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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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仕事の依頼

「――現在、オーズローの居所については調査中だ」


 ジェイム王子は俺達へさらに続ける。


「ただ、交戦した際に様々な情報を入手した。追跡系の魔法によって、ある程度までオーズローの動きをつかんでいる。現在は潜伏してしまったが、捜索部隊は優秀だからな。そう遠くない内に居場所を解き明かすだろう」

「……私達は」


 と、メイリスが語り始める。


「敵の居所が見つかり次第、討伐へ赴く?」

「そうだ……が、ここで一つ問題が生じる」

「問題?」

「君達二人が外へ出た場合、その隙に王都が狙われれば大惨事になる」


 確かに……獅子の魔物は凶悪だ。まともに攻撃が通用しない以上、防衛のために俺かメイリスが残ることも選択肢に入る。


「オーズローが何を考えているか完全に把握できたわけではないが、国に対し恨みを持っているとしたら、アルフ君達を無視して王都に狙いを定める可能性は十分ある」

「なら……どうしますか?」


 メイリスが問う。ジェイム王子はそこで微笑を浮かべ、


「ここで、仕事の依頼をさせてもらう。端的に言えば、獅子の魔物に対抗できる手段の構築……それを手伝ってもらいたい」


 手段の構築……なるほど、俺達の能力を参考にしてというわけか。


「理想としては敵の居所がわかるまでに構築できるといいのだが……それには聖剣の解析と、指輪の検証を進める必要がある」

「そうですね」


 俺は同意する……聖剣なんて、アスディア王国ではいくらでも調べているだろうし、手段の構築、というのは可能なのか。

 そして、指輪について――わからないことばかりのこの道具について、どこまで調べることができるのか。


「わかっているとは思うが、どこまでやれるかは未知数だ。けれど、このタイミングしかやれる機会はないだろう……二人に多少なりとも無茶を要求するかもしれないが、それでも頼まれてくれるだろうか?」


 その言葉に、俺もメイリスも頷いた。






 そして――王城の一角、訓練場で俺達は作業を始める。とはいえまずは指輪の検証から始める必要があった。俺は多数の研究者に囲まれ、指輪の調査が始まる。


「ふむ、何の変哲もない道具ですね」


 武具を解析する魔術師はそう感想を述べた。


「魔力を流しても?」

「はい」


 俺が返事をすると魔術師が魔力を使って検証を始めた……のだが、


「何も効果がないようですね……やはりアルフレッド様にしか効果を発揮しない様子です」

「なぜ……というか、そんな特性を付与できるんですか?」

「極めて高度な術式が付与されている、ということでしょうか……疑問点は多々ありますが、ここを解明しなければ魔物討伐に活用することは困難でしょうから、調べていきましょう」


 そうして魔術師達は作業を進めていく……その一方でメイリスの方も聖剣について検証を進める。元々アスディア王国が管理していたため、色々と調べていたはずだが、今回出現した魔物に対抗するために、さらに深く検証するということになった。


 メイリスとしては聖剣でも倒すのが難しいという現状であるため、聖剣そのものの強化も欲しいと要望。国側はそれに同意し、検証を進めることにした。よって俺達の戦力強化と検証を同時並行で行うこととなるわけだが……果たしてできるのか。


「――それでも、やらなければならない」


 検証する様子を見ていたジェイム王子に対しできるのかと問い掛けた時、彼は言った。


「君や騎士メイリスがいたからこそ、被害は抑えられている……しかし、魔物の恐ろしさがどれほどのものなのか、理解はできるだろう?」

「……そうですね」


 俺は賛同する。現時点で魔物に対抗できているのは俺とメイリスだけ。それはすなわち、国で対処できる人間がたった二人であることを意味している。


「オーズローという人物が国の破壊を求めているとしたら、今後も同様の魔物が出てくるだろう。今までは大した被害もない状況だが、もしオーズローが本腰で国へ挑んできたら、どうなるか」


 そこまで言うと、ジェイム王子は腕組みをした。


「大地の力を利用した大規模魔法なら、おそらく通用するだろう。こちらが調べた限り、恐ろしい防御能力が特徴であり、特段仕掛けがあるわけではないからな。しかしそんな魔法を連発できるような状況にはない……事実上、対抗手段が君達しかいない状況だ」

「国としては危険な状況だと」

「その通りだ」


 ジェイム王子の返事に俺は改めて状況の悪さを理解する。オーズローが本気を出して進行を始めればどうなるのか――ジェイム王子はそれを深く理解している。


 だからこその検証だが……すぐに効果が出る保証はない。しかし、可能な限り早急に対処しなければならないこと。訓練場にはさらに魔術師がやってくる。その人数は研究者全てが集まっているのではと思うくらいのものであり、王子が今回のことについてどれだけ懸念し、また国として本気で取り組もうとしているのか――それが如実にわかったのだった。


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