前夜
バトル物が書きたくなったので書いてみました
闇夜のスラム街、その沈黙に爆音が鳴り響いた。
「目標は現在逃走中。北西方向に約50m。挟んで捕まえる」
「了解」
屋根と屋根を伝いながら二人の男がフードをかぶった男を追っている。
ドン、ドンと追いかける男が発砲した。
「っ!」
フードの男は後ろを振り返り、進行方向から迫ってくるもう一人の男に気づかない。
そしてもう一人の男も10mほどの距離から銃弾を放つ。
カキン キン
フードの男は銃声に気づき、どこからともなくあらわれた2mほどの漆黒の鎌でそれを防いだ。
そして、風にあおられ、フードが取れ、その左目に大きな傷をもつ顔があらわになる。
「あれは...。人相を目視、それに加え大鎌を所持。おそらく3幹部の一人、〝破壊屋〟ゼノ」
「二人じゃ無理だ。本部、増援を要請する」
『増援はもうそちらに向かっております。一人はもう到着するかと』
「了解」
二人に安堵の表情が見える。
「おいおい、てめぇら俺と闘んねぇのかよ」
〝破壊屋〟と呼ばれた男が二人を挑発する。
「闘んねぇならこっちからいくぜ!」
破壊屋が片方の男に切りかかる。
「くっ、」
男にその鎌が当たるか当たらないかというその瞬間、溶けた鉄のようなものがそれを防いだ。
「三番隊、第二班班長、黒鉄修斗、ただいま現着」
『一人でもちこたえてくれ、もうすぐ隊長がくる』
「了解」
〝破壊屋〟ゼノは嬉しそうに言う。
「おまえ、能力者だろ。潰し甲斐がありそうだなぁ!」
破壊屋と黒鉄の両者が戦闘態勢にはいる。
「さぁ、闘ろうか」
その言葉の瞬間、両者が攻撃する。
ゼノはその大鎌を振りかざし、黒鉄は己の肉体を鉄化し、殴りかかる。
決着は一瞬だった。
「つまらねぇな」
ゼノの鎌が黒鉄を両断した。
「こんな雑魚じゃ相手にもならねぇ。隊長を連れてこいよ!ここはあいつの管轄だろ」
ゼノがそう言ったその時、後ろから鉄の拳が放たれた。
「てめぇ、まだ生きてやがったのか」
ゼノはその拳を紙一重でかわす。
「俺は鉄だからな」
両断されたはずの黒鉄は平然と立ち上がり、答える。
「はっ、自身の体を液体の鉄化し、切断面を直したのか。便利なもんだなぁ、能力ってのは」
「そういうことだ。お前の攻撃で俺は死なない」
「だったら再生の余地もねえぐらいに細切れにして破片吹き飛ばせばいいんだろ」
「っ、」
ゼノが黒鉄を切り刻む。
「こんな風になぁ」
ゼノが勝ち誇った笑みを浮かべるとその瞬間、炎の柱が立ち上った。
〝火柱〟
右目に眼帯をつけた白髪の男が現場に現れた。
「三番隊隊長、焔火炎、ただいま現着」
炎とその姿で確信し、ゼノは叫ぶ。
「きたか、焔火ぃ!」
焔火が刀を抜き、ゼノに切りかかる。
キン カキン キン
ゼノはそれを鎌で受け流し、戦いが始まる。
その戦いを遠くから俯瞰している者がいた。
「なんだ、ありゃぁ」
男はに盗んだリンゴをかじりながら、笑みを浮かべた。
閲覧ありがとうございました