01転生
前世では、オレは超能力者だった。
中二病だったら話はそれで済んだが、生憎とそういうオチじゃない。
テレポーテーション――別名”瞬間移動”が主にコントロール出来る限界で、他はほぼコントロール不可能。
ひっきりなしに聞こえる他人の本音。下手をすると自分の気持ちまで逆流して相手に届く。
気味悪がられたのは、まず家族からだった。
バケモノを見る目つき、そしてその内心がオレの脳内にひっきりなしに垂れ流される。
学校にも行けた記憶はない、静かな空間を求めて図書館や、博物館。海外の遺跡――立ち入り禁止になってる場所まで、移動しては絶望に泣いた。
歩み寄りたくても、能力の制御はきかない。
それでも他人の会話を盗み聞きしては、暖かで平凡な環境が羨ましくて辛かった。
体力が削れると、更に超能力が暴走すると分かってからは、なるべく食事を取ろうと意識していたけど、時々誰かが自分の後ろに居てくれるような気はしていた。
人恋しくて、そんな幻覚を見ているだと言い聞かせたあの存在こそ、エルだったんだろう。
前世のオレの超能力には、守護霊までは気づかなかった。
16歳、このまま生きていても家族に嫌悪されて、社会でうまく生きていけるとも思えない。
空間を移動出来るならば、異次元の扉を開けることが出来るかもしれないと思って――投げやりな思いでトライした結果、オレは死んで転生したのが望んだ異世界というのは皮肉な結果だが。
転生してすぐ、守護霊から精霊王として実体を持ったエルヴェシウスが赤ん坊のオレに説明してくれた。
この世界のシステム、加護魔法という存在――超能力は呪いか!という勢いでオレが持っていたままだったが、エルが実体を持って半分背負ってくれているお陰で制御出来ること。
守護霊の有無については未だ頑固なオレは半信半疑だけど、フランスは365日それぞれに守護天使が決まっているような国だったからおかしくはないのかもしれない。
ただオレは超能力者であっても天才じゃない。
ごちゃごちゃした知識の大半は、世界中の図書館などで頭に入り込んだもので、この世界を見て古代ギリシャのようだと思ったのもぼっちだから遺跡を見て回っていたせいだ。
エルは聖ラジエールという守護天使だったと申告、ただこの世界には名字は貴族だとか王族だけのものだと言うので、オレはただのエルヴェシウスだと名乗るように忠告した。
せっかく肉体を得て転生に付き合ったんだから、どこかに旅立たれても不思議じゃないが、エルは転生してからもオレの側にいて主君と呼ぶ。
オレの能力のせいかもしれないけど、なんで主君なのかは謎だ。
そんなエルとはテレパシーで会話出来るけど、意識すればお互い踏み越えないことも出来る。
だからテレパシーでもけして言わないけど、このへんてこな元守護精霊は、オレの大事な相棒で親友だ。
精霊を信仰するこの世界に生まれた人間は、必ず加護を一つは持って生まれる。
火の精霊
木の精霊
土の精霊
水の精霊
風の精霊
光の精霊
闇の精霊
大抵は火、木、水、土、風の5属性のどれかを一つ。光はレアな加護であり、闇は魔族――魔物とは別で、一つの人種?のカテゴリーらしい――に多いという。
ただ、母のマティアはそのレアな光の加護持ち。あまりレアに感じないのはそのせいだ。
姉のレヴィは火の加護。父のリバルは木の加護で、世の中には木の加護が多い。
それぞれの加護には共通する魔法も多い。
ただし、木の加護には壁は作れても防御の結界シールド的な能力がないので、世の中の花形職業、冒険者に不向きだ。
そして加護には各自固有の能力が付いて回る。
いわゆる、オートで発動している魔法のようなものだ。
火の精霊 ”灼熱の護り” 保有者への自動付与能力は、攻撃力にプラス補正。
水の精霊”癒やしの波紋” 保有者には魔力の貯蓄。
風の精霊”精霊樹の実り” 保有者に植物の基礎鑑定スキル。
土の精霊”金剛の鎧い”保有者の身体防御強化。
風の精霊”羽ばたきの音色”保有者の身体加速。
光の精霊”祝福の囁き” 保有者の毒・呪詛などのデバフ弱体化。
闇の精霊”漆黒の旋律” 保有者の身体ダメージ負荷の減少。
これらは生まれて加護を持てば、勝手に発動しているので親も子供の加護はすぐに分かる。
と、ゆーか加護の精霊の名前を呼んで使えれば確認出来た。鑑定に器具などはいらないのである。
ギリシャ系の世界観を使っているので、音もその方向性になっています。
服装説明とかしたいのに、まだ遠そうです