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冒険者ギルド

毎日投稿って難しい……


「ええー、改めて、冒険者ギルドカディア支部の受付嬢、ユリナ・グリフィンよ。よろしく…………本当に素で喋って平気なのよね?」

「「平気、平気」」

「そう、じゃあ遠慮なく。二人は冒険者登録に来たってことで良いの?」


 俺と祈は顔を見合わせてしまう。

 そういえば、俺達は何しに来たんだろう?


「冒険者の登録で合ってるわよ。本当はギルドマスターとの顔合わせも考えてたんだけどそっちはまた今度ね」

「ギルマスには私の方から伝えとくわ」

「そう、ありがとう」


 さっきも言ってたけどギルドマスターは不在なのか。

 どんな人なんだろう?


「さて、それじゃあ登録ね。冒険者として登録するには試験を受けなきゃいけないんだけど……」


 げっ、マジか、聞いてないぞ。


「はい、二人分の推薦状と登録料」

「どれどれ……うん、確かに受け取ったわ」

 

 リアがユリナさんに書類のようなものと金貨を数枚渡す。

 チラッとしか見えなかったけど5~6枚ってところか。

 確かこの世界の通貨は日本円に換算すると、金貨が10000円、銀貨が1000円、銅貨が100円だったはずだから一人当たりの登録料は3万円くらいか。

 結構高いな……


「じゃあ、これで登録完了ね」

「えっ、試験は受けなくて良いんですか?」

「Aランク以上の冒険者の推薦状があれば、試験を受けなくても登録できるの。この場合は……」

「私がAランクだから、二人の推薦状を書いたの」


 言いながら、何やらカードのようなものを見せてくるリア。

 どうやら、それがAランクの証のようだ。


「そういう訳だから、はい、これ」

「ん」

「えっと、これは?」


 俺と祈はユリナさんからそれぞれ一冊の本を手渡される。


「ギルドについてのルール本。登録した冒険者にはこれを渡すのが規則なの。依頼を受ける前にしっかり読み込んでおいてね」

「えっと、ちょっと言いにくいんですけど……」

「うん? どうしたの?」

「文字が読めません……」

「…………あー」


 残念ながら俺はまだこの世界の文字を覚えられていない。

 祈は少しずつ文字を覚えてきているが、それでも本一冊読むにはまだ足りないだろう。


「うーん、そしたら私が一から説明した方が良いかしら?」

「出来れば、お願いを……」

「ストップ。兄さん」


 ユリナさんにお願いしようとすると祈に止められた。


「実は文字が読めないことに対して対策がある」

「対策?」

「というわけで、オプションを開いて?」


 遊戯者(オーグメンテッド)の憧れ(・リアリティ)のオプション機能。

 そういえば、使ったことなかったな。

 祈に言われた通りにオプションを開いて、項目を見てみると、


「言語の翻訳機能? こんなものまであるのか……」

「ゲームでテキストが読めないなんて面白さが減る」


 ああ、なるほど。

 ゲーム基準のスキルだからこういう能力も付いてるってことなのか。


「じゃあ、これを有効化すると?」

「文字が読めるようになる。書けるようにはならないけど」

「いやいや、充分だろ」


 文字が読めるだけで大分楽になる。

 早速、言語の翻訳を有効化して、本を開いてみる。

 文字は相変わらずこの世界の文字だが……


「内容は頭に入ってくる。すごいな、これ」


 これなら、今後本を読むときに困らなくなる。


「えっと、結局説明はしなくて良さそう?」

「大丈夫そうです」

「そう……なら良かった。それにしても、登録しに来たってことはひょっとして二人をダンジョンに連れていく気?」


 リアに問いかけるユリナさん。

 えっと、そうなのか?

