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祈のユニークスキル

四日も開けてしまった……


 祈のステータスのすごさに思わず呆然としてしまっていたが、気を取り直して質問する。

 

「ユニークスキルを三つも持っているっていうのはどれくらい珍しいことなんですか?」

「ないわけではありません。しかし、極めて希少な存在であることは間違いないです。能力次第では各国が喉から手が出るほど欲しがるでしょうね」


 そんなにか。

 この国にいるうちは関係ないだろうけど、外の国に行けるようになったらその辺も気を付けないといけないってことか。

 ところで、


「結局どんなスキルなんだ?」


 俺は祈に問いかける。

 少なくとも三つの内のどれか一つは俺や祈がステータスを見れたことに関係があるスキルのはずだ。


「ん、まずは遊戯者(オーグメンテッド)の憧れ(・リアリティ)。これは正直に言うと私もまだ、どんなスキルか把握しきれていない。ただ、私と兄さんがステータスを見れるのはこれのおかげ」

「イノリのスキルなのにどうしてカナタまで?」

「このスキルは他者と共有ができる。ただし、共有できる条件はまだ不明」

「ユニークスキルを他者と共有!?」


 リアと祈の会話の途中に大きな声を上げて驚くヘイゼルさん。

 そんなに驚くことなのか?


「ヘイゼル。そんなに驚くことなのか?」


 どうやら、エリオットさんも俺と同じ疑問を持ったようでヘイゼルさんに問いかける。


「ええ、私の知る限り他者と共有できるユニークスキルは存在しません。しかも、ステータスを見るだけがスキルの全容ではない様子。下手すると戦争の火種になりかねません」

「そんなになのか……」

「……私も知らなかったわ」

「……祈、絶対に秘密にしろよ?」

「ん、了解。私も面倒事はノーセンキュー」


 この場の全員が"絶対にこのことは安易に人に告げてはいけない"と固く心に誓う。


「で、残りの二つだけど、これはエーデンガルド(こっち)に来る前から持ってたものだと思う」

「あー、やっぱりそうなのか?」

「えっ、カナタ達の世界にユニークスキルはないんじゃ……」

「スキルって言うよりは体質って言ったほうが良いな」


 それにしても、祈の体質ってユニークスキル判定されるレベルなんだな。

 リアに説明しながらそんなことを考える。


「祈は生まれつき映像記憶と並列思考が出来るんだ」

「映像記憶と並列思考?」

「簡単に言うと映像記憶が見たものをそのまま記憶できる力、並列思考が二つ以上のことを同時に考えることができる力だな。珍しい力だけど、後天的に得ることも可能だって言われてる」

「へぇー、そんな力があるのね」


 どうやら、俺の説明で納得してくれたらしい。

 ……本当はどっちも使えるのはかなり珍しいんだけどな。

 しかも、祈の場合どっちの能力も、()()()()()収まらないし。


「それで、祈。霊魂記憶(ソウル・メモリー)が映像記憶、並列思念(パラレル・プロセッサ)が並列思考のことだと思うんだけどあってるか?」

「正解」


 だろうな。

 名前の感じで答えたが正解だったようだ。


「後、ステータスを見ていて疑問に思ったことがある」

「何だろうか?」

「ユニークスキルにレベル表記がないのはどうして?」


 そういえばそうだな。

 エクストラとノーマルには付いてるのに。


「うむ、それは成長する可能性が不確定だからと言われている」

「成長する可能性が……」

「不確定?」


 祈と一緒に首を傾げる。

 どういうことだ?


「スキルというのは通常、使用すればするほどスキルレベルが上がりより強くなっていく。しかし、ユニークスキルは違う。例えば、窮地に陥った者のユニークスキルが強くなったこともあれば、強くならなかったこともある。いつ、どうして強くなるのかは人それぞれなのだ」


