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悲劇の英霊を継ぎし者  作者: 陽山純樹


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33/50

推測と確信

 やがて俺は王宮へ足を踏み入れる……そこは一度も入ったことのない場所であるため、俺にとっては新鮮に映った。

 白を基調とした室内は魔法の明かりによって煌びやかに照らされている。窓から差し込む光だけではおそらく足りない部分を、昼夜問わず照らす魔法により補い暗闇をなくしている。


 城内はどこか硬質な空気に包まれ、立ち入った人間の気を自然と引き締める効果がある……とはいえメイリスなんかはいつもの調子で変わらない様子……もしかすると、訪れた経験があるのかもしれない。

 騎士エイントに案内によって、俺とメイリスは客室へと通された。広く俺にとっては落ち着かない部屋を見回しつつ、ソファに座り待つことに。一方で騎士エイントは部屋を去り、


「さて、どうするのかな」


 隣に座りながらメイリスが呟く。彼女の言葉の意味は、


「国がどう動くか……ってことだよな?」

「うん、さすがにオーズローという人間を放置することはないと思うけど」

「相手が凶悪な魔物を従えているわけだし、俺達にその討伐を頼むってことなんだろうけど……」

「国からの正式な依頼、という形かな?」

「たぶん」


 俺はセオを追うと決めているし、国がオーズローを追うならばそれに従い協力する気でいる。オーズローという人間を探せば、必然的にセオに近づくことになるだろうから。


 少しして、客室のドアがノックされた。メイリスが応じると扉が開き、現れたのは――


「どうも」


 と、軽い挨拶をした男性――なのだが、俺はひっくり返りそうになった。

 その人物はシンプルな純白の衣装を身にまとった、金髪の男性……発する気配は圧倒的であり、見るものを魅了し自然と平伏しそうになる。


 そして俺がひっくり返りそうになった理由は……目の前に現れた人物が王位継承権を持つ人物であるためだ。


「一応、自己紹介をしておくか。私の名はジェイム……と、必要はなさそうか」


 俺は小さく頷く――王位継承第二位、ジェイム王子。


「ここに私が来たのは、今回の作戦……というか魔物討伐の指揮を執っているためだ」


 そして王子は語る……王子が関わっていることは初耳だが、


「それは初めて聞きましたけど」


 と、メイリスも同じようだ。


「ああ、そこについては今から説明しよう……といっても、そう難しい話でもないが」


 ――俺達はテーブルを挟む形でソファに座り、話を始めることに。


「まず、数ヶ月前から凶悪な姿をした魔物……二人が打倒していた獅子の魔物だな。その目撃情報がいくつも届き、私が王族代表として関わることになった。一応、騎士として活動している身だからな」


 と、自身の胸に手を当てつつ王子は語る。


「そうした中、一度戦闘になった……結果から言えば、魔物に対し有効な攻撃がなかったため、退却した。戦斧などという物騒な物を携えている以上は、自然発生した魔物である確率は極めて低い。よって、誰かが生み出したものだと考え調査を始めた」


 そこまで言うと王子は小さく肩をすくめる。


「魔物を生み出すなんて、結構な資金が必要であるため貴族の誰かが関わっている可能性を踏まえ、信頼における者だけで調査を行っていた……その中で聖剣級の武器でなければ倒せないのではないか、という結論に至り騎士メイリスに手を貸してもらった」

「私でも力不足でしたけど」


 そうメイリスは言う……と、ジェイム王子も同様の意見なのか、


「ああ、まさか聖剣でも撃破するのに苦労するほど……というのは、こちらも想定外だった」


 王子はそう述べた後、俺へ視線を向けた。


「しかし君が登場したことで事態は大きく変わった」

「……俺が強くなったきっかけである指輪について、詳細がわからないので不気味ではあるんですけど」

「記憶を封じ込める、という道具そのものは存在していないわけではないよ」


 と、王子は俺へ解説する。


「ただし、記憶によって強くなるというのは前例がないな」

「……やっぱり、不可思議な道具だと」

「そうだ。しかも聖剣ですら苦戦する魔物を倒せるだけの記憶だ。道具の作成者はもしかすると……私達が今相手をしている敵――それに関連したものかもしれない」


 それは一体……疑問に思っていると、王子はさらに続けた。


「君が指輪を得た経緯については聞いた。それが廃棄された砦を占拠していた人物の手元にあったことは偶然だと思う……奇跡的な巡り合わせて君は指輪を手にして、その所有者として認められ力を得た。記憶を封じただけではなく、扱う人間に条件を課した……わからないことだらけだが、一つ推測していることがある」


 推測――言葉を待っていると、王子は声のトーンを落としながらさらに語る。


「指輪に封じられた記憶……悲劇を身に受けながらそれでも強大な敵と戦い続けた者達……それはきっと、今私達が戦っている存在と、同種と言うべきものなのではないか」


 そう語った王子……推測と言ったが、その表情は確信に満ちているようだった。


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