06.変化
「肉を柔らかくするのに、いつも料理教室とかで包丁で切り込み入れてるじゃんか。でもこれで肉を押せば針が筋組織破壊するから、分厚い肉でも薄い肉でも均一に穴があくなって」
「おお、なるほどなぁ!これで肉を殴ればいいのか」
「言い方……!肉も部位によっては潰れちゃうと美味しくないところもあるし、この大きさだと加護がないと子供のオレにも押せないから使いにくいよなって」
なにより、水の加護でもあれば”洗浄”で奥まで殺菌洗浄できるけど、皆があるわけではない。
七つの加護の属性を持つオレやエルは、テスターとして使えないのだ。
力に補正が入る火の加護を持つ姉さんが、この試作品テンダライザーが重すぎると言った一言で不採用である。
ここは、本職に聞くべし――と思って訪ねてきたのだ。
「ふんふん……そういう理由なら」
ナリスさんが打撃殺傷みたいな試作品を、鍛冶職人の顔でいじっていると
「アスランちゃんが来てるわよ!!」
ナリスさんの奥さんがフライパンを熟練のプロの手付きで、ドラのように打ち鳴らして告知した結果が出た。
ちょっとした人数の大人の壁に囲まれるオレ。
何も知らない人から今のオレはどう見えるのか、是非実況してほしい。
「お嬢ちゃん先生、味噌の具合を見てほしいんだよ!あと砂糖の使い分けをもう一回教えてくれ」
「アスランちゃん、昆布醤油の使い方のおすすめを……」
「次の料理教室の空きはまだないのか?うちはもう三回くじにハズレててねえ」
「この間教わった料理方法で作ったら大人気で、先生も味見してよ」
わーお、モテ期再び!
聖徳太子のような能力はないので、全部聞き取るのは無理ってもんだ。
そして一年以上経っても、女子呼ばわりが消えないのはなんでなんだ。
否定しても頑なに取れないお嬢ちゃん呼び。お陰で未だ教室にくる人すらオレを女子だと思っている人が居る。
大体、表立っては風と木の加護持ちのオレだが、どうやって試作品テンダライザーを作ったのかも聞かれない。家もヌルいが、村もユルすぎる。




