00.転生
二度目の16歳の誕生日が来た。
一回目の16の誕生日のオレは、次元の扉を越えようとして失敗し――そこで死んだ。
転生した今、オレは笑っている。
はちゃめちゃだけど優しい家族と、前世から相棒として一緒に居る親友と。
オレは、転生したことを感謝している。
前世では知らなかった感情をたくさん学んできたんだ。
生きているという実感と、今を楽しむ気持ち。一緒に居てくれる人と分かち合えるものがあるということ。
二度目の人生は、人間らしいものに。
だから、誕生日がこんなにもささやかに嬉しい。
「アスラン、誕生日おめでとう!」
「ありがとう、ねーちゃん」
2つ年上の姉、レヴィは積極的でオレをつれ回してくれた。
恐らく、この姉がいなかったらオレは未だ人見知りしていたかもしれない。
「お父さん、さすがにアスランの誕生日に何もないってことないわよね?」
「疑うのか、レヴィ。勿論用意したよ!……ただ、昨日困っている人を見かけて、ついあげちゃって……」
安定の父は、前世ならばオレオレ詐欺から何からあらゆる詐欺のカモにされていただろう。
お人好しすぎて、助けを求められると相手がどんな他人だろうと信じて何でも渡してしまう。
はっきり言って、この困った父の尻拭いでオレはツッコミという対人スキルを得た。
そして、33歳は前世では若すぎるが、テヘペロでいつも許されると思うな。
「お母さんもね、レヴィちゃんの荷物と一緒にアスランちゃんの贈り物を仕舞っておいたんだ~」
「さすが、母さん……出すのが大変そうだけど」
家に置いておくと、悪意ゼロで父さんが人に上げてしまう為に”収納”してくれていたか。
だけど、そろそろちゃん付けは止めほしい。可愛い我が子かもしれないが、オレは思春期男子だ。
”空間収納”のスキルを持つのは、このド田舎の村ではオレが生まれるまでは母さんだけだった。
近所の人たちの冷蔵庫代わりだったりで、整理が苦手な母さんが目当てのものを探し出すのは何時間か掛かりそうだな。
「火の精霊よ、その御力の加護を言祝ぎ参らせよ――”火槍”!!」
「主君このままだとレヴィが家を破壊する」
「わかってんなら、止めろよ!!」
エルが冷静に指摘しなくても、オレだって目の前の景色は見えている。
姉さんが炎の槍で父さんを襲うのは、割合日常的な光景で残念ながら見慣れてしまった。
オレをフランス語で主君と呼ぶエルは、我が家の居候であり、姉いわく兄弟であり、親いわく家族だという精霊王。
そう、ちょいちょい説明に違和感があるのは16年生きてきた、オレのこの2回めの人生は異世界だ。
魔法と精霊の加護があるこの世界は、古代ギリシャっぽい服装と建物が普通。
そして異世界でフランス語を使うエルもまた、前世でオレの守護霊だった。
前世のオレが死んだときに、何故か巻き込まれて一緒に転生してきたのだが、霊体から実体のある神っぽいなにかに変化した。
年は取らないし、オレが生まれた時から24、25歳の外見をして唐突に家に現れたらしい。
さすがに異世界でも驚くようなシチュエーションだったが、オレの今の両親はいい意味で普通じゃなかった。
エル――エルヴェシウス・デュマ・ラジエール。本人がいうには聖ラジエールとフランスで信仰されていた守護霊は、新しい16年間もオレに付き合ってる。
多分、暇なんだろう。それかよほどの悪因縁なのか。
世間では、オレや姉さんの兄だと思われているが、16年間同じ外見の兄がいてたまるか。
当たり前の反応なら、役所や国に報告されている――が、ここはド田舎。
両親だけじゃなく、周囲もユルかった。まあ、そんなこともある、と流せないような事実が平然と流れていく。
「水の精霊よ、その御力の加護を言祝ぎ参らせよ――”水壁”」
「あ、バカ……!!」
エルヴェシウスになんて任せるんじゃなかった。
元は聖天使だとかいうのが信じられないレベルの脳筋は、きちんとオレが指示しないと力任せな解決案を出す。
姉さんの火の加護の魔法と、エルの水の魔法が激突して凄まじい破壊音と、家の壁ごと吹き飛ぶ噴煙が舞う。
とんでもない二度目の16の誕生日が、こうして過ぎていく。
一度目の誕生日も、こうして破壊BGMがついていたっけ。どうやら平穏とは遠いのがお約束のようだな。
それでも、前回はそれで死んで今は生きているんだ。
家族や親友と誕生日を祝うなんてこと、前世では出来なかったんだから。
不慣れな一人称に苦闘しています。しばらく早いタイミングで投下予定です。