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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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新たな進展

 俺はジェイム王子の推測を聞いた後、思考する。そこで少しずつ、指輪の作成者――オーズローの友人について、おぼろげに理解し始めた。

 彼もまたアスディア王国――秘密裏に行われていた研究の一員だった。彼は言われるままに研究を進め、やがてオーズローは袂を分かった。そして彼の凶行を止めるために指輪を作成した。


「……話を聞く分において、オーズロー自身は研究を止めようとしたのかもしれない」


 そうジェイム王子は俺へと話を続ける。


「ただし、それはいつしか復讐心によって国を破壊することに変わった……いや、最初から口実に使っただけかもしれない。ともあれ、オーズローは国に対し明確な敵意があり、私達はそれに対抗しなければならない」


 そう語った後、王子は嘆息した。


「オーズローにとっては、私的とはいえ魔物に関する研究をしていた以上、アスディア王国は滅ぶべきだと考えているかもしれない。だが、今の私達には一切関係の無い話だ」

「理不尽ですね」


 俺が言及すると王子は「まさしく」と応じる。


「まったく、本当に面倒な話だ……が、さすがに嘆いてばかりいても仕方がない。とにかく対策を立てなければ」

「王子、そこについてですが……」


 俺は記憶から得た新たな知識について言及。指輪はオーズローの友人が作成したわけだが、その理論的な部分について、完璧ではないが記憶を得ていた。


「指輪の効能がそれか……わかった、研究員に色々と調べさせてみよう」






 ――そうして俺達は話し合いを終えて武具の検証を開始。ただ俺が記憶を戻したことで、事態は大きく進展した。

 結果から言えば、技術の応用によってメイリスの力も上乗せすることができる可能性を見いだせた……そしてこれらを応用すれば、騎士達も魔物を倒せるように――


「ある種、オーズローの友に助けられている形だな」


 と、作業中にジェイム王子は俺へ告げた。


「指輪は今有効な情報を提供した……その力によって状況は大きく動く。オーズローとの決戦が近いことを踏まえると、決着は思った以上に迫っていると言えるかもしれない」

「……作業が一段落したら、どうすれば?」


 俺の質問にジェイム王子は少し間を置き、


「修行に専念しよう」

「修行、ですか」

「新たな記憶を得たことで、さらに強くなれるだろう。そして騎士メイリスはさらに聖剣の力を引き出す……状況は大きく進展しているため、思った以上に準備は早く整うかもしれないな」


 そうであるといいが……胸中で呟きつつ、俺は作業を進めることに。研究員と話し合い、少しずつ進めていく。

 そうした中、俺は宿した記憶――それらの技術を一つに結びつけることに成功した。それぞれが持つ能力を集結させることで、より強力な剣戟を放てるようになる……ただ、ここでどうしても解決しなければいけない問題が。


「俺の魔力については……」

「そこについては、道具などで補いたいところですが……」


 研究員はそう言うのだが、これが上手くいかない。というのも俺の魔力によって記憶の技術を扱っているわけだが、これを何かしら道具などで補助しようとしても上手くいかないのだ。

 頭の中には技術を一つにした剣戟についてイメージは出来ている。オーズローの友が研究者だったためか、どういう形になるかという理論が頭の中で類推できるようになったのだ。


 しかし、現実はそうならない……これは俺の魔力量が根本的に少ないことが原因である。


「魔力についてはじっくりと鍛練を積むしか方法はないのですが……」


 そう研究員は話をするが、現状ではそう待ってもいられない。よって研究者達は俺の魔力をどうにかする作業を進める。道具などで補う手法ができればいいが、記憶の技術を俺の魔力に変換――その流れが完全に解明できないため、そちらの手法を検討しつつも俺の魔力を短期間で増やす方法を考える。

 とはいえ、付け焼き刃ではどうにもならないのもまた事実……大きな壁にどうすべきか悩んでいると、メイリスが近づいてきた。


「そっちも大変そうだね」

「……メイリスも?」

「私も試行錯誤しているような感じ」


 聖剣の能力を引き上げる――そういった技法については検証段階ではできたみたいだが、彼女もそれを扱うのに苦労しているらしい。


「でも、国を脅かす魔物を倒す必要がある以上……やらないと」

「騎士達に対抗手段を構築するのは……」

「ある程度目処がついた。なんというか、一定のレベルまで到達するのはそう難しくないけど、よりそれを強くする、というのが難しいみたいだね」


 俺もそうした壁にぶち当たっているのだろう……そもそも魔力を増やすというのは、普通にやっても困難だ。

 魔力の保有量は、人間の才能に近いものだ。ここについては努力でどうにかなる、というものではない。この差が容易に埋まるのであれば、世界にはより多くの騎士や魔術師がいる。


 そんな中で俺は落ちこぼれ……何も発さずにいると、全てを理解したようにメイリスは口を開いた。

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