ってくださいよー。それは話しが違うじゃないですか!」



「おい!2009年choki-chokiのヘアカタログ春夏版を持ってこい!」(※1 choki-choki)



「へい、こちらです!親ぴん」



「ありがとう。ってこれ、吉永小百合の写真集じゃん!違うって、いつも使ってるやつ!あと親ぴんじゃなくて親びんね!」



「し、失礼しました!こちらです!親びん!」



「そうそう。このいつも使ってる、AV女優・苺みるくの2005年の秘蔵…って、ちげぇわ!ごらあ!てめぇ、ガチガチのワックスでMEN'S EGGみてぇなギャル男の髪型にすっぞ!(※2 苺みるく ※3 MEN’S EGG)



「ぎゃーお助けを!」



そそくさと荷物をまとめると、その隙に健一は逃げようとした。

「じゃ、自分はこの辺で…」




「待てや、スカベンジャーさんよ」


「・・・」


「お前があの伝説の“ビンテージハンター・スカベンジャー“だってことは調べがついてんだよ」



「誰かと勘違いされてるんではないでしょうか?スカベンジャーなんて知りませんね」



「まあ、いい。落ちぶれたもんだな。お前が本気だせば、1億なんて一回地上に行くだけで余裕なんじゃないのか?」



「・・・だから、人違いですって」



「今日はおれも伝説のビンテージハンターに会えて機嫌がいい。次は3日後にまた来る。必ず準備しておけ。」



マフィアはその場から去って行った。




「・・・クソッ。その名はもう捨てたんだ」




「あ、健さん。今日もここにいたんですね。良かった!」





この男は春田光 25歳。

アンダートーキョーで活躍するスターで、今や大富豪だ。


「さっきの人たちはマフィアですよね?僕が一度立て替えましょうか?返済はいつでもいいので・・・」



「おい、俺はそこまで落ちぶれちゃいねー!」



「何言ってんすか!昔の健さんなら、パチモンなんて売らなかった。地上に出てビンテージの古着を掘り出してくる健さんは、俺たちの憧れでした…!」



「もう、無理なんだよ」



「健さん、もう一度地上に行ってください!僕が地上に行ける装備などを準備するための資金を用意します」



「それをして、お前になんのメリットがある?」



「欲しいものがあります。」



「言ってみろ。」



「LEVI'Sの506XX E T-BACKです」(※4)



「ば、馬鹿いえ!ビンテージランク・レジェンダリー級のアイテム…つまり最上位だぞ!仮に出たとしてお前にその額が払えるのか!?」


「10億円用意しました」


「おい、マジで言ってんのか?」


「T-BACKのGジャンなら、サイズは大きいものしかない。なので色の濃さ、あとはダメージがどの程度入っているかって言う状態を見させていただき金額をつけさせていただきます。」


「仮に色が薄いものだったとしても、2億5000万円はくだらねぇ…だがな、春田。お前はなんでそのGジャンが欲しいんだ?俺はな、ただ金を持ってそれをひけらかす手段として高い服を着る奴が大っ嫌いなんだ。」


「・・・」


「お前もそう言う奴らと一緒なんじゃねーのか?いつからそんな奴に成り下がった!俺はそう言う奴らに利用されて…」



「わかってます。だけど、僕はあの頃の健さんがカッコよくて大好きでした!!酒に溺れてパチモンばかりを売っている、ダセー健さんなんてみたくありません!あの頃に戻ってください!健さん、頼みます!」



春田の言葉が痛い。

俺もずっとダセーと思ってる。




「・・・俺の言うものを用意できるか?」



「健さん!」



「今日中に用意しろ。0時過ぎに地上に上がる」


※1 choki-chokiチョキチョキ

2000年代初頭にヘアー雑誌でありながらファッションも含めて絶大な人気を誇った雑誌。

美容師を読者モデルにしてヘアーの紹介やファッションショーをするなどしてカリスマ化させ、美容師ブームのきっかけを生んだ。


※2 苺みるく

2000年代初頭に人気のあったAV女優


※3 MEN‘S EGG

1999年から2013年初頭のギャル男雑誌。当時のホストなどは大体この雑誌を読んでおりファッションにメンエグ(MEN’S EGG)系というジャンルが存在した。ファイナルファンタジー7のクラウドみたいな髪型、ドクロのグラフィックのTシャツ、フレアシルエットのパンツに尖った革靴というファッション。


※4 LEVI'Sの506XX E T-BACK

ビンテージ市場で誰もが憧れる今やKING OF VINTAGEと言っても過言ではないデニムジャケット。


体が大きい人が着用できるように大きく作っているがゆえにサイズが小さい同型には存在しない背中の“T“に見えるハギがつく。サイズ46からのLEVI’S 506XXにこの仕様が見られるのだが、これは生産効率や生地裁断の際の取り都合などによるものと言われている。


小さいサイズが流行っていた頃は36や38がゴールデンサイズと言われておりこいつが古着屋で入荷すると売れないから「ゴミ」とも言われ他のサイズよりも安く取引されていた。


しかし昨今、タイト目よりもゆったり目が好まれる傾向にあり現在では安くても250万円、色が濃ければ1000万以上で取引されている下剋上したビンテージデニムジャケットなのである。


(2024年11月現在)

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