走れ、東岡スタジアムへ
ミッドナイトウェブオンエア中に、眠気がぶっ飛んだ。
「5,765kmのトップスピードに入ったぞ!!!」
かなり強めの語気に機嫌の悪さが伺える。
原宿のセンターストリート街の無限ループ陸橋の上でSHIBUYA//780//VXR-7の10本ある共鳴型マフラーから咆哮が響き渡り、エンジンは猛り狂いながら、あちこちに何かがぶつかる音と、誰かががなるような吠え音が、車道の向こうからだんだんとこちらに近づいてくるのを、感じる。
「みはるっ!」
運転室内にあるコックピット型のジュークボックスの狭い2人掛けの座席の中に飛び込んでくるなり、雄也は叫び声を上げた。
いつものことで、意味もなく、騒がしい奴だ。
ほんと、都庁にいる飼い主よりも世話が焼けるぜ。
吠えるのもイイ加減にしろよって思う。
いちおう、古い付き合いで、付き合ってるけど。
混沌を運び、悪意を振り撒く、悪魔のような走り屋、そんな風に、ストリートチルドレンたちから言われている。
私は座席のすぐ脇にある、マシンボードの棚の奥にある小箱から、カスタード風味のカステラに似た、ショートスリープ用覚醒ソケットを、ダッシュボートから引っ張り出し、クルージングジッパーの上から突き出た金属の平らな部分にはみ出し気味に置いた。
「最高のスタートじゃん、やっぱり、みはるは天才だよっっ!!」