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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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決戦の舞台へ

 俺達が町を訪れて三日後には作戦を行う騎士達が集まり、いよいよ攻撃を開始するという段階となった。

 ジェイム王子は状況から「明日攻撃を行う」と発言し、俺やメイリス、そして騎士エイントも同意をした。オーズローは相変わらず動いていない。拠点周囲の魔力は高まっており、魔物が生まれていることは間違いないが――


 俺は宿の一室で明日に備えて休むことにする。明日攻撃を行い、全てが終わればいいのだが。


「……セオ」


 兄の名を呟く。オーズローを倒し、セオを捕まえて……指輪から得た記憶を考えれば、オーズローの他に何かしら敵がいる可能性は低そうだし、勝利すればそれで終わりだろう。

 獅子の魔物については極めて恐ろしいが、それでも被害をほとんど出さずに済んでいることが不幸中の幸いか……俺はふと心の中で思う。セオについて――まだ人間でいてくれと、願う。


 そうしている内に俺は眠った……指輪の力が発揮されることはなかった。もしかすると、指輪の制作者の記憶が出た以上、宿した記憶を全て得たのかもしれない――そんなことを思いながら、俺は寝たのだった。






 翌朝、俺達はオーズローがいる森の中の城へ向け動き始めた。町から出たのは討伐隊の一部。先行する騎士もいるし、後詰めで控える騎士もいる。


「作戦を説明する」


 騎士エイントは俺とメイリスへ告げる。


「ジェイム王子が先行しており、オーズローの動きを逐一確認している。それによれば城内にいて、魔物を作成しているようだ」

「作業をまだ続けていると」


 俺の言葉に騎士エイントは首肯しつつ、


「これがこちらが来ているためなのか、それとも……どちらにしてもやることは変わりがない。現在討伐隊で周辺を固め逃がさないようにする準備を進めている」


 そこまで語るとエイントは小さく息をついた。


「私達がもっとも危惧すべきことはオーズローの逃亡だ。ジェイム王子としてもここで決着をつけたい……というより、これ以上時間が経過すればヤツが何をするかわからない」

「獅子の魔物以上の敵が生み出される可能性もある以上、早期に決着をつけたいと」


 俺の言葉に騎士エイントは再び頷く。


「その通りだ。ジェイム王子はアルフ君からもたらされた情報によって、放置すればさらなる魔物が生み出される可能性が高いと結論づけた」

「今でも手に負えない敵なのに、それ以上の何かが生まれたら……」

「そういうことだ」


 事態は深刻――俺とメイリスは表情を引き締める。それを見た騎士エイントは、


「戦意は十分だな……とはいえ、アルフ君、兄のセオドリックのこともあるだろう。彼がオーズローからどういう指示を受けているのかはわからないが、何かあればそちらに動いてもらっても構わない」

「……わかりました」


 ――さらに言えば、オーズローには他にも部下がいるだろう。そうした面々もまた城内にいるのか。それとも、別所で待機しているのか。

 もし後者であれば、俺達は誘い込まれているかもしれない……が、それを察知する手段が今の騎士達にはある。最善は尽くした……後は、それが実を結ぶことを祈るだけだ。


 やがて俺達は森へと辿り着く。なだらかな坂が存在しており、そこを突き進めば、オーズローが待つ居城に行ける。


「来たな」


 そして先行したジェイム王子と合流。


「現在時点でオーズロー達の動きはほとんどない。魔物を生成し、かつ城に閉じこもっている……ただ一つ気になる点が。観測したところ、城内には人間と思しき存在が一人だけだ」

「一人?」


 俺は思わず聞き返す。単純に考えるのであればオーズローとセオ……他に配下がいないと仮定してもおかしい。


「ああ、魔物を生成している以上はその人物がオーズローであることはほぼ確定しているだろう」

「セオはいないということですか?」

「おそらくだが……」


 言葉を濁す王子。それで何が言いたいのか理解する。つまりセオはもう――


「……とはいえ、わからないことも多い。例えばの話、こちらの索敵に引っ掛からないよう何か処理を施している可能性も考えられる」


 ジェイム王子は言うと同時に表情を引き締める。


「今はとにかく進むだけだ……全員、覚悟はいいな?」


 その問い掛けに俺達は一斉に頷いた。


「では――作戦開始!」


 王子の号令と共に、俺達は森へと侵入する。途端、濃密な魔力……明らかに自然発生したものではない、強い魔力を感じ取った。

 その場所を目指せばオーズローの所へ向かうことができるのは間違いなく、一直線に進めるというのは朗報だろう。まさか気配を探知して一気に攻め込むとは、オーズローだって想定外だろう。


 道中に獅子の魔物がいれば厄介だが、どうやらそれもないらしい。濃密な気配を頼りに俺達は進む――決戦の舞台は、すぐそこまで差し迫っていた。


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