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守護霊とうっかり道連れ転生  作者: 相木ナナ
4/28

04,転生

  

 鍛冶屋や彫金細工師には、火の加護者。チーズ屋や油屋、風呂屋、治療師には水の加護者。

 旅商人や素材の解体加工には風の加護者。土建築や農家、石加工匠、皮なめし屋には土の加護者というように、親と同じ加護ならそのまま店を継ぐパターンがこの世界の職業事情。

 牛肉や豚肉というものが存在しないのには驚いたが、魔物が美味しく食べられて害獣駆除を兼ねているせいだった。

 さすがにミルク系統の必要性として、山羊や牛は居るが村単位で飼って、その牧草などを集めるのが子どもたちの主な仕事になっている。

 魔物の中には美味なミルクを持つものも居るが、”空間収納”能力がないと持って帰る難易度が高い。


 ここはかなり原始な世界なので、お金は通貨として存在はしているが村人にはまだまだ物々交換で通じる。

 それぞれ加護によって手に入るものが偏るので、その辺は助け合い精神で大雑把な交渉を片付けるのが当たり前だ。

 さすがに見知らぬ人の困った話にほだされてホイホイ物をあげるのは、うちの父さんくらいなものである。

 そして村でそうそう見知らぬ人はいない。絶対に父さんはカモだ。



 転生して、迷子になる母と困った父を持ったオレは、そんなパワフルすぎる両親を武力で反省させる姉の下に生まれてずっと忙しい。

 目を離すと消えがちな母は、”空間収納”のギミックのお陰で普段は他の住人の目の届く場所で子守や、手伝いに出かけ。

 父は畑に出て、たまに着ていた上着すら人にあげて帰宅し、冒険者の仕事から帰った姉に反省を強いられる。

 感情と愛情がなかったオレが、今ではこうして呑気に当たり前に人と付き合っていけるのはそんな家族のお陰だ。


 ただ、転生者の宿命というか、悲しいさがとしてか、食文明が最大のオレの敵だった。

 

 この村の主食は米。だが、いわゆるタイ米――インディカ種の米だった。

 さらさらしているので、おにぎりなどの文化も当然ない。

 赤ん坊だったオレの両親たちが食べているものが、ドジョウのスープ、淡水魚のパイだと知って絶句した。

 味付けも塩のみの、最強なシンプル。だが、絶対飽きるワンパターン。

 これは将来、同じ食べ物を食べないといけなくなると考えたオレは手を打った。


 というか、自分は未だ動けないのでエルを使ったのだ。

 糖質や水分吸収率などの”品種改良”をするのは、今思うと木の加護魔法・土の加護魔法・光の加護魔法に超能力を複合した荒業だった。


 そうした改善を経て、無事日本の米――ジャポニカ種の米を生み出して、新種のものを生み出すと製作者が名付けできるというシステムを知る。

 前世でも星や化石などの発見をした人間の名前が使われたり、命名できたりするものに近いのか。

 一回、制作した時に付けた名前は木の加護を持つ人間が加護で”鑑定”すると同じ名前が見えるらしい。

 初回は父さんで試したので、やや不安な言い方をしたが、未知のものには名前なしの上に製作者が上書きしたものが世界認識される――ということだ。

 

 なので、今は米といえばオレとエルが生み出したジャポニカ種の米を指し、もち米も同様。先に浸透していたインディカ種も”品種改良”でジャスミン米になった。

 どんな土壌でも味が変わらないか、テストは必要だ。

 エルを他の村に瞬間移動させた後に、水田を作って、発芽の”時間加速”を続けて収穫して回ったせいで国中に新しい米たちが普及したのは、計算外の成功だ。


 自分たちの村、アシャラ村というくそ田舎で突然いい米が出回ったら危うく目立っていたところだ。

 ちやほやされるかも――という気持ちはあり得ない。

 前世では魔法がまずなかったにせよ、まるで人殺しか何かを見るような差別と恐怖の視線をオレは忘れられなかった。

 絶対に目立ってはいけない、と改めて誓ったオレは、”迷彩隠形”という影魔法と光魔法の複合魔法を編み出す。

 エルにも、このアシャラ村という辺境田舎の傍の、ミスパル森林で作業するように頼んだ。

 湖も鉱山もある資源の豊かなこの森林が放置されているのは、魔物と瘴気で冒険者すら森の手前までしかこないから。

 

 美味しい米の次は、だし成分だ。塩オンリーはマジで泣く。

 海には昆布や、カツオに似た魚、海老とだし素材が多いが、水上、水中作業は水の加護がないと魔物に襲われるので高級品だった。

 精霊王のエルには何の障害にもならず、昆布の乾燥と天日干しを行っているうちに、旨味付与、栄養付与という新たな能力の使い方を見つけた。

 難敵は鰹節だった。

 

 カツオっぽい魚を三枚おろし、しま模様の細くて脂が少ないものだけを選ぶ。次は骨や鱗・皮を取り除いてすのこ張りの竹の蒸籠に並べる、地道な籠離れ作業。

 そして身のかけらをすりつぶして練ったもので修繕して傷を直すと、カビ付け・荒節にかつお菌を吹き付ける。

 木樽に重ねてサウナ状のまま20日ほど発酵。隙間を作らないように籠に並べて重ねて煮る。その際に、湯の中に切り落とした頭や骨を入れておくと縮むなどの変形を避ける。

 差し湯しながらおよそ一時間半。煮熟と薪で焙煎、燻して数日寝かせて燻すのを15回繰り返す。

 最後に天日干し、刷毛でかびを落としてから樽に寝かせる。湿った部屋で2週間でカビと天日干しを4回以上繰り返す。


 前世での知識だったが、時間は全て魔法で加速させたとはいえ、こんなに大変だったのかよ……と慄いた。

ストーリーの進展が遅すぎてすいません……

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