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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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49/50

終わりのない旅

 俺が立ち止まった理由の原因は大通りの一角。とはいえ深夜帯に入ろうとしている時間であり、魔法による街灯くらいしか光源がないため視界はあまり確保できていない。

 その中で、横――明らかに俺へ近づく気配を感じ、そちらへ向いた。


「やあ」


 そして俺が気付くと同時に声――メイリスだった。


「この時間くらいかな、と思って待っていたら大当たりだったね」

「……予測できたか?」

「すんなり学生寮に入って学園生活、なんてことにはならないだろうなー、と思って」

「……そうか」


 俺は応じつつ、頭をかく。


「見逃してもらうこととかは?」

「ううん、引き留めるわけじゃないよ。むしろ逆」

「逆?」

「私も……アルフの旅に連れてって欲しい」


 思わぬ言葉だった。とはいえ、彼女と俺では立場が違う。俺はセオを倒し事件を解決した立役者だけど、彼女は元々聖剣使いとして国にとって大切な存在のはずだ。


「……さすがに反対されるだろ」

「父上には置き手紙を残してきた」

「それで納得してくれるのか?」

「まあ、大丈夫でしょ」


 小さく舌を出すメイリス……どうやら、今更「帰れ」と言われても聞かない様子。

 彼女としては既に旅をすることは決まっている……俺はザックを手に持っている彼女を見ながら一つ質問をした。


「旅の理由は?」

「アルフはまだ脅威が残っているかもしれないと思ったんでしょう?」

「まあな」

「それに、今更学園生活を送ろうという気もない」

「まあ、間違ってはいないよ」

「私も同じ……もちろん、学園で学ぶことだってちゃんと意味はあるけれど、今はきっと、それよりもやらなければいけないことがある」


 その言葉と共にメイリスは俺の目を見た。


「だから、アルフと一緒に旅をする……理由としてはそのくらいかな」

「……わかった」


 俺は彼女の意思が固いと感じたため、それ以上の言及はしなかった。だから、


「なら、一緒に旅をしよう」

「目的地とかはあるの?」

「特には……ただ、オーズローの友の記憶を得たことで、大昔に研究していた場所とか、そういうのが国内に点在しているのはわかった。そこをまずは調べようかなと思ってる」

「そういう場所を調べて力を得ている人がいるかもしれない、と」

「ああ」

「ん、わかった。なら――」


 深夜、誰もいない町の中で彼女は笑う。


「頑張ろう、アルフ」

「……うん」


 返事と共に、俺達は町を出る。月明かりしかない街道だったが、町を離れ少ししてメイリスが魔法の明かりを生み出したため、視界を確保しながら歩みを進めることに。


「ただ、メイリス。一つ注意がある」

「何?」

「この旅……正直、終わりがあるのかもわからない。俺達二人なら、きっとどんなに過酷な状況でも切り抜けられる……そんな風に思うけど、問題は果てがないってことだ」

「どれだけ旅を続けても、戦い続けなければいけない、ってことだね」

「そうだ……もしメイリスが辞めたいと思ったら、いつでも王都へ帰っていいから」

「アルフはやる気なんだ?」

「オーズローの友……彼の記憶を宿したんだ。そして、彼の作った道具で俺は強くなった。なら、その願いを聞き届けるのは責務だと思う」


 そう――ここについては俺の本心だった。指輪がなければ俺はこの世にいないし、何より彼の願いもしっかりと宿したのだから。


「ん、アルフの主張はわかった……どこまでも付き合う、と言いたいところだけど未来はわからないし、ね」

「そうだな」

「私は頑張ってついていくよ。それに、別に戦いだけやろうとするわけじゃないでしょ?」

「まあ、そうだな。旅先で観光名所とか、美味しいものとか探すのもありかな」


 その言葉でメイリスの顔がほころぶ……旅の仲間となった俺達の間に流れる空気は非常に良い。


「どれだけ長い旅になるのかわからないけど、よろしくメイリス」

「こちらこそよろしく、アルフ」


 ――そうして俺達は旅を始めた。明日の朝、王都はきっと大騒動に陥ることだろう。


 いや、もしかしたらこうなると察していたかもしれない……どちらかわからないけれど、さすがに追っ手がくるようなことはないだろう。


「家出とかじゃないし、定期的に連絡はしないといけないかな」

「私が父上に手紙を書くよ」

「ああ、それがよさそうだ……でも、聖剣使いが王都を離れて本当に良いのか?」

「別に離れるな、なんてルールはないし」

「ルールはないだろうけど……そもそもこんな事態になることは想定していないだろう」

「かもね」


 あっさりと返答する彼女。その態度に俺は苦笑しつつ、


「ま、いいけど……ただ、もしメイリスを連れ帰るような騎士がやってきたらどうする?」

「その時はまあ、全力で逃げれば」

「なんだかなあ……」

「そうなったらその時考えよう」


 もしかすると彼女の頭の中に、そんな自体も想定できているのか……再度俺は苦笑しつつ、月明かりの下、俺は彼女と共に歩み続けた――


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