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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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国の役目

「アルフ、自分の能力が原因で……みたいな考えはやめてね」

「メイリス……」

「そもそもアルフがいなかったらとんでもないことになっていたわけで。そこからさらに負担を強いるなんてことはしないし、国だって責任を押しつけるわけじゃない」

「ああ、そこは間違いない」


 と、会話を聞いていたかジェイム王子が口を開く。


「国の危機である以上、それを是正するのは国の役目だ……アルフ君に頼らざるを得ない状況であることは申し訳ないが、オーズローとどう戦っていくのかについては私達国の判断だ。そして責任も私がとる……君はただ、強くなるために邁進してくれればいい」

「王子……」

「本音を言えば君の力も借りずにというのが望ましいが……おそらくそこまでは無理だろうな」


 嘆息する王子。その顔にはやるせない心情が見え隠れする。


「ともあれ、全面的にバックアップはするし君の責任を問うようなことはしない。そこは私の仕事だ」

「……わかりました」


 俺は応じつつ鍛錬を再開。とはいえ、果たしてオーズローとの決戦に間に合うのか――色々と疑問を感じながらも、作業は進み二日目は終了した。






 俺がオーズローの友に関する記憶を得たことで大きな進展はあったが、まだまだ課題は山積みだ。しかし、オーズローを発見するまでに準備が整うかもしれないというのは間違いなく朗報……俺はヘトヘトになりつつ、部屋へと戻ってくる。


 そして夕食をとって、眠る準備を進める……時刻は夜となり、俺は王城内で二日目の夜を迎える。


「はあ……」


 急展開により事態は大きく動いたし、間違いなく戦いの勝利に近づいた……のだが、改めて自分の弱さを認識する。

 メイリスは以前、指輪で得た力は俺が成したことだと言った……けれど、俺の力だからこそ、足らないものが多すぎる。


 悠長に鍛錬を続けていて俺は、オーズローという存在に勝てるのかどうか……今までは魔物を倒すことができた。けれどオーズローは間違いなく、俺の能力を理解し対策を立てているだろう。

 後は俺の能力によってどれだけ相手の裏をかけるのかどうか……色々考えていた時、ノックの音が聞こえてきた。返事をしつつ扉を開けると、メイリスが立っていた。


「やあ」

「どうしたんだ?」

「ちょっと話をしない?」


 ……俺が悩んでいるから、助言とかをしにきたのだろうか? 思えば、彼女に助けられてばかりだな、と思う。

 俺は承諾して彼女と一緒に廊下を歩く。そして廊下の奥に存在するバルコニー……底に通じる窓を開け、町を見下ろす形で話をする。


「今日は眠れそう?」

「……疲れ切っているし、大丈夫だと思う」

「そっか。私もなんだかんだでヘトヘトだし、ぐっすり眠れそう」


 その言葉に俺は小さく笑い、


「……話をしに来たのは、何か?」

「んー、ちょっと相談というか」

「相談?」

「戦いが終わった後の話」


 唐突に彼女は言う。終わった後……俺は想像することすらできない。


「今アルフは家を出たという形だよね?」

「そうだな」

「で、学園の寮にお世話になろうとしている」

「あるいは、騎士団の寮、とかかな……どちらにせよ、国のために色々働いているし、そのくらいは要求してもいいだろ」

「うん、そこは間違いない……あのさ」


 と、メイリスは俺へ向け、


「もし良ければ、シャルレード家に厄介になってもいいけど」

「いや、それは申し訳ないし」

「待遇とかが気になるなら、食客とかじゃなくて父上の従者とかでもいいけど」

「そこはメイリスの従者じゃないんだ」

「私は――」


 と、苦笑しつつ彼女は、


「アルフとは、対等な関係でいたい」


 言葉に俺は少し驚いた心境を受けて彼女を見返した。

 そして、彼女は何か俺へ向け言いたそうな雰囲気を出す。それがどういうことなのか……と、ここで記憶で得た能力が発動した。彼女は――


「……メイリス」


 俺は何かに突き動かされるように、言葉を紡ぐ。


「その、俺は指輪によって力を得た……それは事実だし、きっとこの戦いで俺の立場は良くなるとは思う。でも、カーヴェイル家の人間だけど俺は家を出た。実力はあっても政治的に影響力は皆無に等しいし、むしろ無駄に力を持っているから厄介者扱いされるかもしれない」

「させないよ、そんなことは」


 と、メイリスは少し強く主張する。


「国のために戦う人を、そんな風にはさせない」

「……それはきっと、シャルレード家の迷惑になるよ」

「だから、父上の従者とかはどう、と提案したんだよ。従者になったら、私は無関係じゃなくなるし」


 ――関係者となって、俺を守ろうということなのか。そして何故そんなことをするのかについては、得てしまった指輪の能力に気付いてしまった。

 それは無理だと否定することもできなくはない……でも、俺は彼女の主張を無碍にはしたくない。だから、


「……わかった。考えておくよ」

「うん」


 俺の返事に対し、彼女は満足そうな表情を浮かべた。


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