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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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37/50

私的な研究

 目が覚めた。俺は夢の出来事――新たな記憶を得た時、しばらく起き上がることができなかった。

 やがてのそのそとベッドから起き上がって支度を始める。部屋を出て、昨日教えられた道順で食堂に向かい、一人で朝食をとる。


 食べ終えた後、俺は昨日と同じ訓練場に赴いた。まだ検証のための魔術師などはいなかったのだが、メイリスとジェイム王子の姿はあった。


「おはよう、昨日はよく眠れたか?」


 先に声を掛けたのは王子。


「さすがにいきなり王城内で寝泊まりするというのは、慣れないと――」

「王子」


 会話を遮り俺は告げる。


「調べて欲しいことがあるんですけど」

「……どうした?」


 そこで俺は、ジェイム王子とメイリスへ向け夢で見たことを話し始めた――






「……ふむ」


 一通り説明を聞いた後、ジェイム王子は顎に手をやり何事か考え始めた。


「その話……君が記憶を得た人物はオーズローの友人だったと?」

「仮にそうだとしても色々と矛盾が生じますけど……」

「確かに。話の流れから考えると、復讐のために砦で研究をしていて、彼の友人が呼び戻した……と考えられるが、ではなぜ、見た目が若いのか」

「その辺りは研究の成果によって寿命が延びたとか、説明はつきますけど……」

「他にも疑問はあるな……ただその中で研究内容……そこについては気になるな」


 語った後にジェイム王子は難しい顔をした。


「魔法の研究の中には、歴史から葬られたものも確かに存在する……公的なものでなければ、記録なども残っていないだろうから調査は難しいが……」

「それでも、調べられますか?」

「かなり重要な手がかりではあるな。色々と探ってみよう」

「ありがとうございます……それと、指輪についてなんですが」


 ――俺が今回見た夢。その人物は間違いなく指輪の制作者であり、垣間見た記憶はひどく断片的なものだが、指輪の能力について情報が入ってきた。

 それによると、この指輪は彼の友人――おそらくオーズローに対抗するため、生み出された物のようだ。彼が保有していた技術を活用して作られた……そもそも彼らが研究していたのは、どうやら歴史に葬られた存在――俺が記憶で得た騎士や王子が戦っていた存在に関する研究だったようだ。


 オーズローはそれを利用して漆黒の魔物を作成した。そうした所業を止めるべく、記憶を集め指輪が生まれた……話の構造としては、こんな感じのようだった。


「なんだか一気に進展したね」


 俺の説明に対しメイリスは告げ、こちらは首肯する――このタイミングで多くの情報を得た、というのは決して偶然ではないだろう。指輪は俺にベストなタイミングで記憶を得られるようにしている。今回もおそらくそれと同じだ。


「……友を止めてくれ、ということなんだろうな」


 俺の言及にメイリスは首肯し、


「アルフ、敵の居所とかはわからない?」

「さすがに、難しいな……ここはアスディア王国の力を借りないといけない」

「そっか……私は聖剣の検証を続けるとするよ」


 いつのまにか訓練場には多数の研究者がいた。そしてメイリスが声を上げるとそうした人物が彼女を囲むように動き作業を始める。

 一方で俺の方は……研究者が近づき検証開始。しかし昨日とは大きく異なり作業はスムーズに進んだ。とはいえ実戦レベルで使えるようにするためにはもう少々時間が必要だろう。


 オーズローを見つけるのが先か、それとも技法完成が間に合うのか……そんなことを考えている間に、時間は経過しやがて昼食の時間に。そこに至り、王子が報告へやってきた。


「極めて短時間だが、多少ながら調べられた……正直、これを話すのは国としてあまり良くないことではある」


 そう前置きをした王子の顔つきは、険しいものだった。


「けれど、君からもたらされた情報だ。ならば、話すのが筋だろう」

「……それほど、深刻な内容だった?」

「というより、おそらくオーズローを含め、彼の友人が研究をしていたこと……魔の存在に関する研究であるのは間違いないが、それは公的なものではなく一部の王族や国の重臣達が行っていたことらしい」


 なるほど、私的な研究――であれば記録がないのも頷ける。


「オーズローは技術を活用して魔物を生み出し、彼の友人はそれに対抗するべく記憶を集め指輪に託した……これは推測だが、オーズローが再び出奔したタイミングで彼の友もまた研究機関を離れ、記憶を何らかの方法で回収し……君が訪れたあの砦。そこに辿り着き指輪に力を付与したのかもしれない」

「……つまり、俺が読んだあの手記は――」

「事実、指輪は役に立たなかった。けれどそこにオーズローの友人が訪れ、本物となった。そうしてあの砦の中に指輪が残り……君が見つけた」


 そこまで言うと、ジェイム王子は笑みを浮かべ、


「そして指輪の所有者となった……そういう流れなのだろうと私は思う――」


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