 なるほど、だからレベル表記がないのか。


「理解した」


 どうやら、祈も納得したようだ。


「スキルについてはこんなところか。では、最後に称号だな。これに関してはあまり気にする必要はない」

「と、言うと?」

「狙って習得したり、得られるようなものではないのでな。増えたらラッキーぐらいの感覚でいてほしい」

「神の加護っていうのは?」

「この世界の神である"女神ステラ"様が異世界人に与える加護だ。会話の翻訳をしてくれる」


 ああ、道理でメイドさん達とも話が通じると思ったら、この加護のおかげだったのか。

 この国の人、みんながみんな日本語を話せるわけないもんな。


「文字は翻訳してくれない?」

「うむ、あくまで翻訳するのは会話だけだ」

「さっきのステータス、日本語で書いたはずだけど」

「それは、単純に我ら三人が日本語の読み書きができるというだけだ。いつか、日本の人間と話す時に不便がないようにな」


 流石にそこまで都合よくはないか。

 文字に関しては勉強しないといけないかもしれない。


「ステータスの説明は以上だ。他に何か質問はあるか?」

「とりあえずは50個くらい」

「そ、そんなにあるのか」

「当然。というか、話してる内にまだまだ増えると思う」


 あっ、ヤバい。

 これ完全にスイッチ入ってるな

 こうなると祈は疑問を全部解消するまで止まらない。

 ……仕方ない、俺も長話に付き合う覚悟を決めるか。











「ああ、疲れたー」


 ベッドに仰向けで倒れ込み、思わず心情を口にしてしまう。

 結局、あれから祈の怒涛の質問攻めは日が沈むまで続いた。

 もちろん、間で食事や休憩は挟んだがそれにしても長かった。

 スマホ(祈がソーラーチャージャーを持って来てくれたので充電できた)で時刻を確認するともう22時過ぎだ。

 ちょっと早いがもう寝てしまおうと部屋の明かりを消すために起き上がると、部屋をノックする音が響いた。


 コンコン


『兄さん』

「祈か? 入っていいぞ」


 俺が返事をすると、扉が開いて祈が部屋に入ってくる。


「どうしたんだ?」

遊戯者(オーグメンテッド)の憧れ(・リアリティ)の解析が終わった」

「解析って……」


 いつの間に、そう続けようとして思いとどまる。


「そうか、並列思考か」


 エリオットさん達の話を聞くのと並行して頭の中で解析を進めていたのだろう。


「兄さん、せっかく誰かがカッコイイ名前を付けてくれたんだからそっちで呼んでほしい」

「はいはい、並列思念(パラレル・プロセッサ)な」


 気に入ってるんだな。その名前。

 どうやら、祈の厨二心を大いにくすぐるネーミングだったようだ。

 ……かく言う俺もちょっとだけ厨二心をくすぐられたけど。

 そんなことを考えていると、ベッドの(ふち)に座っていた俺の隣に祈がちょこんと座ってくる。


「それで? 一体どんなスキルだったんだ」

「とりあえず、"メニュー"って言ってみて」

「メニュー」

 

 祈に言われて言葉を口にした瞬間、先程と同じようにあの板が現れる。

 そこには……

 

・マップ

・インベントリ

・パーティ

・オプション

・ヘルプ

 

 ……まんまゲームのメニュー画面だな。


「……これがこのスキルの能力なのか?」

「そう。それぞれを簡単に説明すると……」

 

 祈の説明をざっとまとめるとこんな感じだった。


 マップ=祈を中心にした半径5mの場所を自動的にマッピングし、記録していく。


 インベントリ=持ち物を特殊な空間に収納することができる。生物は収納できず、インベントリの中身はパーティメンバーで共有。容量は有限。


 パーティ=パーティ申請をすることで他者にスキルを共有することができる。現状共有できるのは一人のみ。ステータスの確認もこれに含まれている。


 オプション=このスキルの細かい設定が可能。


 ヘルプ=このスキルについての質問をすると回答してくれる。


「解析してたって言ったけど、もしかして……」

「ん、ヘルプにひたすらスキルの詳細を聞き続けてた。質問を頭に思い浮かべるだけで答えてくれる」


 なるほど、その質問が一通り終わったから来たんだな。


「それにしても、ゲームだと当たり前のスキルだけど、リアルで使えるとなるとすごいスキルなんだって改めて実感するな」

「ん、私もそう思う」


 特にインベントリは有り難い。

 容量が有限とはいえ、物をたくさん持って歩けるというのは旅や冒険で大いに役立つことになるだろう。

 試しに部屋の隅で山積みになっている荷物(祈が持って来たやつ)を収納してみると、一瞬で目の前にあったはずの荷物が消えてなくなる。

 

「なるほど、こうやって使うんだな。これは確かに便利だ」

「ん、褒めても良い」


 言いながら倒れてきた祈は俺の膝の上に頭をのせる。

 ……撫でろってことだな。


「~♪」


 要望に答えて頭を撫でると祈が気持ち良さそうに喉を鳴らす。

 猫か、お前は。

 

「それで、色々と質問してたが、祈はこの国をどう思った?」

「……私や兄さんが手を加える余地はあると思う」


 そりゃ良かった。

 俺や祈の知識が役に立つってことだからな。


「でも、とりあえずはレベルを上げて強くなるのが先決」

「だな」


 明日からはヘイゼルさんの座学とリアの戦闘訓練が始まる。

 ある程度まで知識を付けて戦い慣れしたら、ダンジョンでレベルを上げる。

 これが全員で話し合って決めた今後の大まかな予定だ。

 その間に俺と祈はこの国を色々見て回りながら、現代知識を活かせそうな所を探すつもりだ。


「ふわ~」

「流石にお前も疲れたか。もう寝ろよ」

「ん、おやすみ」

「いや、ここじゃなくて自分の部屋で……」


 ってもう寝てるし。

 しょうがないな。

 俺は祈を起こさないように抱きかかえ、ベッドに寝かせてやる。

 

「ふわ~、俺ももう寝るか」


 やってきた眠気にあらがえず俺も祈の隣に横になる。

 ベッドがでかくて良かった……

 そんなことを思いながら、俺は深い眠りに落ちていった。


忙しくて投稿に間が空いてしまいましたが、投稿再開します!

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