 俺と祈も問いかけるようにリアに視線を向ける。


「その予定よ」

「まだ早くない? 二人が来てから10日くらいしか経ってないでしょ」

「ダンジョンがどういうものか見せるだけよ。5階層から下に潜るつもりはないわ」

「いつ潜るの?」

「明日よ」

「なら、明日の朝までにギルドカードを発行しとくから取りに来てから行きなさいよ。じゃないと入れないでしょ」

「分かった。必ず寄るわ」


 話の流れ的にギルドカードがないとダンジョンに入れないってことか。


「ダンジョンに潜るのにギルドの許可がいるの?」

「そうよ。この国に限らずダンジョンの管理はギルドの仕事。だから、ダンジョンに潜れるのはギルドに登録した冒険者か、ギルドが特別に許可した者だけ」

「……他に、ギルドに入るとできるようになることはある?」

「そうね……後は、ギルドの持ってる魔物とかダンジョンの資料は冒険者じゃないと閲覧できないわね」


 ユリナさんの言葉を聞いた瞬間、祈の瞳がきらん、と光ったように感じた。


「是非ともその資料を見せてほしい」

「良いけど、持ち出しは厳禁だから資料室で読むしかないわよ?」

「リア。構わない?」

「構わないわよ。この後の予定は特にないし」

「ん、ならお願いする」

「オーケー、資料室はこっちよ」

「ん、行ってくる」


 ユリナさんの後を追って祈がギルドの奥の部屋に入っていった。

 残された俺とリアは近場のイスに腰を下ろす。


「カナタは良かったの? ついて行かなくて」

「ダンジョンとか魔物とかは祈の方が専門だからな」


 得た情報を元に攻略法を考えるのは祈の役目で、俺は祈が行き詰った時に何も知らない視点から意見を言うのが役目だ。

 だから、俺は最低限の情報だけ覚えて、困ったら祈に聞く、というのがお決まりのパターンだ。


「それにしても、本当に人がいないな……」


 改めて周りを見渡すが、俺達以外誰もいない。

 冒険者がいないのは分かるけどギルドの職員もいないってのはどういう事なんだろう?


「この時間は人がほとんど来ないから、私以外の職員は奥で書類仕事よ」


 話していると戻ってきたユリナさんが疑問に答えてくれた。


「イノリちゃんが読み終わるまで時間かかると思うしお茶でもどう?」

「えっと、仕事は良いんですか?」

「良いのよ。忙しいのは夕方からだし。二人共、紅茶で良いかしら?」

「ええ、お願い」

「俺もお願いします」


 俺とリアの言葉を聞いてユリナさんがカウンターでお茶を入れ始める。

 しばらく待っていると、三人分の紅茶を持ってユリナさんが戻ってきた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

「ありがとう」


 早速、入れてもらった紅茶を飲む。

 美味い。


「……こうして見ると私達と同じ普通の人間にしか見えないわね」

「当たり前でしょ。神の使徒なんて言われてるけど別の世界に住んでいるだけの普通の人間なんだから」

「でも、イノリちゃんは見た目的に天使って言われてもおかしくないわよ?」

「それを言ったらカナタだって容姿は悪くないでしょ」

「確かに良い男だけどさ~」

「……はっきり言って良いですよ。平凡な顔だって」


 二人が容姿を褒めてくれるが、俺の顔なんて日本ではありふれた顔だ。

 もし仮にイケメンだったとしても祈と比べればまず間違いなく霞んでしまうだろうが。


「そんなことないと思うけど……」

「そんなことありますよ。何せ生まれてこの方一度も告白されたことありませんし」

「…………なんでかしら?」

「謎ね」


 リアとユリナさんが首を捻って考え込んでしまう。

 いや、そんな真剣に考えることか?


「そういえば、ユリナさん。どうして俺達が神の使徒だって分かったんですか?」

「うん? そりゃあ、小さな国だからね~。見慣れない顔がいたら余所者だってすぐに分かるの。でも、この国に外から人間が来ることはまずありえない。つまり、二人は外の人間じゃない」


 外の人間じゃない=神の使徒ってことか。


「それに、勇者召喚が行われる前に国王様が「この国に神の使徒様をお招きする。皆、失礼のないように接してくれ」って言われてたし」

「それは国民全員に?」

「ええ。だからたぶん、ここに来るまでに町のみんなに見られてたと思うけど誰も話しかけてはこなかったでしょ?」


 ……見られてたのは気付いてたけど、てっきり祈の事を見てるんだと思ってた。

 アイツが視線を集めるのはいつものことだからって気にしてなかったけど、みんな神の使徒だって気付いてたから見てたんだな。

 話しかけてこなかったのは恐れ多いって思われたからか?


「取り囲まれたりするのは困るけど、もっと普通に接してくれて良いのに……」

「まあ、いきなりは難しいわよ。何せ、世界を救った勇者や聖女と同じ存在なんだから」

「長命な種族は直接見て知ってる人もいるし。余計に偉大だって思っちゃうのかもね」


 リアとユリナさんの言葉を聞いて納得する。

 確かドワーフが人の2倍、エルフが10倍の年月を生きるんだったか。

 だったら、全盛期の勇者や聖女を知ってる人間がその偉大さを今の若者に説いていてもおかしくない。


「みんなすぐに慣れるわ。あんまり気にしないことね」

「そうそう」


 ……それもそうだな。

 ていうか、リアの訓練が厳しすぎてそんなことを気にしている余裕もないんだけど。


「さて、今度は私が質問する番ね? 向こうの世界の事を教えてほしいな~」

「あっ、私も気になるわ」

「そうだな……向こうの世界には渋谷って言う一種の異世界があってだな……」


 この後、祈が調べものを終えて戻ってくるまで俺は二人に地球の事を話して聞かせるのだった。


一つ前の話のタイトルを変更しました

内容も少し付け足してます

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