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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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覚悟と決戦

 ――翌日、城に入って三日目となってジェイム王子から報告が入った。


「オーズローの居所が判明した」


 思った以上に早く居所がわかった……こちらの作業はまだ続いているような状況だが、


「アルフ君達がいなくとも王都の防備をできるような状態にしてから動きたいため、ひとまず当該の場所を観察し、敵の動きを見極めて動くことにしよう」


 ジェイム王子はそういう結論を述べ、俺達は作業に没頭する。一日、また一日と経過するごとに確実に成果は上がっていき、やがて騎士や魔術師が俺や聖剣の力を応用し魔物に対する対抗手段を形成できたのは――およそ十日後のことだった。






 ある程度の区切りをつけるとジェイム王子からいよいよ俺とメイリスにオーズロー討伐の号令が掛かる。


「――いよいよ、オーズロー討伐を始める」


 小さな会議室で俺と王子とメイリス……その三人で話を始める。


「戦力は相応に揃えることを前提として、エイントなどにも力を借りることになるな」

「王都の防衛は大丈夫ですか?」


 俺は問い掛けるとジェイム王子は頷いた。


「ああ、獅子の魔物に対抗できるかどうか……検証するのは実物がいないため難しくはあるが、これまで得られた情報などから、大丈夫だろうと判断した」

「わかりました……それで、オーズローの居場所は?」

「王都から南に存在する山岳地帯……森の中に廃城がある」

「廃城?」

「元々はその周辺を治めていた領主が暮らしていた城だ……といっても百年以上前のものなので、現在森は草木が伸び放題で人が入ることもない」

「けれどそこをオーズローは利用した……」

「もし国と戦うことになっても、ある程度防戦できる場所を選んだのだろう。実際、軍で攻めるにしても非常に面倒な場所だ……しかし今回は状況が違う」


 と、ジェイム王子は自信を覗かせながら、


「今回は精鋭部隊による攻撃だ。オーズローはさすがに私達の動向には気付くはずだが、獅子の魔物に対する攻撃手段を確立した今ならば、真正面から突き崩せる可能性は高い」

「城に乗り込んでオーズローを打倒……セオについては――」

「彼が今、どういう状況なのかはわからない」


 そう言われ、俺は難しい顔をする。

 既に人を捨てているかもしれない。破滅というリスクがあってなお力を求めていたのならば、もう望みを叶えてもおかしくはない。


「……もし、私達に挑んできたのならどうする?」

「倒します」


 ジェイム王子の問い掛けに俺は覚悟を抱いて答えた。


「セオになぜ、こんなことをしたのか……問い詰めようとは思います。でも、それをする暇さえなく、騎士や王子達に危害を加えようとするのなら……戦って、倒します」

「わかった」


 俺の言葉を受け、任せることにしたようだ。ここで俺は横にいるメイリスへ首を向ける。

 それでいい、という風に彼女は一つ頷く。俺はそれに頷き返しつつ、


「問題はオーズローについてですが……」

「獅子の魔物……あれほど強大な存在を作成できることに加え、人にもその力を付与できる。そして君が見た記憶……既に人の身は捨てているだろう。動機についてはある程度見えているし、首謀者である以上、どこまでも抵抗するはず……捕縛はせず、その場で滅するほかないだろうな」


 ――王子としては、この事態をすぐにでも解決したい。だからこその判断、といったところか。ただ、オーズローがなぜこんなことをやったのか、という動機を解明する段階はとうに過ぎている。決戦に挑み、倒す……それ以外に方法はないだろう。

 その中でセオは……まだ十日ほどしか経過していないが、セオが力を手に入れるだけの時間はあるはずだ。


 もし力を得ておらず……あるいは魔物と化していなければまだ間に合うかもしれないが、正直それは希望的観測だろうか。


「……速やかに準備に入る」


 そしてジェイム王子はなおも語る。


「明後日には出発することになるだろう。獅子の魔物に対抗できる力は着実にできているが、完全でないのは百も承知だ。時間が経てば経つほどに、オーズローの方が有利になるのは間違いない。よって、ここで攻め込み決着を付ける」


 俺とメイリスは王子の言葉に頷く。


「準備そのものについては私達に任せてくれればいい。よって二人は、ギリギリまで技術の研鑽に努めてくれ。二人の力によって、この戦いの勝敗は決定するのは間違いない。どうか、手を貸してくれ」


 王子の言及に俺達は再び頷く――ついに決戦が始まるのだと、胸中で俺は呟く。


 その後、王都を出発してからの段取りについてある程度話をした後、会議は終わり解散する。俺はひとまず訓練場に向かう。とにかく、技法の完成――残り時間はほんのわずかだが、少しでも魔力を増やすため鍛錬しないと。


 研究者達は既に待っており、俺の存在に気付くと近づいてくる――今は少しでも強く。そんな気持ちを抱きながら、技術に関する検証を始めたのだった。


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