09.転生
そしてオレが結構な速度でかき回してしまった国中の文化は、相乗効果として他の加護の相手と商売を始めるのが主流になりつつあった。
魔物の解体屋だけだった店が、水の加護主の奥さんが”分離・抽出”でブイヨンを量り売りにしたり。
土の加護の雑貨屋が、火の加護の鍛冶屋と組んで新しいガラス食器やお酒ごとのグラス、ジョッキを作りつつ、熟成に良い樽や家で作れる保存用のお酢瓶などの販売が各地の村で起きた。
元々、村人のオレたちは石造りの家に住んでいても実体は集落か江戸の長屋のようなもので、井戸も水の加護主の誰かが気づいた時に”給水”
食事時に竈の火起こしに、火の加護主が”着火”家の破損があれば、土の加護主が見かけて”壁修復”と、補い合う関係だ。
協力体制が基本の中、店も共同という発想に違和感がないんだろう。
住所や名前を記載する習慣はないが、この国は家の前に成人したら所持する加護を名札のように張り出す。
つまり困って駆け込んだ人が、それを見て探している加護の持ち主がいるか声をかけることが出来るシステムだ。
我が家もたまに夜中に、”浄化”で回復できない毒性の病人の家族が、光の加護が持つ、母の”解毒”スキルを探して尋ねてくる。――行きはいいが帰りを自力にするのだけは止めてほしい。また迷子旅行に出るから。
そういうものがこの国では普通の景色で、店先にも加護を張り出すのが当たり前だったから変化が日に日に見えてくる。
ただ、村を流して歩く行商人たちが、開発されたジョッキなどの名前が”製作・名付け”が起きなくて職人たちが不思議がっていると噂していて冷や汗をかいた。
ガラスや樽の純度や生成がオレたちのほうが早かったせいか、後から一般で派生していったものもオレの前世知識の名付けのカテゴリー範囲だと上書きは起きないらしい。
きっと日本から異世界転生した仲間が後からきたら、楽できたんじゃないだろうか。
エルの知識と、前世にオレの超能力で拾った知恵はあらかた試行錯誤でやりつくしているので、”品種改良・名付け”の罪悪感をごまかしてみる。
きっとオレとエルが全属性加護という妙にチートなギミックでなかったら、もっと早く友達が出来ていたかもしれない。
いや、それは多分責任転嫁だ。自覚はある。
5歳からは、味噌と醤油を目標に動くことにした。
といっても、この国は米が主食で小麦は品種改良したもののイマイチな反応だ。
ビールや焼酎に一点集中しかしていない。
パンや麺も早く食べたいし、食べさせたいんだ、オレは。
ピザにパスタ、パスタにうどん、そうめん、ハンバーガー、唐揚げと夢は広がる。
そのためにはチーズやバターも改良しないといけないし、デザートも作りたい。